チートをもらえるけど戦国時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

兎屋亀吉

文字の大きさ
131 / 131
チートをもらえるけど平安時代に飛ばされるボタン 押す/押さない

16.招かれざる客

しおりを挟む
 耐えがたい寒さによって目を覚ます。
 布団代わりの毛皮は温かいが、布団のように全てを包み込んでくれるような安心感が無い。
 横にできた隙間から外気が入り込んでとても寒い。
 ガチャから敷布団が出たので前よりは良くなったが、早く掛布団も出てくれんものか。
 できれば羽毛布団を希望。
 俺は万感の祈りを込め、ガチャを回す。

 Sランク
  なし

 Aランク
  ・万能薬

 Bランク
  ・黒壇のちゃぶ台

 Cランク
  ・海苔×10
  ・昆布×10
  ・りんごジュース×10
  ・一味唐辛子×10
  ・座布団×10

 Dランク
  ・歯ブラシ
  ・飴玉×10 
  ・毛抜き

 久しぶりにAランクのアイテムが出た。
 Aランクの演出はゴージャスな金色で、なんとなく満足感がある。
 出たアイテムの万能薬は以前試してみた結果、病気や毒に効く薬ではないかと予想している。
 万能薬という名前なくらいだからおそらく身体の中の異常すべてに対して効果があるのだろう。
 Aランクのアイテムはファンタジーに片足を突っ込んでいるので期待値は高い。
 もし本当に万病に効く薬だとすればすごい価値のあるものだ。
 この時代、日本でも海外から入ってきたマラリアや天然痘なんかが流行っていたらしいから病気に効く薬はありがたい。
 仙人が病気に罹るかどうかはわからないが、用心に越したことはないからね。
 見ず知らずの人のために無償で薬を使うというようなことはする気が起きないが、もし金太郎さんや八重さんがそういった死ぬ危険性のある病気に罹ったとしたら俺は迷う事なく使うだろう。
 いざという時のために収納の指輪の中にストックしておくとしよう。
 今日はAランクだけでなく、Bランクのアイテムまで出ている。
 黒檀のちゃぶ台は高級感のある焦げ茶色のちゃぶ台だ。
 古しきゆかしき足が4本の丸い座卓。
 しかしその材質はこの上なく上質。
 確か黒檀ってすごい高い木材じゃなかったかな。
 Bランクのアイテムに家具が出るのは初めてだが、これはこれでいいものだ。
 みんなでご飯を食べるときとかに使わせてもらうとしよう。
 ちょうど座布団も10枚出たことだし。
 それにしても羽毛布団が出るように祈ったのに座布団を出すとは、俺をこの時代に送った神様は結構意地悪だな。






 朝の冷え込んだ空気の中、深呼吸をして大地の気を取り込めば身体がふわりと温かくなって寒さを感じなくなる。
 最初からこうすればよかった。
 明日からは起きたらすぐやろう。
 俺は欠伸をしながら大斧を振りかぶり、太い丸太に振り下ろす。
 これから雪が降れば外で薪割りをするのは大変になる。
 それまでに薪をたくさん割って蓄えておかなければならない。

「何度見ても信じられないな、そのようなひょろい身体で俺でも持ち上がらん大斧を振れるとは。それに、腕が生えてきたことも。お前本当に人ならざる者ではないのか?」

「そのはずなんですけどね」

 仙人になりだいぶ人間離れしてきている俺だが、一応まだ人間のつもりだ。
 ちなみに父親や母親が幼い頃に失踪した謎の人物だったりもしない。
 祖父母も妖怪だったりはしない。
 みんな普通の人間だった。
 俺の身に起こっていることはすべてこの時代にトリップさせた神と、もらったスマホの力に起因するものだ。
 現代に生きていてそういった人以外の存在なんか感じたこともないからな。
 でもこの時代にはいるんだよな、本当に人ではない存在が。
 現に金太郎さんたちはその血を受け継いでいるという。
 俺の隣で普通の斧で薪を割っている金太郎さんからは、微かに霊力以外のなんらかのエネルギーを感じた。
 仮に妖力と呼んでおこう。
 別に邪悪さを感じたりもしないから、悪いものではないのだろう。
 ただ、妖力は霊力と違って生きてるもののエネルギーって感じがしないんだよな。
 電気分解によって作り出された水素のような、もっと無機質なエネルギー源のような気がする。
 しかしその分純度が高く、高出力なのだろう。
 金太郎さんの肉体がハイスペックなのはおそらくそのせいもある。
 八重さんの身体能力はわからないけど、妖力の大きさでいったら八重さんのほうが大きいんだよな。
 八重さんのほうが血が濃いってことなのかな。
 あまり話題に出たことがないけど、金太郎さんのお父さんは人間なのだろうか。
 普通に考えて人ならざる者がそんなにたくさんいるわけないのだから人間なんだろうけど、なんとなく聞くのを躊躇してしまう話題だ。
 一緒に暮らしていないということは何かあったってことだからね。
 坂田金時のお父さんは宮中で働く坂田蔵人という人だったとか、はたまた龍神だったとか言われている。
 そもそも坂田金時自身が存在していたことが確かではない人物なのだからその出自が謎なのも当然の話だ。
 気になるし一度聞いてみようかな。
 八重さんに直接聞くよりもまずは金太郎さんに聞いてみたほうが心理的抵抗が少ないかもしれない。

「あの、金太郎さん……」

「待て、どうやら客みたいだ」

「えぇ……」

 なんというタイミングの悪さだ。
 というかこんないつ雪が降り始めるかわからないような時期に足柄山に登ってくる人なんているのだろうか。
 しばらくすると馬の蹄の音が聞こえてきた。
 馬に乗ってる人って普通の農民とかではないよな。
 なんだかろくなことが起こる予感がしない。
 見た目からしてファンタジーな武器の戦斧は指輪にしまっておくことにしよう。
 俺と金太郎さんは並んで立ち、そのお客さんとやらを待った。
 5分ほどすると馬に乗った大勢の人が家の前までたどり着く。
 見るからにいい着物を着た人たちだ。
 たしか狩衣というのだっただろうか、平安時代といえばこの恰好というような服装だ。
 全員男で、弓を持ち日本刀ではない直剣を腰にぶら下げている。
 鉄を鍛えて作った刀は高価なものなはずだから、腰から提げているのは青銅の剣かもしれない。
 なんにせよ剣やら弓やら持った人に囲まれるというのはかなり怖い。
 俺がビビッて固まっていると、隣の金太郎さんが口を開く。

「お前ら、何だ」

「我らは泣く子も黙る大貴族、藤原家に連なる一団だ。これより狼を狩る。山を案内せい」

 藤原家に連なる人って、星の数ほどいる気がするけどね。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

処理中です...