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19.おっさんと始める最北の下克上
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王国最北の街、アルバーン。
そこより北には広大な森が広がっており、そこを超えると海があるらしい。
森を越えるのはSランク冒険者でも危険なんだそうだ。
いつか海にも行ってみたいな。
そんなわけでやってきました最北の街。
確かにカーティスよりも大きく栄えているようだ。
堅牢な外壁に囲われた北の一大拠点であるこの町には、王国中から腕に覚えがあるものが集まる。
そのためアルバーンの街は王都に匹敵するほど賑わっている。
冒険者ギルドの雰囲気は王都なんて目じゃないほどにピリピリしていて、WEB小説でよくあるようなテンプレなんてここでは日常茶飯事だろう。
そんな雰囲気の場所に、俺はふらりと入っていく。
ここでは女の姿はめんどくさそうなので本性のおっさんの姿で通すつもりだ。
まあ格好はいつもの商人風の服にサーベルだから、あまりベテランの冒険者には見えないだろうけど。
今日こそテンプレが起きちゃうかもな。
おっさんが冒険者なんて片腹痛いぜとかね。
「おっさんが冒険者なんて片腹痛いぜ!!」
ほらね。
今度こそきたよ、テンプレ。
よし、チートスキルで返り討ちにしてくれるわ。
「わ、私が冒険者になることのなにがいけないんだ」
「おっさんなあ、冒険者になるには遅いって言ってんだよ!」
どうやら俺以外のおっさんにテンプレが発生しているらしい。
そちらのほうに目を向けると、生白くてメガネをかけた学者のような見た目のおっさんがガチムチのゴリラみたいな大男に絡まれていた。
俺が絡まれたと思ったのに、残念だ。
「冒険者登録に年齢制限はないはずだ」
「そんなもんは無くたってみんな分かってんだよ!あんたにはもうチャンスなんてねぇんだ!諦めてとっとと帰りやがれ!」
ガチムチ兄やんはおっさんの胸倉を掴んで持ち上げると、入り口のほうへ歩いていく。
そんなガチムチ兄やんの腕を、俺が掴む。
「あん?なんだおっさん、あんたも冒険者登録か?」
「いや、俺はすでに冒険者だ」
「へぇ、そうかい。ランクは?」
「Cだ」
サイクロプスの一件で俺はCランク冒険者に飛び級している。
超絶イケメンエルフギルド長の話ではCランクまではギルド長の独断で上げることがよくあるそうだ。
「へぇ、ま、おっさんの歳じゃCが限界だろうな。で?なんの用だ?喧嘩なら買うぜ?」
「喧嘩はする気はない。この人から手を放すんだ。ギルドに登録する権利は誰にでもある」
「おっさん同士で同情しちまったか?だがどのみちこのおっさんには冒険者は無理だ。登録なんて意味がねえだろうが」
これは他人のテンプレだから俺はなるべく手をださないようにしていたが、だめみたいだ。
俺は掴んだ手に少しだけ熱を発生させる。
「あつっ」
「ごほっ、ごほっ」
俺の発生させた熱に驚いてガチムチ兄やんはおっさんを掴む手を放し、俺から距離をとった。
この男、なかなか強そうだ。
少なくともCランクよりは上なのだろうな。
「てめぇ!」
「どうした、手に虫でも止まったか?」
「完全に切れちまったぜぇぇ!ぶっ殺す!!」
男は腰の剣を抜き、ものすごい形相でこちらを睨む。
まったく切れやすい若者だ。
俺は右腕に竜鱗を発動させる。
さすがに竜爪を使うと殺してしまうだろう。
この若者の相手なら竜鱗だけでも過分なくらいだ。
ガチムチ兄やんがこちらに切りかかってくる。
身体強化レベル15で強化された動体視力には兄やんの振り上げた剣の軌道がしっかりと見えている。
剣を掴んでぽっきり折ってやればいい。
それで戦闘終了だ。
俺のそっと差し出した右腕に、兄やんの振り下ろす剣が触れようとしたそのとき、ガキンッと音を立てて何者かの剣が兄やんの剣を弾く。
「やめろガロン!!ギルド内での武器を用いた私闘は厳重処分だぞ」
「止めんじゃねぇよギルド長!」
どうやらギルド長が割って入ったらしい。
遅い登場だ。
いままで出てこなかったのなら俺がこいつの剣をへし折るまで出てこなくてもよかったのにな。
俺はさっと鱗がびっしりの腕を隠す。
ギルド長はごつい身体に傷だらけのいかつい顔、絶対元冒険者とかだろう。
カーティスの町の超絶イケメンエルフギルド長も元冒険者なんだろうか。
「あなたがギルド長ですか。こちらの方の冒険者登録をお願いします。それともあんたもおっさんは冒険者登録させない派ですか?」
「ああ、わかったわかった。だが、俺も無駄だというガロンの意見には賛成だがね。その歳から冒険者になってなにができる。ゴブリン狩って余生を過ごすのが見えてる。そういうのは他所でやってくれるか?」
ゴブリン狩ってなにが悪いんだよ。
おっさんはゴブリンも狩っちゃいけないってか?
「なにか不満があるような顔だな。あんたたちみたいなゴブリンしか狩らない冒険者が、冒険者を名乗るのが迷惑だって言ってんだよ。ゴブリンだって無限に湧き出てくるものじゃない。あんたたちに狩り尽くされると未来ある若者のちょうどいい訓練相手兼収入源がいなくなっちまうんだ」
まるで俺達には未来がないみたいな言い草だ。
同じくらいの歳のくせに、よくそんなひどいこと言えるね。
これが若いときに功績を残せたか残せなかったかの違いなのか。
というかギルド長はさっきから俺に向かって話しかけてるけど、俺はCランク冒険者だっていうのに。
だが、なんか言い返したら負けな気がする。
ギルド長はそれだけ言うと踵を返して去っていった。
結局ガチムチ兄やんもお咎めなしかよ。
なんだか俺はこのギルドが大嫌いになった。
その日はおっさんの冒険者登録に付き添い、おっさんを連れてギルドを出た。
絶対このおっさんと一緒にあいつらを見返してやるぞ。
そのためにはおっぱいポイントを補充しないとな。
そこより北には広大な森が広がっており、そこを超えると海があるらしい。
森を越えるのはSランク冒険者でも危険なんだそうだ。
いつか海にも行ってみたいな。
そんなわけでやってきました最北の街。
確かにカーティスよりも大きく栄えているようだ。
堅牢な外壁に囲われた北の一大拠点であるこの町には、王国中から腕に覚えがあるものが集まる。
そのためアルバーンの街は王都に匹敵するほど賑わっている。
冒険者ギルドの雰囲気は王都なんて目じゃないほどにピリピリしていて、WEB小説でよくあるようなテンプレなんてここでは日常茶飯事だろう。
そんな雰囲気の場所に、俺はふらりと入っていく。
ここでは女の姿はめんどくさそうなので本性のおっさんの姿で通すつもりだ。
まあ格好はいつもの商人風の服にサーベルだから、あまりベテランの冒険者には見えないだろうけど。
今日こそテンプレが起きちゃうかもな。
おっさんが冒険者なんて片腹痛いぜとかね。
「おっさんが冒険者なんて片腹痛いぜ!!」
ほらね。
今度こそきたよ、テンプレ。
よし、チートスキルで返り討ちにしてくれるわ。
「わ、私が冒険者になることのなにがいけないんだ」
「おっさんなあ、冒険者になるには遅いって言ってんだよ!」
どうやら俺以外のおっさんにテンプレが発生しているらしい。
そちらのほうに目を向けると、生白くてメガネをかけた学者のような見た目のおっさんがガチムチのゴリラみたいな大男に絡まれていた。
俺が絡まれたと思ったのに、残念だ。
「冒険者登録に年齢制限はないはずだ」
「そんなもんは無くたってみんな分かってんだよ!あんたにはもうチャンスなんてねぇんだ!諦めてとっとと帰りやがれ!」
ガチムチ兄やんはおっさんの胸倉を掴んで持ち上げると、入り口のほうへ歩いていく。
そんなガチムチ兄やんの腕を、俺が掴む。
「あん?なんだおっさん、あんたも冒険者登録か?」
「いや、俺はすでに冒険者だ」
「へぇ、そうかい。ランクは?」
「Cだ」
サイクロプスの一件で俺はCランク冒険者に飛び級している。
超絶イケメンエルフギルド長の話ではCランクまではギルド長の独断で上げることがよくあるそうだ。
「へぇ、ま、おっさんの歳じゃCが限界だろうな。で?なんの用だ?喧嘩なら買うぜ?」
「喧嘩はする気はない。この人から手を放すんだ。ギルドに登録する権利は誰にでもある」
「おっさん同士で同情しちまったか?だがどのみちこのおっさんには冒険者は無理だ。登録なんて意味がねえだろうが」
これは他人のテンプレだから俺はなるべく手をださないようにしていたが、だめみたいだ。
俺は掴んだ手に少しだけ熱を発生させる。
「あつっ」
「ごほっ、ごほっ」
俺の発生させた熱に驚いてガチムチ兄やんはおっさんを掴む手を放し、俺から距離をとった。
この男、なかなか強そうだ。
少なくともCランクよりは上なのだろうな。
「てめぇ!」
「どうした、手に虫でも止まったか?」
「完全に切れちまったぜぇぇ!ぶっ殺す!!」
男は腰の剣を抜き、ものすごい形相でこちらを睨む。
まったく切れやすい若者だ。
俺は右腕に竜鱗を発動させる。
さすがに竜爪を使うと殺してしまうだろう。
この若者の相手なら竜鱗だけでも過分なくらいだ。
ガチムチ兄やんがこちらに切りかかってくる。
身体強化レベル15で強化された動体視力には兄やんの振り上げた剣の軌道がしっかりと見えている。
剣を掴んでぽっきり折ってやればいい。
それで戦闘終了だ。
俺のそっと差し出した右腕に、兄やんの振り下ろす剣が触れようとしたそのとき、ガキンッと音を立てて何者かの剣が兄やんの剣を弾く。
「やめろガロン!!ギルド内での武器を用いた私闘は厳重処分だぞ」
「止めんじゃねぇよギルド長!」
どうやらギルド長が割って入ったらしい。
遅い登場だ。
いままで出てこなかったのなら俺がこいつの剣をへし折るまで出てこなくてもよかったのにな。
俺はさっと鱗がびっしりの腕を隠す。
ギルド長はごつい身体に傷だらけのいかつい顔、絶対元冒険者とかだろう。
カーティスの町の超絶イケメンエルフギルド長も元冒険者なんだろうか。
「あなたがギルド長ですか。こちらの方の冒険者登録をお願いします。それともあんたもおっさんは冒険者登録させない派ですか?」
「ああ、わかったわかった。だが、俺も無駄だというガロンの意見には賛成だがね。その歳から冒険者になってなにができる。ゴブリン狩って余生を過ごすのが見えてる。そういうのは他所でやってくれるか?」
ゴブリン狩ってなにが悪いんだよ。
おっさんはゴブリンも狩っちゃいけないってか?
「なにか不満があるような顔だな。あんたたちみたいなゴブリンしか狩らない冒険者が、冒険者を名乗るのが迷惑だって言ってんだよ。ゴブリンだって無限に湧き出てくるものじゃない。あんたたちに狩り尽くされると未来ある若者のちょうどいい訓練相手兼収入源がいなくなっちまうんだ」
まるで俺達には未来がないみたいな言い草だ。
同じくらいの歳のくせに、よくそんなひどいこと言えるね。
これが若いときに功績を残せたか残せなかったかの違いなのか。
というかギルド長はさっきから俺に向かって話しかけてるけど、俺はCランク冒険者だっていうのに。
だが、なんか言い返したら負けな気がする。
ギルド長はそれだけ言うと踵を返して去っていった。
結局ガチムチ兄やんもお咎めなしかよ。
なんだか俺はこのギルドが大嫌いになった。
その日はおっさんの冒険者登録に付き添い、おっさんを連れてギルドを出た。
絶対このおっさんと一緒にあいつらを見返してやるぞ。
そのためにはおっぱいポイントを補充しないとな。
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