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13.一矢報いる
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女性たちの人数は7人。
木でできた牢屋のようなものに全裸で入れられている。
一応申し訳程度にトイレの代わりの壺が置かれているけれど、何日も片付けられていないのか溢れてしまっている。
非常に不衛生な環境だ。
いくら盗賊とはいえ、もう少し衛生観念に気を付けたほうがいいと思う。
木の牢屋には南京錠のような金属製の鍵が取り付けられており、内側からも外側からも勝手に開けることができないようになっている。
しかしディンプルキーのような現代の鍵を知っている僕からしたらこの鍵はそれほど厳重ではないように感じてしまう。
南京錠なんてスパナ2本で開ける動画やハンマーで叩いて開ける動画、ヘアピン2本で開ける動画など様々な開錠動画が公開されてしまっている。
同じような形状のこの鍵もそれほど開けるのに苦労はしないだろう。
「おい、聞こえてるか」
ザックスが牢の中に向かって話しかけると、中の女性たちがびくっと震えた。
よほど盗賊たちが怖いのだろう。
しばらく無言で僕たちのことを観察していたようだけれど、全裸であることから盗賊たちとは少し違うとわかったようだ。
女性たちの中で一番年齢が高そうな人が代表して僕たちに問いかける。
「あ、あなたたちは盗賊ではないの?」
「ああ。俺たちは盗賊に身ぐるみ剥がされてトカゲの巣に放り込まれた被害者だ。トカゲの巣から逃げてきたんだよ。これからこのロープを使って脱出するところなんだが、ついてきたけりゃこの牢を壊してやるぜ」
「ほんとうなの?」
「成功するかどうかはわからん。途中で盗賊たちに見つかるかもしれん」
「そうなのね……」
ラノベの主人公みたいにもう大丈夫だって言ってあげられないのが心苦しい。
全裸でそんなことを言ったところで強がりだと思われるだろうけどね。
女性たちは少しの間話し合う。
僅かな可能性に賭けるかこのまま飼い殺されるかの選択だ、慎重に考えて欲しい。
僕は全員生きて助けることができると責任持って言うことはできないのだ。
そもそも自分が生きるか死ぬかの責任なんかは他人が持つべきではないだろう。
やがて女性たちの意見が決まる。
「私達も連れて行ってほしい。お願いします」
「わかった。すぐに鍵を壊す。少し離れていてくれ」
ザックスは先ほど手に入れた手斧を振りかぶり、南京錠のような鍵を強く打ち付ける。
どうやらハンマー方式で鍵を壊すようだ。
少し大きな音がしたので少し焦る。
ガンガンと3度ほど叩くと鍵が壊れて牢屋の扉が開く。
「よし、逃げるぞ。と、その前にどこかに着るものはあるか?」
「そこの棚の奥に水浴びの後に身体を拭くための布があるわ。それ以外はここには……」
「まあそれでもないよりマシか」
僕たちは布切れ1枚を巻いて来た道を戻ったのだった。
全裸よりはいいけど、相変わらずブラブラしたままだ。
「ひっ、トカゲ……」
「走れっ、トカゲはそんなに足が速くねえ!」
「あの岩に登って!」
僕とザックスは盗賊に捕まっていた女性たちを引き連れてトカゲの巣に戻ってきた。
鉄格子の木枠が完全に焼け落ちてしまったせいでアジトの中に半分くらいのトカゲが入り込んでしまったようだけれど、半分ほどはこの窪地に残っていた。
トカゲが良い感じの陽動になってくれたおかげで鍵を壊すときに立てた大きな音に気付かれることがなかったようだ。
その代わりにアジトの中でも何度かトカゲにエンカウントして女性たちを落ち着かせるのに苦労したけれど。
やはり人数が増えると色々なことがスピーディにできなくて少しヒヤヒヤした。
でもようやくこの窪地に戻ってくることができたのだ。
ここは広いからトカゲと追いかけっこをするのが楽だ。
トカゲは最初に見たときは人間が敵うようなものではないと思ったけれど、今はそこまで怖く感じない。
ザックスが影魔法で倒しているのを見たり、自分自身でも大岩をコピーしたときに潰してしまったりしたせいかもしれない。
僕はトカゲを怖がる女性たちを宥めて走らせ、大岩を登らせる。
トカゲも大岩を登ろうと岩肌に爪を引っかける。
この大きなトカゲはその身体の重さからか、それほど岩を登るのが上手くない。
放っておいてもおそらく岩の上までは来ないだろうけど、登ろうとしただけでも女性たちは怖がって泣きそうな顔になっている。
僕は焼け落ちた鉄格子から拾ってきた鉄の棒を振りかぶり、トカゲの前足を思い切りぶっ叩いた。
「シュロロロッ!!」
「もう1発」
今度は顔面に向かって鉄の棒を叩きつける。
手には何かを砕いた感触が伝わってきた。
よく考えたらこれが僕の異世界初戦闘だ。
大岩でトカゲを潰したのはノーカウントとする。
僕は何度も鉄の棒を振り下ろし、トカゲの頭蓋を砕いて異世界初戦闘に勝利した。
1匹倒して脇腹を殴打された恨みを返した僕は、鉄の棒を岩の上の女性に渡して自分も岩に登った。
窪地の底から崖の上までは目測で約30メートル。
大岩の高さは5メートルほどなのでこれから僕たちは約25メートルの距離をロープ1本で登らなければならないのか。
ちょっと自信ないです。
木でできた牢屋のようなものに全裸で入れられている。
一応申し訳程度にトイレの代わりの壺が置かれているけれど、何日も片付けられていないのか溢れてしまっている。
非常に不衛生な環境だ。
いくら盗賊とはいえ、もう少し衛生観念に気を付けたほうがいいと思う。
木の牢屋には南京錠のような金属製の鍵が取り付けられており、内側からも外側からも勝手に開けることができないようになっている。
しかしディンプルキーのような現代の鍵を知っている僕からしたらこの鍵はそれほど厳重ではないように感じてしまう。
南京錠なんてスパナ2本で開ける動画やハンマーで叩いて開ける動画、ヘアピン2本で開ける動画など様々な開錠動画が公開されてしまっている。
同じような形状のこの鍵もそれほど開けるのに苦労はしないだろう。
「おい、聞こえてるか」
ザックスが牢の中に向かって話しかけると、中の女性たちがびくっと震えた。
よほど盗賊たちが怖いのだろう。
しばらく無言で僕たちのことを観察していたようだけれど、全裸であることから盗賊たちとは少し違うとわかったようだ。
女性たちの中で一番年齢が高そうな人が代表して僕たちに問いかける。
「あ、あなたたちは盗賊ではないの?」
「ああ。俺たちは盗賊に身ぐるみ剥がされてトカゲの巣に放り込まれた被害者だ。トカゲの巣から逃げてきたんだよ。これからこのロープを使って脱出するところなんだが、ついてきたけりゃこの牢を壊してやるぜ」
「ほんとうなの?」
「成功するかどうかはわからん。途中で盗賊たちに見つかるかもしれん」
「そうなのね……」
ラノベの主人公みたいにもう大丈夫だって言ってあげられないのが心苦しい。
全裸でそんなことを言ったところで強がりだと思われるだろうけどね。
女性たちは少しの間話し合う。
僅かな可能性に賭けるかこのまま飼い殺されるかの選択だ、慎重に考えて欲しい。
僕は全員生きて助けることができると責任持って言うことはできないのだ。
そもそも自分が生きるか死ぬかの責任なんかは他人が持つべきではないだろう。
やがて女性たちの意見が決まる。
「私達も連れて行ってほしい。お願いします」
「わかった。すぐに鍵を壊す。少し離れていてくれ」
ザックスは先ほど手に入れた手斧を振りかぶり、南京錠のような鍵を強く打ち付ける。
どうやらハンマー方式で鍵を壊すようだ。
少し大きな音がしたので少し焦る。
ガンガンと3度ほど叩くと鍵が壊れて牢屋の扉が開く。
「よし、逃げるぞ。と、その前にどこかに着るものはあるか?」
「そこの棚の奥に水浴びの後に身体を拭くための布があるわ。それ以外はここには……」
「まあそれでもないよりマシか」
僕たちは布切れ1枚を巻いて来た道を戻ったのだった。
全裸よりはいいけど、相変わらずブラブラしたままだ。
「ひっ、トカゲ……」
「走れっ、トカゲはそんなに足が速くねえ!」
「あの岩に登って!」
僕とザックスは盗賊に捕まっていた女性たちを引き連れてトカゲの巣に戻ってきた。
鉄格子の木枠が完全に焼け落ちてしまったせいでアジトの中に半分くらいのトカゲが入り込んでしまったようだけれど、半分ほどはこの窪地に残っていた。
トカゲが良い感じの陽動になってくれたおかげで鍵を壊すときに立てた大きな音に気付かれることがなかったようだ。
その代わりにアジトの中でも何度かトカゲにエンカウントして女性たちを落ち着かせるのに苦労したけれど。
やはり人数が増えると色々なことがスピーディにできなくて少しヒヤヒヤした。
でもようやくこの窪地に戻ってくることができたのだ。
ここは広いからトカゲと追いかけっこをするのが楽だ。
トカゲは最初に見たときは人間が敵うようなものではないと思ったけれど、今はそこまで怖く感じない。
ザックスが影魔法で倒しているのを見たり、自分自身でも大岩をコピーしたときに潰してしまったりしたせいかもしれない。
僕はトカゲを怖がる女性たちを宥めて走らせ、大岩を登らせる。
トカゲも大岩を登ろうと岩肌に爪を引っかける。
この大きなトカゲはその身体の重さからか、それほど岩を登るのが上手くない。
放っておいてもおそらく岩の上までは来ないだろうけど、登ろうとしただけでも女性たちは怖がって泣きそうな顔になっている。
僕は焼け落ちた鉄格子から拾ってきた鉄の棒を振りかぶり、トカゲの前足を思い切りぶっ叩いた。
「シュロロロッ!!」
「もう1発」
今度は顔面に向かって鉄の棒を叩きつける。
手には何かを砕いた感触が伝わってきた。
よく考えたらこれが僕の異世界初戦闘だ。
大岩でトカゲを潰したのはノーカウントとする。
僕は何度も鉄の棒を振り下ろし、トカゲの頭蓋を砕いて異世界初戦闘に勝利した。
1匹倒して脇腹を殴打された恨みを返した僕は、鉄の棒を岩の上の女性に渡して自分も岩に登った。
窪地の底から崖の上までは目測で約30メートル。
大岩の高さは5メートルほどなのでこれから僕たちは約25メートルの距離をロープ1本で登らなければならないのか。
ちょっと自信ないです。
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