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30.攻撃魔法
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戦いが始まった。
ゴブリンたちは外の個体よりも多少賢いとはいうものの、人間ほどの知能はない。
それゆえに我さきにと僕たちに殺到した。
この部屋にいるゴブリンの数はどのくらいかわからないけれど、立って半畳と言うからおそらく1畳に2匹くらいのゴブリンがいると考えられる。
本来はゴブリンを数えるための言葉ではないけれど、おそらく大きく外れてはいないだろう。
1畳というのは確かべニア板くらいの大きさだったはずだ。
つまり90×180センチくらいだ。
その範囲に2匹程度のゴブリンがいる。
この部屋は20メートル四方くらいだから、ゴブリンは全部で200とちょっとか。
ゴブリンが小柄なことなども考えて多めに見積もっても300くらい。
僕たちの人数は7人で、隙を無くすように陣形を組んでいるので一度に相対することのできる数は限られている。
せいぜい15匹くらいだろうか。
いくら敵の数が多かろうが、15対7を20回くらい行えばいいだけの話なのだ。
殺到するゴブリンたちは盾持ちのザイードやスコットに止められ、他のみんなにトドメを刺されていく。
やはりザックスの殲滅速度が一番早い。
短剣を振るう腕の動きが見えないほどに速く、気が付いた時にはゴブリンの首筋から血が噴き出ている。
あと、意外にドミニクが強い。
持ち手まで金属製の重たそうなメイスをまるで棒切れのように振るい、ゴブリンたちを吹き飛ばしている。
精霊力というものがあるにしてもちょっと異常としか言えないような怪力だ。
スキルの力なのかもしれない。
奴隷を買ったときに全員のスキルを聞いた。
ドミニクのスキルは確か【触手lv4】だったはずだ。
エロゲのスキルかなとか思ったけれど詳しくは怖くて聞けなかった。
フィジカル系のスキルだったのだろうか。
ドミニクの手をよく見ると、さっき見たときよりも少しぶよぶよしているような気もする。
自分の身体を触手に変えるスキルってことなのかな。
羨ましいような、羨ましくないような。
ザックスとドミニクがゴブリンたちを押し返し、少し隙間のできたので僕も攻撃を加えてみることにしよう。
この世界におけるモンスター戦の経験値はラストアタックボーナスとかもなく完璧な均等割りだけれど、それは攻撃に加わった人に限られる。
つまり今日、僕はまだノー経験値なのだ。
少しでもいいのでゴブリンに攻撃をしておきたい。
といっても接近戦は怖いので無理だ。
先日手に入れた招き猫デザインの魔導印を使って攻撃魔法を放つこととしよう。
右手の甲に招き猫型の魔導印を貼り付け、ゴブリンに向けて手のひらをかざす。
魔導印は一度貼り付けると刺青のように肌と一体化して専用の薬液を使わないと落とすことができない。
そして落としてしまったらもう薬液に溶け出してしまうので再度貼り付けることはできない。
金貨を出さないと買えないようなものなので一度貼り付けたら薬液を買ってまで落とす人はそういないそうだ。
しかし僕は貼り付けたままにしているのは目立たないところにある収納の魔導印くらいのもので、それ以外は使用の度に貼り付けたり薬液で落としたりしている。
なにせ柄が招き猫デザインなのだ。
僕には少し恥ずかしい。
僕は魔導印に魔力を注ぎ、魔法を発動させる。
魔力というものが僕にも宿っていると知ったのは招き猫ではない普通のデザインの収納の魔導印を買って貼り付けたときだ。
魔導印は魔道具とは違って貼り付けた本人の魔力を使って発動する。
魔力というものに馴染みのない世界で生まれ育った僕には本当にそのようなものが自分に宿っているのかよくわからなかった。
そんな力が僕に宿っていたのならば中学2年あたりになんらかの形で出てきてもおかしくはなかったはずだ。
しかし魔導印は僕が思っていたよりも大分あっさりと発動した。
よく考えたら僕は転移者ではなく転生者だから、この身体は異世界に来たときに作り替わっていたのだ。
もう中二のときの僕ではないのだ。
魔力を注ぎ込んだ魔導印から炎が迸る。
「いけ、ファイアボール!」
「あ、こら坊ちゃん!何を勝手に……」
僕の放った魔法はゴブリンの上位種の鎧を少しだけ焦がして消えた。
「まあ、あれくらいならいいか……」
圧倒的に攻撃力が足りなかった。
「ふぅ、なんとか全員無傷で終わったな」
「そうっすね。まだ生きてるのもいますからレン様がトドメを刺すのがいいかと」
「わかった」
僕の攻撃魔法がゴブリンの上位種には全く通用しないとわかった。
しかし僕の目的は別に魔法でかっこよく敵を倒すことではない。
まあそれもできたら一番よかったのだけれど、僕の目的はあくまでも戦闘に加わることで経験値の配当を受けることだ。
僕が放ったファイアボールはヘイトを稼ぐこともできない程度の威力だったのでパワーレベリングには逆に向いていた。
ゴブリンの注意を引かず、軽い攻撃だけを加えることができたおかげで僕はかなりの経験値を稼ぐことができただろう。
しかしなぜだか空しい気持ちで胸がいっぱいだ。
僕はレベッカから槍を借り、まだ息のあるゴブリンにトドメを刺して回った。
ゴブリンたちは外の個体よりも多少賢いとはいうものの、人間ほどの知能はない。
それゆえに我さきにと僕たちに殺到した。
この部屋にいるゴブリンの数はどのくらいかわからないけれど、立って半畳と言うからおそらく1畳に2匹くらいのゴブリンがいると考えられる。
本来はゴブリンを数えるための言葉ではないけれど、おそらく大きく外れてはいないだろう。
1畳というのは確かべニア板くらいの大きさだったはずだ。
つまり90×180センチくらいだ。
その範囲に2匹程度のゴブリンがいる。
この部屋は20メートル四方くらいだから、ゴブリンは全部で200とちょっとか。
ゴブリンが小柄なことなども考えて多めに見積もっても300くらい。
僕たちの人数は7人で、隙を無くすように陣形を組んでいるので一度に相対することのできる数は限られている。
せいぜい15匹くらいだろうか。
いくら敵の数が多かろうが、15対7を20回くらい行えばいいだけの話なのだ。
殺到するゴブリンたちは盾持ちのザイードやスコットに止められ、他のみんなにトドメを刺されていく。
やはりザックスの殲滅速度が一番早い。
短剣を振るう腕の動きが見えないほどに速く、気が付いた時にはゴブリンの首筋から血が噴き出ている。
あと、意外にドミニクが強い。
持ち手まで金属製の重たそうなメイスをまるで棒切れのように振るい、ゴブリンたちを吹き飛ばしている。
精霊力というものがあるにしてもちょっと異常としか言えないような怪力だ。
スキルの力なのかもしれない。
奴隷を買ったときに全員のスキルを聞いた。
ドミニクのスキルは確か【触手lv4】だったはずだ。
エロゲのスキルかなとか思ったけれど詳しくは怖くて聞けなかった。
フィジカル系のスキルだったのだろうか。
ドミニクの手をよく見ると、さっき見たときよりも少しぶよぶよしているような気もする。
自分の身体を触手に変えるスキルってことなのかな。
羨ましいような、羨ましくないような。
ザックスとドミニクがゴブリンたちを押し返し、少し隙間のできたので僕も攻撃を加えてみることにしよう。
この世界におけるモンスター戦の経験値はラストアタックボーナスとかもなく完璧な均等割りだけれど、それは攻撃に加わった人に限られる。
つまり今日、僕はまだノー経験値なのだ。
少しでもいいのでゴブリンに攻撃をしておきたい。
といっても接近戦は怖いので無理だ。
先日手に入れた招き猫デザインの魔導印を使って攻撃魔法を放つこととしよう。
右手の甲に招き猫型の魔導印を貼り付け、ゴブリンに向けて手のひらをかざす。
魔導印は一度貼り付けると刺青のように肌と一体化して専用の薬液を使わないと落とすことができない。
そして落としてしまったらもう薬液に溶け出してしまうので再度貼り付けることはできない。
金貨を出さないと買えないようなものなので一度貼り付けたら薬液を買ってまで落とす人はそういないそうだ。
しかし僕は貼り付けたままにしているのは目立たないところにある収納の魔導印くらいのもので、それ以外は使用の度に貼り付けたり薬液で落としたりしている。
なにせ柄が招き猫デザインなのだ。
僕には少し恥ずかしい。
僕は魔導印に魔力を注ぎ、魔法を発動させる。
魔力というものが僕にも宿っていると知ったのは招き猫ではない普通のデザインの収納の魔導印を買って貼り付けたときだ。
魔導印は魔道具とは違って貼り付けた本人の魔力を使って発動する。
魔力というものに馴染みのない世界で生まれ育った僕には本当にそのようなものが自分に宿っているのかよくわからなかった。
そんな力が僕に宿っていたのならば中学2年あたりになんらかの形で出てきてもおかしくはなかったはずだ。
しかし魔導印は僕が思っていたよりも大分あっさりと発動した。
よく考えたら僕は転移者ではなく転生者だから、この身体は異世界に来たときに作り替わっていたのだ。
もう中二のときの僕ではないのだ。
魔力を注ぎ込んだ魔導印から炎が迸る。
「いけ、ファイアボール!」
「あ、こら坊ちゃん!何を勝手に……」
僕の放った魔法はゴブリンの上位種の鎧を少しだけ焦がして消えた。
「まあ、あれくらいならいいか……」
圧倒的に攻撃力が足りなかった。
「ふぅ、なんとか全員無傷で終わったな」
「そうっすね。まだ生きてるのもいますからレン様がトドメを刺すのがいいかと」
「わかった」
僕の攻撃魔法がゴブリンの上位種には全く通用しないとわかった。
しかし僕の目的は別に魔法でかっこよく敵を倒すことではない。
まあそれもできたら一番よかったのだけれど、僕の目的はあくまでも戦闘に加わることで経験値の配当を受けることだ。
僕が放ったファイアボールはヘイトを稼ぐこともできない程度の威力だったのでパワーレベリングには逆に向いていた。
ゴブリンの注意を引かず、軽い攻撃だけを加えることができたおかげで僕はかなりの経験値を稼ぐことができただろう。
しかしなぜだか空しい気持ちで胸がいっぱいだ。
僕はレベッカから槍を借り、まだ息のあるゴブリンにトドメを刺して回った。
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