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50.ドラゴン戦
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ハザンはすでに満身創痍で、刃も手に持つ最後の1本になっていたけれどなんとか生きていた。
さすがにしぶとい。
他のSランク冒険者たちもなんとかドラゴンの攻撃を凌いでいる。
「それにしても、あれは何ドラゴンなんだろう」
当初アースドラゴンだと言われていたけれど、それが違うということはくたばりかけのSランク冒険者たちが証明している。
彼らもただの馬鹿ではないから、アースドラゴンならば勝てるという見込みがあって挑んでいるはずだ。
それがこんな状態になっているからには、あのドラゴンはアースドラゴンよりも強い別の種類のドラゴンに違いない。
その姿は大きなトカゲに近い。
コモドオオトカゲを1000倍くらいに大きくして、少しふっくらさせればこのドラゴンのような姿になるだろうか。
翼が無いことから、飛ぶことはできないドラゴンであることが推察される。
皮膚の表面はゴツゴツとした岩のような質感で、まさしくアースドラゴンという呼び名がふさわしいような気がする。
「あれはおそらく、アースドラゴンだろう」
「え、アースドラゴンなの?」
ナリキン氏が神妙な顔をして呟く。
しかしアースドラゴンといえば予想されていたドラゴンだ。
彼らは予想されていた種類のドラゴンに挑んで、舐めプした後にやられてしまったということなのだろうか。
そういう馬鹿な話なのだろうか。
「だが、あれは私の知るアースドラゴンとは違う」
「え、やっぱり違うの?」
「いや、おそらくアースドラゴンではあるのだろう」
どっちだよ。
結論から言えよ。
僕はもったいぶって結論を引き延ばす奴が大嫌いなのだ。
ナリキン氏とはお友達にはなれないかもしれない。
「単純に、大きいのだ。私が見たことのあるアースドラゴンよりも5、6倍くらいは大きい」
「ああ、そのパターンね」
どうせナリキン氏の見た奴は子供だったとかそういうオチでしょ。
もしくはドラゴンは生きているうちは無限に成長するから年齢を重ねるごとに身体が大きくなるとか。
脱皮するごとに大きくなるというパターンもある。
でっかいけど爬虫類みたいなものだからね。
脱皮の可能性は高い。
「でも大きくなっても攻撃パターンは変わらないでしょ。噛みつきとか、尻尾での薙ぎ払いとかの基本攻撃の他に、特殊攻撃は何があるの?」
「警戒すべきなのはブレス攻撃だけだ」
「さっきからハザンが何回か焼かれているやつね」
アースドラゴンの口から極太のビームのようなものが何度も出るのを見た。
ハザンが何回か逃げ損ねて焼かれているけれど、死んでいないので人が一瞬で蒸発するような火力は無さそうだ。
プラズマキャノンのほうが威力は上かもしれない。
「他に地魔法による地形変動攻撃もあるが、ここではその心配はせんでいい。ダンジョン内の壁や床は破壊することができん。地形変動攻撃ができるのはフィールド型の階層だけだ。全て迷宮型のこのダンジョンでは奴は能力を十全に発揮することはできん」
なるほど、それはなかなかのミスチョイス。
やっぱりこのダンジョンのダンジョンコアはすでに外に持ち出されてしまっているから、ダンジョンマスターが死ぬかいなくなるかしてしまっているのかもしれない。
ダンマスがいないから、敵のリポップもあまり効率的ではないんだね。
ダンジョンコアを壊したらダンマス死ぬ説が今のところ有力だな。
そもそもそんなもの最初からいない可能性も結構高いけどね。
「じゃあ物理攻撃以外はブレス攻撃にだけ気を付けていこう」
「「「了解」」」
「もっと声を出していこう。ドラゴンが口を開けてブレスの動作に入ってから退避しても十分に間に合う。お互い声を掛け合い、逃げ遅れそうな人がいたら助け合うんだ。その他の攻撃動作も、予備動作が分かったら声に出して教え合おう」
「「「了解!!」」」
ここで円陣組んで俺たちは強い!とかやりたいところだけど、ちょっとそんな空気じゃないのでやめておく。
現場の指揮はザックスに任せ、僕とナリキン氏は後衛組よりも後ろの少し離れた場所で戦いを見守る。
ナリキン氏の手にはアサルトライフルが、僕の手にはスナイパーライフルが構えられている。
ナリキン氏はまた弾を食いそうな得物を持ち出してきたな。
まあ僕のスナイパーライフルの弾と同型の弾を使うみたいだから、少しなら譲ってあげられるけど。
でもその前に、ドラゴンに7ミリ程度の銃弾が効くのかどうかだ。
僕は試しにドラゴンの大きな目玉を標的にして何発か撃ってみる。
あれからたくさん練習して、僕の銃の腕も少しは上昇した。
銃弾がダンジョンの宝箱からしか出てこないこの世界では、僕ほど練習した人はいないかもしれない。
何発か放つと、ドラゴンの目玉にライフルの弾が命中する。
『グャァァァァァッ』
ドラゴンは悶絶した。
しかし目玉は潰れてはいないようだ。
少し血が出て、白目が充血しているけれどそれだけだ。
銃弾が通らない目玉ってなんなんだろうな。
鉄でできてるのかな。
「眼球に直撃しても少しダメージが入った程度か。この銃ではダメかもしれんな」
「そうかも」
ナリキン氏は冷静に銃を違うものに持ち替えているけれど、僕はそんな余裕が無かった。
なぜならドラゴンの血走った目が僕をロックオンしていたからだ。
どうやらヘイトを稼ぎすぎたようだ。
ネトゲ初心者のようなミスをしてしまった。
さすがにしぶとい。
他のSランク冒険者たちもなんとかドラゴンの攻撃を凌いでいる。
「それにしても、あれは何ドラゴンなんだろう」
当初アースドラゴンだと言われていたけれど、それが違うということはくたばりかけのSランク冒険者たちが証明している。
彼らもただの馬鹿ではないから、アースドラゴンならば勝てるという見込みがあって挑んでいるはずだ。
それがこんな状態になっているからには、あのドラゴンはアースドラゴンよりも強い別の種類のドラゴンに違いない。
その姿は大きなトカゲに近い。
コモドオオトカゲを1000倍くらいに大きくして、少しふっくらさせればこのドラゴンのような姿になるだろうか。
翼が無いことから、飛ぶことはできないドラゴンであることが推察される。
皮膚の表面はゴツゴツとした岩のような質感で、まさしくアースドラゴンという呼び名がふさわしいような気がする。
「あれはおそらく、アースドラゴンだろう」
「え、アースドラゴンなの?」
ナリキン氏が神妙な顔をして呟く。
しかしアースドラゴンといえば予想されていたドラゴンだ。
彼らは予想されていた種類のドラゴンに挑んで、舐めプした後にやられてしまったということなのだろうか。
そういう馬鹿な話なのだろうか。
「だが、あれは私の知るアースドラゴンとは違う」
「え、やっぱり違うの?」
「いや、おそらくアースドラゴンではあるのだろう」
どっちだよ。
結論から言えよ。
僕はもったいぶって結論を引き延ばす奴が大嫌いなのだ。
ナリキン氏とはお友達にはなれないかもしれない。
「単純に、大きいのだ。私が見たことのあるアースドラゴンよりも5、6倍くらいは大きい」
「ああ、そのパターンね」
どうせナリキン氏の見た奴は子供だったとかそういうオチでしょ。
もしくはドラゴンは生きているうちは無限に成長するから年齢を重ねるごとに身体が大きくなるとか。
脱皮するごとに大きくなるというパターンもある。
でっかいけど爬虫類みたいなものだからね。
脱皮の可能性は高い。
「でも大きくなっても攻撃パターンは変わらないでしょ。噛みつきとか、尻尾での薙ぎ払いとかの基本攻撃の他に、特殊攻撃は何があるの?」
「警戒すべきなのはブレス攻撃だけだ」
「さっきからハザンが何回か焼かれているやつね」
アースドラゴンの口から極太のビームのようなものが何度も出るのを見た。
ハザンが何回か逃げ損ねて焼かれているけれど、死んでいないので人が一瞬で蒸発するような火力は無さそうだ。
プラズマキャノンのほうが威力は上かもしれない。
「他に地魔法による地形変動攻撃もあるが、ここではその心配はせんでいい。ダンジョン内の壁や床は破壊することができん。地形変動攻撃ができるのはフィールド型の階層だけだ。全て迷宮型のこのダンジョンでは奴は能力を十全に発揮することはできん」
なるほど、それはなかなかのミスチョイス。
やっぱりこのダンジョンのダンジョンコアはすでに外に持ち出されてしまっているから、ダンジョンマスターが死ぬかいなくなるかしてしまっているのかもしれない。
ダンマスがいないから、敵のリポップもあまり効率的ではないんだね。
ダンジョンコアを壊したらダンマス死ぬ説が今のところ有力だな。
そもそもそんなもの最初からいない可能性も結構高いけどね。
「じゃあ物理攻撃以外はブレス攻撃にだけ気を付けていこう」
「「「了解」」」
「もっと声を出していこう。ドラゴンが口を開けてブレスの動作に入ってから退避しても十分に間に合う。お互い声を掛け合い、逃げ遅れそうな人がいたら助け合うんだ。その他の攻撃動作も、予備動作が分かったら声に出して教え合おう」
「「「了解!!」」」
ここで円陣組んで俺たちは強い!とかやりたいところだけど、ちょっとそんな空気じゃないのでやめておく。
現場の指揮はザックスに任せ、僕とナリキン氏は後衛組よりも後ろの少し離れた場所で戦いを見守る。
ナリキン氏の手にはアサルトライフルが、僕の手にはスナイパーライフルが構えられている。
ナリキン氏はまた弾を食いそうな得物を持ち出してきたな。
まあ僕のスナイパーライフルの弾と同型の弾を使うみたいだから、少しなら譲ってあげられるけど。
でもその前に、ドラゴンに7ミリ程度の銃弾が効くのかどうかだ。
僕は試しにドラゴンの大きな目玉を標的にして何発か撃ってみる。
あれからたくさん練習して、僕の銃の腕も少しは上昇した。
銃弾がダンジョンの宝箱からしか出てこないこの世界では、僕ほど練習した人はいないかもしれない。
何発か放つと、ドラゴンの目玉にライフルの弾が命中する。
『グャァァァァァッ』
ドラゴンは悶絶した。
しかし目玉は潰れてはいないようだ。
少し血が出て、白目が充血しているけれどそれだけだ。
銃弾が通らない目玉ってなんなんだろうな。
鉄でできてるのかな。
「眼球に直撃しても少しダメージが入った程度か。この銃ではダメかもしれんな」
「そうかも」
ナリキン氏は冷静に銃を違うものに持ち替えているけれど、僕はそんな余裕が無かった。
なぜならドラゴンの血走った目が僕をロックオンしていたからだ。
どうやらヘイトを稼ぎすぎたようだ。
ネトゲ初心者のようなミスをしてしまった。
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