俺のメイドちゃんだけキリングマシーンなんだけど

兎屋亀吉

文字の大きさ
14 / 24

14.高貴なる争い(笑)

しおりを挟む
「ようこそ彩叶学園へ四宮君。我々遊桜会は君を歓迎するよ。実は我々の調べで君の父方の祖父の母方の祖母が皇族の血を引く方だと判明してね。ぜひ君には遊桜会に入会して欲しいんだ」

 俺に向かってにこやかに話しかけているのは現遊桜会会長の九条善治だ。
 少しパーマがかったワカメヘアーのイケメンで、金持ちの上、旧華族。
 それだけ揃っていれば叶えられない我がままなんて数えるほどしかないんじゃないか?
 さぞ楽しそうな人生を送っていることだろう。
 しかし俺の父方の祖父の母方の祖母が皇族の血を引いていたとは。
 父さんでも知らないんじゃないか?
 こいつら良く調べたな。
 もしかしたら血筋を調べるのが趣味な奴がこいつらの中にいるのかもしれない。
 メイドの血筋を調べられないように気をつけないと。

『調べても出てくるとは思えませんけどね』

 いや、相手を侮るのは良くないことだ。
 向こうにどんな調査手段があるか分からない。
 魔界通信的な情報網を持っていないとも限らない。

『なるほど、以後気をつけます』

 で、どないしよか。
 遊桜会とか入りたくないんだけど。
 断るのも相手の印象を悪くするしな。
 
「ところで、なんでこの高貴なる者の庭に下賎な貧乏人がいるんだい?」

 やっぱり場違いな中村をスルーしてはくれなかったか。
 でも下賎は余計だ。
 中村は確かに俺達から見たら貧乏人だが、野球がうまいぞ。
 バスケもそこそこできる。
 金のあるなしなんて相場の世界では一瞬で推移するし、あんまり貧乏貧乏言うのはよくないと思います。
 中村はこれから相場を覚えて俺と一緒にビッグウェーブに乗る予定なのに。

『そんなこといつ決めたんですか?』

 今。
 思ったんだけど、こいつら金のあるなしとか、血筋がどうとかうるさいよね。
 そんなこいつらが圧倒的な金の力の前に膝を屈する姿が見たいなと俺は思ったんだよね。

『坊ちゃま、なんでこんな風に育っちゃったんですか?』

 メイドとじゃれあっている間にも雪村が説明して遊桜海とすったもんだしている。
 元々俺達雪村に呼ばれたんだもんね。
 だが、遊桜会はなかなか聞き入れてくれないようだ。
 遊桜会と御三家って仲悪いのかな。
 なんか両者の間にピリピリとした空気を感じる。
 篠原雅也はいつもピリピリしてるんだけど。
 しかし、御三家の圧倒的な財力に屈しないとはなかなか遊桜会もやるな。
 一昔前なら商人と貴族の関係だもんな。
 金という力をもった商人と、権力という力を持った貴族。
 一昔前ならどちらが強いとは一概には言えなかったが、少なくとも今の旧華族たちに大した権力なんてものはないはずだ。
 それならば今は圧倒的に御三家のほうが強いはず。
 血なまぐさい展開にならないといいのだけどな。
 幸いにも雪村も加藤さんもそこまで過激なことをするような性格には思えない。
 篠原は知らんが。
 結局険悪な雰囲気になってしまったその日のお茶会はお開きになった。
 もう行きたくないな。






 憂鬱な放課後を終えた俺達3人はとぼとぼと男子寮に帰宅する。
 
「ごめんね、僕のせいで巻き込んじゃって」

「いや、問題ないよ。でももうあのお茶会には出たくないな」

「まあ雪村のせいではないと思うけど、すごい世界だったな。下賎の貧乏人なんてさ。うちは別にそんなに貧乏ってわけじゃないのにな」

「「え?」」

「え?」

 すまん中村、ずっとお前は極貧にあえぐ苦学生だと思ってた。
 驚いた顔をしている雪村を見れば、やはり中村を苦学生だと思っていたようだ。

「あたりまえだろ!貧乏ならこの学園の高い学費が払えるわけないだろ。うちの父親の年収は一応サラリーマンの平均年収の3倍くらいはあるぞ?」

 なんということでしょう。
 中村は世間一般でいえば割と裕福な家庭の子供だったらしい。
 そういえば俺は本当に貧乏な人って見たことなかった。
 前通っていた学校も一応私立だったし。
 同級生の親もサラリーマンの平均年収より安い給料のやつはいなかったように感じる。
 世間知らずってどこの病院で治るのかな。

『一度世間の荒波に揉まれてみたらどうですか?』

 俺と雪村は寮の部屋に着くまでの間、中村の家庭の話に驚愕し続けた。
 本当に結構裕福じゃないかよ。
 中村の金欠は学費まで払ってもらっているのに生活費まで貰うのが悪いと思って自分の貯金でやりくりしている所為だった。
 この学園は寮の朝晩の食事もただじゃない。
 無料にするならばみんな同じ食事にしないと不公平になってしまう。
 そんな食事に金持ち共は耐えられないため、食堂といってもレストランとそう変わりはないのだ。
 そのため中村はできるだけ早く幼馴染メイドに料理を覚えてもらって、3食手料理を作ってもらいたいらしい。
 まあ頑張れ。
 料理下手属性を克服するのは並大抵のことではないということは先人の知恵で知っている。
 今度魔界食材でも差し入れてやるかな。

『魔界の食材に素人が手を出すのはお勧めしません。死にますよ』

 手料理への道は甘くない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...