俺のメイドちゃんだけキリングマシーンなんだけど

兎屋亀吉

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18.メイドの攻略法

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『なにふざけてんだよ』

「いや、本当の話だ。ちなみに魔王の末娘ですでにお父さんは娘に超えられてしまっているそうだ」

『は?』

「エルザ、どうやったら中村は信じてくれるかな」

「そうですね、少し中村様を迎えに行ってまいります」

 メイドはそう言い残すと、すっと消えてまたすぐすっと現れた。
 小脇に中村を抱えて。
 中村は律儀にもスマホを耳に当てたまま呆然としている。
 おいおい、本当に中村は幼馴染メイド一筋だというのか?
 俺だったらそのポジションでは余裕でお尻を触るぞ。
 こいつ本当に男なのか?

「坊ちゃま、連れてまいりました」

「ご苦労」

 エルザは小脇に抱えた中村をそっと車内に下ろす。
 突然エルザに連れてこられた中村はまだ放心状態だ。
 
「中村、正気にもどれ。これでエルザが本当に悪魔だって分かったか?」

「あ、え?ああ…」

「すごいね。離れた場所にいた中村君を一瞬で連れてくるなんて。僕はエルザさんが超常の存在だって信じるよ」

 さすが雪村さんだ。
 悪魔で魔王の娘なエルザのことも、超常の存在などとソフトな表現で言い表す気遣いもできる男。
 中村はなかなか状況が飲み込めないのかずっとスマホを耳に当てたまま呆けている。
 もう電話切ってるのにな。

「ということでもう説明終わり。これから誘拐犯のアジトに乗り込んで有り金全部頂くからそのことを秘密にできる奴だけ着いてきてくれ」

「僕は着いていく」

「正直まだ何言ってるのかよく分からんが、着いていったらなんか得しそうだと俺の勘が告げているので一緒に行く」

 中村はなかなかいい勘を持っているようだ。
 俺は口止め料代わりに誘拐犯の有り金は3等分するつもりなのだ。
 ということで俺達は虚ろな目をした運転手に案内されて誘拐犯たちのアジトにぞろぞろと入っていった。
 中はすでにあの引越しのときに見た可愛いちびメイドさんたちに殲滅されており、安全に漁ることができた。
 
「なんだこれ、こいつらかなりの数の権力者と取引してやがる」

「警察関係者とも繋がりがあるみたいだね…」

 なんであいつらはあんな書類ばかりを見ているんだろうな。
 俺は書類を持ってああでもないこうでもないと言い合う2人を尻目に、金庫を漁る。
 だが、当然ながら鍵が掛かっていて空かない。
 俺がうんともすんとも言わない金庫の取っ手と格闘していると、ちびエルザの1匹が寄ってきて俺の肩をちょんちょんとつつく。
 なんだよもう可愛いな。
 ちびエルザは俺に金庫から少し離れるようにジェスチャーで伝え、俺が離れたのを確認するとその小さくて可愛い手で握りこぶしをつくり、思い切り金庫にぶつけた。
 耳をつんざく轟音の後に、しばしの静寂。
 ちびエルザがこぶしを引き抜くと、ぎぎぎっと嫌な音がして金庫の扉が千切れ落ちた。
 やっぱり小さくて可愛く見えてもあれはエルザから生まれ出たものなんだなと今更ながら実感した。
 雪村と中村は小さくて可愛いちびエルザの突然の暴挙に驚いているようだが、俺はもうそんなことでは驚かないぞ。
 俺は頬を流れる冷や汗を隠し、ポーカーフェイスを保ったままさも当然のごとく金庫を漁る。
 金庫にはドルやユーロ、円など様々なお金の札束や、金の延べ棒やダイヤモンドなどの貴金属や宝石類など、どんな国でも遊んで暮らせそうな財産の数々が納められていた。
 やはりこいつら相当金持ちだ。
 日本だけではなくたくさんの国に拠点がある大きな組織なのかもしれない。
 ちんたらしてないで早く撤収したほうがいいかもな。
 
「エルザ、根こそぎ持ってさっさと撤収しよう」

「かしこまりました、坊ちゃま」

 エルザがそう言うと、さっきの倍くらいのちびエルザがスカートの中から次々出てきた。
 やっぱりあのスカートの中は一度じっくり調べてみる必要があるようだ。
 
『じゃあ、今晩さっそく調べてみますか?』

 こ、こここ今晩ね!
 落ち着け俺。
 あまりに突然のことに頭の中があんなことやこんなことの妄想でいっぱいになってしまったが、このメイドがそう簡単に攻略可能だろうか?
 いつも俺の思春期の欲望を煽るだけ煽って結局生殺しにする上位悪魔だぞ?
 正面からルパンダイブしてもきっとぬるっと避けられてまた悶々とした夜を過ごすことになるのは明白だ。
 もうあんな辛い夜は耐えられる気がしない。
 どうしたらあのメイドのスカートの中をアドベンチャーできるんだ…。
 考えろ、きっとあるはずだ。
 メイドは悪魔だ。
 人の負の感情を煽り、食らう悪魔。
 だからこそ、憎しみや性欲のような負の感情の扱いには慣れている。
 さらにはこの思考自体もあいつには筒抜け。
 つまり俺は今相手の戦場で戦っている。
 このままではずっとメイドの手のひらの上で全力疾走し続けることになる。
 俺にはエルザに対抗する手段はないのか。
 いや、ある。
 あいつが扱い慣れていない感情。
 すなわち正の感情。
 夢、希望、愛。
 どれも俺が苦手な感情だが選ぶとすれば、愛かな。

「エルザ、俺帰ったらおまえに伝えたいことがあるんだ…」

 そこはかとなく死亡フラグっぽい言い回しになってしまった。

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