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4.【凝縮】スキル
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結論から言うと、店主の選んだスキルオーブは【魔眼(性別)】だった。
「いや、なんでもいいって言っただろうが!俺の責任じゃねえよ!」
「わかってる。わかってるんだけどね……」
「はあ、しょうがねえな。こいつも持ってけ。【詐術】スキルのことを気づかせてもらった礼だ」
そう言って店主が僕に渡してきたのは【生活魔法lv1】スキルだった。
「いいの?こんなに需要がありそうなスキル」
「ああ、こいつは迷宮の宝箱から出る確率が一番高い。在庫が余ってるんだよ」
「そうなんだ。じゃあありがたくもらっておく。これスキルオーブの代金」
僕はポケットから銀貨を10枚取り出して店主に差し出した。
「おお。今度はちゃんと銀貨だな」
いつぞやは申し訳ない。
今日はちゃんと両替手数料銅貨4枚を払って両替商に両替してきた。
貧乏人根性の染みついた僕には痛い出費だったよ。
でもこれからは銀貨の飛び交う世界で生きていくと決めたんだ。
だからこのくらいで躓いていられない。
次は金貨だ。
ここにあるこの銀貨10枚のスキルを全部買って、さらに上のグレードの金貨スキルを買うというのが今の目標だ。
よし、明日から頑張ろう。
「また来ます」
「ああ」
店じまい中の店主に軽く挨拶してから、僕は宿に戻った。
【魔眼(性別)】はあまり期待していないけれど、【生活魔法lv1】は楽しみだ。
なんてったって魔法だから。
異世界に転生して、初の魔法との邂逅であった。
邂逅したにはしたけれども。
生活魔法のレベル1で使える魔法は【光球】だけ。
たしかに魔法らしい魔法なのだけれど、いかんせん地味だ。
光の玉が出るだけ。
人体に害はない。
目に優しいぼんやりした光だ。
転生者特典なのか両親からの遺伝なのかは分からないけれど僕は魔力が多いらしく、いくつも出すことができる。
部屋中に光の玉を浮べてみた。
うん、まぶしい。
ぼんやりとした光でも大量に出せばまぶしいよ。
このスキルを使って最初の光球を浮べたときは少し興奮したけれど、慣れてしまえばそれだけの魔法。
ただ闇を照らすだけの魔法だ。
攻撃力はゼロ。
ちなみにアンデッドなどの闇属性っぽい魔物にダメージが入るということもない。
それはまた別の魔法。
これは本当に明るいだけの魔法。
まあ便利だね。
夜、本が読める。
ロウソク代が節約できる。
洞窟などの探索で松明に片手を塞がれることがない。
まあ冒険者としては最後のやつが一番ありがたいかな。
片手に松明持って闇の中を探索なんてぞっとするよ。
両手が開いてても別に武器が使えるとかそういうこともないんだけど。
まだまだ僕の戦闘スタイルは模索中だ。
今のところは投擲一択。
もうひとつふたつ攻撃手段を手に入れたいとは思っている。
しかし今回見たスキルの中には攻撃手段になりそうなスキルがなかった。
強いてあげるならば【毛魔法lv1】だろうか。
たぶんレベル1の段階では大したことはできないだろうけれど、スキルのレベルが上がれば髪を針のように飛ばしたり、髪で敵を絡め取ったりできるようになるかもしれない。
戦闘の幅を広げるために、次に購入するスキルオーブは【毛魔法lv1】がいいと思う。
よし、そのためには明日からまた頑張らないと。
倍の数のゴブリンを倒すのを目標にしよう。
そしてまた2ヶ月が経った。
今日はお金が貯まったので【毛魔法lv1】を購入しようと思う。
倍の早さとまではいかなかったけれど、前回よりも1ヶ月ほど早くお金を貯めることができた。
時間は有限だ。
大事にしなくてはならない。
年が変わり、僕は16歳になった。
13歳から冒険者になって、そろそろ3年ちょっとになるのか。
まだまだ若いとは言っても、人生なんていつ死んでしまうのか分からない。
それを一度死んだことがある僕はよく知っている。
明日もし死んでも後悔しないように、人生を楽しまなければならない。
そんなことを考えながら僕はスキル屋の扉をくぐった。
「こんにちは」
「らっしゃい」
店主も少しは愛想がよくなったようだ。
常連になったからかもしれない。
それはそれとして、【毛魔法lv1】は売れずに残っているだろうか。
面白そうなスキルだから誰かがすでに買ってしまっているかもしれない。
僕は今更ながら心配になってきた。
いつもの銀貨10枚のスキルオーブのコーナーに急ぐ。
よかった、まだあった。
銀貨10枚のスキルオーブが乱雑に置かれた棚には、しっかりと【毛魔法lv1】の封じ込められたスキルオーブが鎮座していた。
スキルオーブの顔ぶれを見るに、【暗算lv1】【投擲lv1】【風見鶏lv1】【聴覚強化lv1】が売れている。
どれも使えそうなスキルだと思うので納得だ。
【暗算lv1】と【風見鶏lv1】は別にスキルでやらなくてもいいかとも思うのだけれど、もしかしたらレベルを上げたらコンピュータ並みの計算が一瞬でできたり、空気の流れが全部見えたりするかもしれないのでそれはそれで使える可能性がある。
他のスキルは言うまでもなく使えそうなスキルばかりだ。
そして新たに加わったスキルが3つ。
スキル名:【声記憶lv1】
詳細:一度効いた人の声を忘れない。
スキル名:【召喚術(サイコロ)】
詳細:エクストラスキル。サイコロを召喚できる。
スキル名:【凝縮lv1】
詳細:水を発生させる?
また使いどころの分からないスキルばかりだ。
ん?この最後の【凝縮lv1】ってスキルだけ詳細にハテナマークが付いている。
はっきりしていないんだろうか?
「おじさん、このスキルってさ」
「あ?ああ、そいつか。そのスキルは記録が少ねーんだよな。宝箱から出る確率はそんなに低くないスキルだからレアリティは高くねぇと思うんだけどな」
「この詳細って、そのスキルを持っていた人の記録から書いてるの?」
「ああそうだ。商業ギルドの本部には何千何万というスキルの効果や特徴が記された記録があるらしいぜ。俺達は商業ギルドに手数料を払って鑑定してもらってんだよ」
「へー」
ということはこのスキル、【凝縮lv1】のデータは商業ギルド本部にもろくなものが無いということらしい。
僕がこのスキルの名前を見て頭に思い浮かんだのは小学校の理科の実験だった。
物質の三態と状態変化、そのなかの凝縮。
物質が気体から液体になるときの変化だ。
この詳細欄に書かれている水を発生させるというのは、空気中に漂う水分を凝縮させて液体にしたということなのではないだろうか。
だとすれば、なかなかに使えそうなスキルだ。
次に買うべきスキルが決まった。
「おじさん、このスキルさ。取り置きってできる?なるべく早く買いにくるから」
「別にいいけどな。多分そんなスキル売れねえだろうし」
「ありがとう。絶対買いに来るから」
「あ、ああ」
店主は僕がなぜこんな使い道の無さそうなスキルを買おうとしているのか、少し不思議なようだ。
ふふふ、教えてあげないよ。
僕は【毛魔法lv1】を銀貨10枚で買い、スキル屋を後にした。
「いや、なんでもいいって言っただろうが!俺の責任じゃねえよ!」
「わかってる。わかってるんだけどね……」
「はあ、しょうがねえな。こいつも持ってけ。【詐術】スキルのことを気づかせてもらった礼だ」
そう言って店主が僕に渡してきたのは【生活魔法lv1】スキルだった。
「いいの?こんなに需要がありそうなスキル」
「ああ、こいつは迷宮の宝箱から出る確率が一番高い。在庫が余ってるんだよ」
「そうなんだ。じゃあありがたくもらっておく。これスキルオーブの代金」
僕はポケットから銀貨を10枚取り出して店主に差し出した。
「おお。今度はちゃんと銀貨だな」
いつぞやは申し訳ない。
今日はちゃんと両替手数料銅貨4枚を払って両替商に両替してきた。
貧乏人根性の染みついた僕には痛い出費だったよ。
でもこれからは銀貨の飛び交う世界で生きていくと決めたんだ。
だからこのくらいで躓いていられない。
次は金貨だ。
ここにあるこの銀貨10枚のスキルを全部買って、さらに上のグレードの金貨スキルを買うというのが今の目標だ。
よし、明日から頑張ろう。
「また来ます」
「ああ」
店じまい中の店主に軽く挨拶してから、僕は宿に戻った。
【魔眼(性別)】はあまり期待していないけれど、【生活魔法lv1】は楽しみだ。
なんてったって魔法だから。
異世界に転生して、初の魔法との邂逅であった。
邂逅したにはしたけれども。
生活魔法のレベル1で使える魔法は【光球】だけ。
たしかに魔法らしい魔法なのだけれど、いかんせん地味だ。
光の玉が出るだけ。
人体に害はない。
目に優しいぼんやりした光だ。
転生者特典なのか両親からの遺伝なのかは分からないけれど僕は魔力が多いらしく、いくつも出すことができる。
部屋中に光の玉を浮べてみた。
うん、まぶしい。
ぼんやりとした光でも大量に出せばまぶしいよ。
このスキルを使って最初の光球を浮べたときは少し興奮したけれど、慣れてしまえばそれだけの魔法。
ただ闇を照らすだけの魔法だ。
攻撃力はゼロ。
ちなみにアンデッドなどの闇属性っぽい魔物にダメージが入るということもない。
それはまた別の魔法。
これは本当に明るいだけの魔法。
まあ便利だね。
夜、本が読める。
ロウソク代が節約できる。
洞窟などの探索で松明に片手を塞がれることがない。
まあ冒険者としては最後のやつが一番ありがたいかな。
片手に松明持って闇の中を探索なんてぞっとするよ。
両手が開いてても別に武器が使えるとかそういうこともないんだけど。
まだまだ僕の戦闘スタイルは模索中だ。
今のところは投擲一択。
もうひとつふたつ攻撃手段を手に入れたいとは思っている。
しかし今回見たスキルの中には攻撃手段になりそうなスキルがなかった。
強いてあげるならば【毛魔法lv1】だろうか。
たぶんレベル1の段階では大したことはできないだろうけれど、スキルのレベルが上がれば髪を針のように飛ばしたり、髪で敵を絡め取ったりできるようになるかもしれない。
戦闘の幅を広げるために、次に購入するスキルオーブは【毛魔法lv1】がいいと思う。
よし、そのためには明日からまた頑張らないと。
倍の数のゴブリンを倒すのを目標にしよう。
そしてまた2ヶ月が経った。
今日はお金が貯まったので【毛魔法lv1】を購入しようと思う。
倍の早さとまではいかなかったけれど、前回よりも1ヶ月ほど早くお金を貯めることができた。
時間は有限だ。
大事にしなくてはならない。
年が変わり、僕は16歳になった。
13歳から冒険者になって、そろそろ3年ちょっとになるのか。
まだまだ若いとは言っても、人生なんていつ死んでしまうのか分からない。
それを一度死んだことがある僕はよく知っている。
明日もし死んでも後悔しないように、人生を楽しまなければならない。
そんなことを考えながら僕はスキル屋の扉をくぐった。
「こんにちは」
「らっしゃい」
店主も少しは愛想がよくなったようだ。
常連になったからかもしれない。
それはそれとして、【毛魔法lv1】は売れずに残っているだろうか。
面白そうなスキルだから誰かがすでに買ってしまっているかもしれない。
僕は今更ながら心配になってきた。
いつもの銀貨10枚のスキルオーブのコーナーに急ぐ。
よかった、まだあった。
銀貨10枚のスキルオーブが乱雑に置かれた棚には、しっかりと【毛魔法lv1】の封じ込められたスキルオーブが鎮座していた。
スキルオーブの顔ぶれを見るに、【暗算lv1】【投擲lv1】【風見鶏lv1】【聴覚強化lv1】が売れている。
どれも使えそうなスキルだと思うので納得だ。
【暗算lv1】と【風見鶏lv1】は別にスキルでやらなくてもいいかとも思うのだけれど、もしかしたらレベルを上げたらコンピュータ並みの計算が一瞬でできたり、空気の流れが全部見えたりするかもしれないのでそれはそれで使える可能性がある。
他のスキルは言うまでもなく使えそうなスキルばかりだ。
そして新たに加わったスキルが3つ。
スキル名:【声記憶lv1】
詳細:一度効いた人の声を忘れない。
スキル名:【召喚術(サイコロ)】
詳細:エクストラスキル。サイコロを召喚できる。
スキル名:【凝縮lv1】
詳細:水を発生させる?
また使いどころの分からないスキルばかりだ。
ん?この最後の【凝縮lv1】ってスキルだけ詳細にハテナマークが付いている。
はっきりしていないんだろうか?
「おじさん、このスキルってさ」
「あ?ああ、そいつか。そのスキルは記録が少ねーんだよな。宝箱から出る確率はそんなに低くないスキルだからレアリティは高くねぇと思うんだけどな」
「この詳細って、そのスキルを持っていた人の記録から書いてるの?」
「ああそうだ。商業ギルドの本部には何千何万というスキルの効果や特徴が記された記録があるらしいぜ。俺達は商業ギルドに手数料を払って鑑定してもらってんだよ」
「へー」
ということはこのスキル、【凝縮lv1】のデータは商業ギルド本部にもろくなものが無いということらしい。
僕がこのスキルの名前を見て頭に思い浮かんだのは小学校の理科の実験だった。
物質の三態と状態変化、そのなかの凝縮。
物質が気体から液体になるときの変化だ。
この詳細欄に書かれている水を発生させるというのは、空気中に漂う水分を凝縮させて液体にしたということなのではないだろうか。
だとすれば、なかなかに使えそうなスキルだ。
次に買うべきスキルが決まった。
「おじさん、このスキルさ。取り置きってできる?なるべく早く買いにくるから」
「別にいいけどな。多分そんなスキル売れねえだろうし」
「ありがとう。絶対買いに来るから」
「あ、ああ」
店主は僕がなぜこんな使い道の無さそうなスキルを買おうとしているのか、少し不思議なようだ。
ふふふ、教えてあげないよ。
僕は【毛魔法lv1】を銀貨10枚で買い、スキル屋を後にした。
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