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8.お貴族様冒険者
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さて、こんなときなにから話していいものか。
きっと魔物に追いかけられて疲れているだろうからまずは水でも飲んで寛いでもらうべきなのか。
それとも怪我なんかしてないかを確認したほうがいいのか。
いやでもたとえ怪我をしていたとして僕になにができるというのか。
絶対にこの目の前のヒーラーっぽい女の子のほうが怪我には役に立つわけで。
しかし見事なローブだ。
真っ白で、所々金糸で装飾されたそのローブは僕の稼ぎで買うことができるような代物ではない。
他の駆け出し冒険者たちに目を向けると、みんな装備は充実していそうだ。
男が2人、装備から前衛と斥候かな。
どちらも高そうな鎧を身につけている。
皮鎧ではあるものの、白く染色されていて所々金属のプレートが入っており少し重そうだ。
前衛の彼は背中に大剣まで吊るして、これではゴブリンから走って逃げることは難しい。
女が2人、ひとりは白ローブのヒーラーっぽい彼女。
そしてもうひとりは黒いローブにねじくれた木の杖を持った少女で、多分魔法職だろうか。
あの杖はおそらく【錬金術】スキルで作られた魔法スキルを増幅する効果を持つ武器だろう。
彼女は肩で息をしており、あまり運動が得意そうではない。
どうやらゴブリンから逃げ切れなかったのはこの彼女の体力不足と前衛の彼の重すぎる装備が原因みたいだ。
さて、なんと声をかけたものか。
またここに戻ってきてしまった。
「あ、あの、どうかしましたか?」
ままままずい、変に思われている。
そうだね、なにか答えなくては。
「あ、えっと、ゴブリン、貰っても?」
「え、はい。あなたが倒したものですから……」
そうだね。
僕なんかが新人冒険者の世話を焼こうなんておこがましかったね。
討伐証明部位を切り取ったらさっさと去ろう。
きっと僕の他に親切なベテラン冒険者的な奴が面倒を見てくれるさ。
というかあの装備絶対平民じゃないよ。
関わり合いにならないほうがいい。
僕はそう結論付け、いそいそとゴブリンの右耳を切り取っていく。
「なあお前、さっきのなんだ?」
あまり話さずにさっとフェードアウトしようと思っていた僕だったけれど、そうは問屋が卸さないとばかりに前衛の少年が話しかけてくる。
「さっきの?」
液体窒素は僕の切り札にもなりうるので一応とぼけてみる。
「さっきゴブリンに投げつけた小瓶のことだ」
とぼけきれないだろうか。
というか液体窒素とか言って分かるのか?
「はあ、あれのことっすか」
なんか微妙な敬語になってしまう。
だって絶対こいつ貴族なんだもん。
ていうかこいつら全員貴族なんじゃないかな。
こんないい装備付けてゴブリン狩りに来るなんておかしいでしょ。
それにこいつの大剣、さっきちらっとなんかの紋章が入ってんのが見えた。
他の仲間の態度から、なんとなくこの前衛のやつが一番位が高いっぽい。
なんだ、ひれ伏したほうがいいのか?
「あれは、えっと、なんていうか……」
とっさのことに僕は結局何を言えばいいのか分からない。
とっさじゃなくても分からないけど。
「リグリット様、冒険者の方はあまり手札を見せたがりません。あまり詮索しないほうが……」
白ローブの女の子がなんとかいさめようとしてくれているみたいだ。
やっぱりあの前衛っぽい少年は偉いっぽいな。
人に様付けて呼ぶ人初めて見たよ。
「しかし気になるではないか。ゴブリンが悲鳴をあげておったぞ。あれがあれば僕達でもゴブリンが狩れるのではないか?」
「そうですが……」
困ったような顔で白ローブの子は僕の方を見る。
え、僕のターン?
何かしゃべったほうが?
「これは、ええっと、氷結水ってもので……」
とっさに液体窒素のかっこいい呼び方を考えてみたけど氷結水って……。
「それはどこでも手に入るものなのでしょうか」
「うーん、たぶん手に入らないと思います。僕が作ったものなので……」
めんどくさいけど、嘘はあまりつかないほうがいい。
バレると首が無くなる可能性もあるから。
「いくつか譲っていただくわけにはいきませんか?」
「い、いいですけど……」
僕にはお金が必要なんです。
切り札だとかなんとか言って、結局僕はこの駆け出し冒険者の貴族様方に液体窒素を売ることにしてしまった。
ああ、お金がないのがいけないんだ。
手元にあった液体窒素は3本。
1本あたり銀貨3枚で売れた。
自作の保存容器も銀貨1枚で買ってくれた。
やっぱり貴族はすごい。
非常に冷たくなっているので触れるとき気をつけるように注意だけした。
貴族冒険者たちは、液体窒素を使ってゴブリンを狩るというので僕はお暇することにした。
これであのスキルが買える。
銀貨10枚を握り締めて僕はスキップしながら街に帰った。
転んだ。
もうスキップはしない。
「こんにちは」
「らっしゃい。早いな」
「ちょっと臨時収入があって……」
店主は奥に引っ込んでひとつのスキルオーブを持って帰ってきた。
きっとあのスキルだ。
「これだろ?」
「はい。これ、代金」
僕は恐る恐るスキルオーブを受け取る。
鑑定証には確かに【??魔法lv1】と書かれている。
ふふふ、ついに僕にもチートスキルが。
昨日の今日ではあるけれども、一応僕は銀貨10枚ブースに追加のスキルがないかどうかを確認してからスキル屋を出る。
【味覚強化lv1】とかいうスキルが追加されていたけれど名前からして多分ゴミスキルだろう。
いや、料理人などにとってはかなり有用なスキルかもしれないけれど僕にとってはという意味でね。
僕は手に入れたばかりのスキルオーブを握り締めて、にやついてしまうのを我慢しながら宿に戻った。
宿の娘さんに顔が気持ち悪いと言われた。
明日はゴブリン狩りを休もう。
きっと魔物に追いかけられて疲れているだろうからまずは水でも飲んで寛いでもらうべきなのか。
それとも怪我なんかしてないかを確認したほうがいいのか。
いやでもたとえ怪我をしていたとして僕になにができるというのか。
絶対にこの目の前のヒーラーっぽい女の子のほうが怪我には役に立つわけで。
しかし見事なローブだ。
真っ白で、所々金糸で装飾されたそのローブは僕の稼ぎで買うことができるような代物ではない。
他の駆け出し冒険者たちに目を向けると、みんな装備は充実していそうだ。
男が2人、装備から前衛と斥候かな。
どちらも高そうな鎧を身につけている。
皮鎧ではあるものの、白く染色されていて所々金属のプレートが入っており少し重そうだ。
前衛の彼は背中に大剣まで吊るして、これではゴブリンから走って逃げることは難しい。
女が2人、ひとりは白ローブのヒーラーっぽい彼女。
そしてもうひとりは黒いローブにねじくれた木の杖を持った少女で、多分魔法職だろうか。
あの杖はおそらく【錬金術】スキルで作られた魔法スキルを増幅する効果を持つ武器だろう。
彼女は肩で息をしており、あまり運動が得意そうではない。
どうやらゴブリンから逃げ切れなかったのはこの彼女の体力不足と前衛の彼の重すぎる装備が原因みたいだ。
さて、なんと声をかけたものか。
またここに戻ってきてしまった。
「あ、あの、どうかしましたか?」
ままままずい、変に思われている。
そうだね、なにか答えなくては。
「あ、えっと、ゴブリン、貰っても?」
「え、はい。あなたが倒したものですから……」
そうだね。
僕なんかが新人冒険者の世話を焼こうなんておこがましかったね。
討伐証明部位を切り取ったらさっさと去ろう。
きっと僕の他に親切なベテラン冒険者的な奴が面倒を見てくれるさ。
というかあの装備絶対平民じゃないよ。
関わり合いにならないほうがいい。
僕はそう結論付け、いそいそとゴブリンの右耳を切り取っていく。
「なあお前、さっきのなんだ?」
あまり話さずにさっとフェードアウトしようと思っていた僕だったけれど、そうは問屋が卸さないとばかりに前衛の少年が話しかけてくる。
「さっきの?」
液体窒素は僕の切り札にもなりうるので一応とぼけてみる。
「さっきゴブリンに投げつけた小瓶のことだ」
とぼけきれないだろうか。
というか液体窒素とか言って分かるのか?
「はあ、あれのことっすか」
なんか微妙な敬語になってしまう。
だって絶対こいつ貴族なんだもん。
ていうかこいつら全員貴族なんじゃないかな。
こんないい装備付けてゴブリン狩りに来るなんておかしいでしょ。
それにこいつの大剣、さっきちらっとなんかの紋章が入ってんのが見えた。
他の仲間の態度から、なんとなくこの前衛のやつが一番位が高いっぽい。
なんだ、ひれ伏したほうがいいのか?
「あれは、えっと、なんていうか……」
とっさのことに僕は結局何を言えばいいのか分からない。
とっさじゃなくても分からないけど。
「リグリット様、冒険者の方はあまり手札を見せたがりません。あまり詮索しないほうが……」
白ローブの女の子がなんとかいさめようとしてくれているみたいだ。
やっぱりあの前衛っぽい少年は偉いっぽいな。
人に様付けて呼ぶ人初めて見たよ。
「しかし気になるではないか。ゴブリンが悲鳴をあげておったぞ。あれがあれば僕達でもゴブリンが狩れるのではないか?」
「そうですが……」
困ったような顔で白ローブの子は僕の方を見る。
え、僕のターン?
何かしゃべったほうが?
「これは、ええっと、氷結水ってもので……」
とっさに液体窒素のかっこいい呼び方を考えてみたけど氷結水って……。
「それはどこでも手に入るものなのでしょうか」
「うーん、たぶん手に入らないと思います。僕が作ったものなので……」
めんどくさいけど、嘘はあまりつかないほうがいい。
バレると首が無くなる可能性もあるから。
「いくつか譲っていただくわけにはいきませんか?」
「い、いいですけど……」
僕にはお金が必要なんです。
切り札だとかなんとか言って、結局僕はこの駆け出し冒険者の貴族様方に液体窒素を売ることにしてしまった。
ああ、お金がないのがいけないんだ。
手元にあった液体窒素は3本。
1本あたり銀貨3枚で売れた。
自作の保存容器も銀貨1枚で買ってくれた。
やっぱり貴族はすごい。
非常に冷たくなっているので触れるとき気をつけるように注意だけした。
貴族冒険者たちは、液体窒素を使ってゴブリンを狩るというので僕はお暇することにした。
これであのスキルが買える。
銀貨10枚を握り締めて僕はスキップしながら街に帰った。
転んだ。
もうスキップはしない。
「こんにちは」
「らっしゃい。早いな」
「ちょっと臨時収入があって……」
店主は奥に引っ込んでひとつのスキルオーブを持って帰ってきた。
きっとあのスキルだ。
「これだろ?」
「はい。これ、代金」
僕は恐る恐るスキルオーブを受け取る。
鑑定証には確かに【??魔法lv1】と書かれている。
ふふふ、ついに僕にもチートスキルが。
昨日の今日ではあるけれども、一応僕は銀貨10枚ブースに追加のスキルがないかどうかを確認してからスキル屋を出る。
【味覚強化lv1】とかいうスキルが追加されていたけれど名前からして多分ゴミスキルだろう。
いや、料理人などにとってはかなり有用なスキルかもしれないけれど僕にとってはという意味でね。
僕は手に入れたばかりのスキルオーブを握り締めて、にやついてしまうのを我慢しながら宿に戻った。
宿の娘さんに顔が気持ち悪いと言われた。
明日はゴブリン狩りを休もう。
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