ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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27.試運転

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 翌日、宿の離れで目を覚ました僕は昨日作ったプロペラの改善点を木板に炭で書き出していく。
 
・風力が足りない。
・見た目がダサい。
・回転速度を上げると軸が摩擦で赤熱し、髪が燃える。

 大きな点はこの3つくらいだろうか。
 中でも風力の問題は無視できない。
 前の世界では小型の扇風機でもかなりの風力が出ていたような気がする。
 動力である回転スキルは、向こうの世界のガソリンエンジンにも負けないくらいの馬力と回転数を出せているというのになぜこんなにも前に出る風力が少ないのか。
 やっぱり羽根が完璧に風を捕らえきれていないのが問題なのか。
 しかしこれ以上微調整を続けても素人の僕に完璧なプロペラが作れるとは思えない。
 であるならば、取れる方策は2つ。
 一つは風を一方向に流すためにプロペラにカバーを取り付ける。
 横に流れている風がカバーにぶつかって多少は減衰しながらも前に流れてくれるだろう。
 要はサーキュレーターのような感じだ。
 二つ目はプロペラを大きくする。
 本体が大きくなってしまうからあまりプロペラを大きくしたくはないんだけど、一回りくらいは大きくしても大丈夫だろう。
 そうと決まればまた試作品を作ろう。
 僕はその日も夜遅くまで作業し続けた。





 1週間後だ。
 試作品12号はなかなかいいと思う。
 僕の工作技術はこの1週間でなかなか上達したみたいで、見た目はなかなかオシャレだ。
 スキル屋で金貨10枚のスキルの中に【変色魔法lv1】という魔法スキルを見つけて衝動買いしてしまったけれど、こいつがなかなかいい仕事をしてくれるスキルだった。
 あらゆるものを好きな色に変える魔法スキルらしく、デザインの向上に大活躍してくれている。
 無骨な鉄色の鋼板で作ったプロペラを光沢のある黒に染めてみたらなかなかオシャレになった。
 摩擦の問題は単純に油を差して多少摩擦を軽減することによって一応解決した。
 まだそこそこ熱くなるので長距離連続使用は控えるべきだろう。
 大きさは直径50センチほど。
 四角い台座に丸いドラム型のサーキュレーターが嵌っていて、後ろには軸が少しはみ出ている。
 このはみ出ている部分に髪を一房巻きつけて回転させるのだ。
 僕は毛魔法を使い髪を一房軽く巻きつけて回転スキルを発動すると、部屋のものがすべて吹っ飛びそうなほどの風が発生する。
 素晴らしい。
 これならかなりのスピードで飛べるはず。
 プロペラはこれで完成でいいだろう。
 僕はぐちゃぐちゃになった部屋で、本体の製作を開始した。
 本体の製作は簡単だ。
 木で枠組みを作り、そこに装甲板を貼り付けていくだけだ。
 僕は半日ほどで本体を作り上げた。
 プロペラを大きくしたせいで、本体は棺桶のような大きさになってしまった。
 プロペラは全部で4つ。
 前と後ろ、そして小型のプロペラを左右に。
 それだけ付けないと曲がれないし止まれない。
 僕は最後に染色魔法を使って全ての鋼板を光沢のある黒に染色していく。
 これで完成だ。
 黒に染めたせいでより棺桶感が出てしまった。
 僕的にはかなりかっこよくできたと思っている。
 名前はフライングボックスに決めた。
 跳び箱じゃないよ。
 芸能事務所でもない。
 僕はフライングボックスを浮遊スキルで浮かせ、ドアにぶつけないように慎重に外に出した。
 これから試乗だ。




 やってきたのは街の外。
 街を出るときにジロジロ見られて恥ずかしかった。
 早くブラックキューブスキルが欲しいな。
 オークを狩りまくって最初に買おう。
 ブラックキューブスキルがあればさらに多くのオークを狩ることができて収入も増える。
 僕は人目が少ない街道沿いの林の中に入ると、フライングボックスを下ろした。
 そしてその上に乗ると、また浮遊スキルで宙に浮かせた。
 
「おおっ、ふわふわしてる」

 前世では飛行機に乗ったことがあったけれど、箱に乗って空を浮遊するなんて生まれて初めてだったので少しはしゃいでしまう。
 浮遊はけっこう安定していて、ピョンピョンと軽くジャンプしてみても地面に落ちることはない。
 まるで水に浮いているようだ。
 僕はさっそくプロペラを動かしてみる。
 本体部分の上部には穴が4つ空いていて、その下にそれぞれのプロペラの軸が露出している。
 僕はその全てに毛魔法で軽く髪を巻きつけると、後ろのプロペラだけに回転スキルを発動した。
 こんな林の中でスピードを出すわけにはいかないのでゆっくりとだ。
 後方のファンが回り微風が出ると、フライングボックスはゆっくりと前に動き始めた。
 ここは林の中なのですぐに木にぶつかりそうになる。
 僕は左のファンを少しだけ回して左に曲がる。
 左右のファンは斜め後方に向かって風を噴出するようになっているので尻が右に振られ結果的に頭は左を向く。
 全速力を出すときは左右のファンと後方のファンの3つを回して進みたかったのでこの方式になった。
 しかし尻を左右に振って滑るように曲がるのでコントロールが難しい。
 僕は木にぶつかりそうになったところで毛魔法を使って機体を引っぱり回避した。
 危うく出来たばかりの機体がべっこりいってしまうところだった。
 障害物の多い場所ではプロペラを回して動くよりも毛魔法で周囲のものを掴みながら進んだほうが良さそうだ。
 障害物の無い場所でも、毛魔法で土を蹴りながら進んでもよかったのだけれど、それだと蜘蛛の魔物が歩いているみたいで気持ち悪いし他の冒険者に攻撃されそうだ。
 何よりスピードが出ない。
 それならいっそ機体を船のような形にして帆でも張ったほうがマシだ。
 空飛ぶ船とかかっこいいし、よく考えたらそれもありだな。
 僕は思いついた2号機の構想を固めながら1号機を引っぱって街に戻った。


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