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99.ギルドで喧嘩
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「聞いたかよ。帝国と戦争になるらしいぞ」
「らしいな。義勇兵を募っているらしいぜ。お前行けばいいじゃないか」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。戦争なんて割りに合わない仕事受ける冒険者がいるわけねえぜ」
冒険者ギルドは、朝から酒を呑みながらそんな話をしている冒険者で溢れている。
帝国軍の工作員によるドラゴン召喚事件から数日。
すでに僕たちは領都に帰ってきているのだけれど、領都では帝国との戦争ムードが高まっている。
僕たちの暮らす王国と、お隣さんの帝国とは昔から仲が悪かったんだ。
だから今回の事件を受けて、王国内では帝国に報復すべきだという声が大きいらしい。
帝国も帝国で、国境周辺に兵を集めているという噂もある。
両国が武力衝突するのも時間の問題かもしれない。
しかしそれは僕たち冒険者にとってはあまり関係のない話だったりもする。
王国は義勇兵を募っているようだけれど、冒険者はあまり人同士の争いごとに参加することは無い。
冒険者の専門はあくまでも魔物で、そちらのほうが稼げる。
ゴブリンを一日に数匹倒せば毎日呑んだくれていられるのに、あえて戦争などという命の危険がある仕事を請け負うことは無いのだ。
だから僕たち冒険者は特別愛国心に溢れているような人以外は基本的に傍観の構えだ。
もちろん僕もその他大勢とスタンスは変わらない。
勝手にやってくれ。
僕は適当なテーブルに座り、ワインとソーセージを注文する。
いやぁ、昼間から飲むお酒はおいしいよね。
戦争なんて嫌なひびきだけど、お酒でも呑んで忘れてしまおう。
僕もなかなか冒険者らしくなってきたんじゃないかな。
今は戦争などよりもよほど大事なこともあるしね。
僕はソーセージを齧り、ワインを啜りながらひとつのスキルオーブを眺める。
スキル名:【召喚術(ブルードラゴン)】
どさくさに紛れてネコババしてきたドラゴン召喚のスキルオーブだ。
スキルオーブを肴にワインがいくらでも飲めちゃうね。
1杯飲んだだけでちょっとふわふわするので実際にはそんなに飲めないけどね。
これとは別に、リグリット様はドラゴン討伐の報酬に伯爵家の宝物庫から一人一つ好きな宝物を下さった。
僕はもちろんスキルオーブにしたよ。
武器やマジックアイテムなんて使えないからね。
僕はそのオーブも取り出して横に並べる。
スキル名:【ビームlv1】
ビームだ。
何回見てもビームだな。
僕は転生者だし翻訳スキルを持っているのでこのビームというスキルがすごく魅力的に見えたのだけれど、リグリット様たちはなぜそれを選ぶのかという顔をしていた。
このビームも反転魔法やスキル効果10倍と同じで、未解明の古代語なので他の人には読めないらしい。
翻訳スキル様様だ。
ちなみに翻訳スキルも未解明なので僕が古代語を読めていることもリグリット様たちには知られていない。
リグリット様たちには鉱山でお世話になったので隠し事は心苦しいのだけれど、それとこれとは別の話だからね。
僕はまた一口ソーセージを齧ってワインをグビリと飲んだ。
ああ、いい気分だ。
「おいおい、薬草拾いじゃねえかよ。ガキが昼間から酒なんぞ呑みやがって、いい身分だな。お、スキルオーブじゃねえか。またゴミスキルでも買ったのかよ」
いい気分が台無しだ。
僕に絡んできたのは前にも絡まれたことのある冒険者だ。
ハゲ頭のゴリマッチョで、その口からは僕のことを言えないくらいに酒の匂いが香ってくる。
前にもギルドで喧嘩して、僕が勝ったというのに忘れてしまっているらしい。
「おい無視してんじゃねえぞクソガキ。けっ、いい酒飲みやがって」
ゴリマッチョは僕の杯を無理矢理奪って、残っていたワインを飲み干す。
うぇ、間接チューだ。
「このスキルオーブも俺様が使ってやるよ。どうせクソみてぇなスキルだろうが、無いよりマシだからな」
ゴリマッチョは僕の大切なスキルオーブに手を伸ばす。
僕はゴリマッチョの腕に持っていたフォークを突き立てた。
「いでぇぇっ、てめぇ薬草拾いが!!何しやがる!!」
「それはこっちのセリフだゴミカス野朗」
「なんだとてめぇ!!」
ゴリマッチョは腰の剣に手をかける。
遅すぎるな。
視力強化スキルによって僕の動体視力は強化されている。
ゆっくりもたもた剣を引き抜いているようにしか見えないな。
僕の記憶に残る帝国軍人は、剣をいつ抜いたのか分からないくらい早かった。
それに比べたらこいつは遅すぎてあくびが出そうだ。
僕は手に持ったフォークをゴリマッチョの手首に押し当てて回転スキルを発動する。
フォークは高速回転してゴリマッチョの手首を抉った。
「いでぇぇぇぇぇ!!殺す、殺すぞてめぇ!!」
「早くやれば?」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
ゴリマッチョは抉れた手とは逆の手で剣を抜き、僕に切りかかる。
僕は反転魔法を足元に配置し、すべての力を反転させる。
男は踏み込んだ足が跳ね上がって後ろ向きに大回転した。
後頭部にはかなり大きなコブができてしまっている。
痛そうだ。
でも治療はしてあげない。
毎晩寝るときコブの痛みに苦しめばいい。
僕はテーブルの上のスキルオーブを回収し、代金を置いてギルドを出た。
なんか気分が冷めてしまったな。
どこかに遠出して、ブルードラゴンの使役でもするとしよう。
楽しいことを考えると自然と気分が上向いてくる。
僕は城門を潜り、ガルーダに乗ると天高く舞い上がった。
「らしいな。義勇兵を募っているらしいぜ。お前行けばいいじゃないか」
「馬鹿言ってんじゃねえよ。戦争なんて割りに合わない仕事受ける冒険者がいるわけねえぜ」
冒険者ギルドは、朝から酒を呑みながらそんな話をしている冒険者で溢れている。
帝国軍の工作員によるドラゴン召喚事件から数日。
すでに僕たちは領都に帰ってきているのだけれど、領都では帝国との戦争ムードが高まっている。
僕たちの暮らす王国と、お隣さんの帝国とは昔から仲が悪かったんだ。
だから今回の事件を受けて、王国内では帝国に報復すべきだという声が大きいらしい。
帝国も帝国で、国境周辺に兵を集めているという噂もある。
両国が武力衝突するのも時間の問題かもしれない。
しかしそれは僕たち冒険者にとってはあまり関係のない話だったりもする。
王国は義勇兵を募っているようだけれど、冒険者はあまり人同士の争いごとに参加することは無い。
冒険者の専門はあくまでも魔物で、そちらのほうが稼げる。
ゴブリンを一日に数匹倒せば毎日呑んだくれていられるのに、あえて戦争などという命の危険がある仕事を請け負うことは無いのだ。
だから僕たち冒険者は特別愛国心に溢れているような人以外は基本的に傍観の構えだ。
もちろん僕もその他大勢とスタンスは変わらない。
勝手にやってくれ。
僕は適当なテーブルに座り、ワインとソーセージを注文する。
いやぁ、昼間から飲むお酒はおいしいよね。
戦争なんて嫌なひびきだけど、お酒でも呑んで忘れてしまおう。
僕もなかなか冒険者らしくなってきたんじゃないかな。
今は戦争などよりもよほど大事なこともあるしね。
僕はソーセージを齧り、ワインを啜りながらひとつのスキルオーブを眺める。
スキル名:【召喚術(ブルードラゴン)】
どさくさに紛れてネコババしてきたドラゴン召喚のスキルオーブだ。
スキルオーブを肴にワインがいくらでも飲めちゃうね。
1杯飲んだだけでちょっとふわふわするので実際にはそんなに飲めないけどね。
これとは別に、リグリット様はドラゴン討伐の報酬に伯爵家の宝物庫から一人一つ好きな宝物を下さった。
僕はもちろんスキルオーブにしたよ。
武器やマジックアイテムなんて使えないからね。
僕はそのオーブも取り出して横に並べる。
スキル名:【ビームlv1】
ビームだ。
何回見てもビームだな。
僕は転生者だし翻訳スキルを持っているのでこのビームというスキルがすごく魅力的に見えたのだけれど、リグリット様たちはなぜそれを選ぶのかという顔をしていた。
このビームも反転魔法やスキル効果10倍と同じで、未解明の古代語なので他の人には読めないらしい。
翻訳スキル様様だ。
ちなみに翻訳スキルも未解明なので僕が古代語を読めていることもリグリット様たちには知られていない。
リグリット様たちには鉱山でお世話になったので隠し事は心苦しいのだけれど、それとこれとは別の話だからね。
僕はまた一口ソーセージを齧ってワインをグビリと飲んだ。
ああ、いい気分だ。
「おいおい、薬草拾いじゃねえかよ。ガキが昼間から酒なんぞ呑みやがって、いい身分だな。お、スキルオーブじゃねえか。またゴミスキルでも買ったのかよ」
いい気分が台無しだ。
僕に絡んできたのは前にも絡まれたことのある冒険者だ。
ハゲ頭のゴリマッチョで、その口からは僕のことを言えないくらいに酒の匂いが香ってくる。
前にもギルドで喧嘩して、僕が勝ったというのに忘れてしまっているらしい。
「おい無視してんじゃねえぞクソガキ。けっ、いい酒飲みやがって」
ゴリマッチョは僕の杯を無理矢理奪って、残っていたワインを飲み干す。
うぇ、間接チューだ。
「このスキルオーブも俺様が使ってやるよ。どうせクソみてぇなスキルだろうが、無いよりマシだからな」
ゴリマッチョは僕の大切なスキルオーブに手を伸ばす。
僕はゴリマッチョの腕に持っていたフォークを突き立てた。
「いでぇぇっ、てめぇ薬草拾いが!!何しやがる!!」
「それはこっちのセリフだゴミカス野朗」
「なんだとてめぇ!!」
ゴリマッチョは腰の剣に手をかける。
遅すぎるな。
視力強化スキルによって僕の動体視力は強化されている。
ゆっくりもたもた剣を引き抜いているようにしか見えないな。
僕の記憶に残る帝国軍人は、剣をいつ抜いたのか分からないくらい早かった。
それに比べたらこいつは遅すぎてあくびが出そうだ。
僕は手に持ったフォークをゴリマッチョの手首に押し当てて回転スキルを発動する。
フォークは高速回転してゴリマッチョの手首を抉った。
「いでぇぇぇぇぇ!!殺す、殺すぞてめぇ!!」
「早くやれば?」
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
ゴリマッチョは抉れた手とは逆の手で剣を抜き、僕に切りかかる。
僕は反転魔法を足元に配置し、すべての力を反転させる。
男は踏み込んだ足が跳ね上がって後ろ向きに大回転した。
後頭部にはかなり大きなコブができてしまっている。
痛そうだ。
でも治療はしてあげない。
毎晩寝るときコブの痛みに苦しめばいい。
僕はテーブルの上のスキルオーブを回収し、代金を置いてギルドを出た。
なんか気分が冷めてしまったな。
どこかに遠出して、ブルードラゴンの使役でもするとしよう。
楽しいことを考えると自然と気分が上向いてくる。
僕は城門を潜り、ガルーダに乗ると天高く舞い上がった。
応援ありがとうございます!
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