ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉

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125.よくある話、だけど……

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 どんどん落ちていく女の子を毛魔法で絡めとり、引き寄せる。
 女の子が飛び降りたのは僕がいつも飛び降りる人通りの少ない方向ではない。
 仕事終わりのサラリーマンやOLで賑わう人通りの多い正面側だ。
 このまま反転魔法で着地すれば怪我をすることはないだろうが、多くの人に見られてしまうだろう。
 
「ゴブ次郎!」

「グギャ(承知)」

 僕は姿を隠してもらえるようにゴブ次郎を呼ぶが、ゴブ次郎はとっくの昔に僕の背中に張り付いていた。
 どうなってるんだ。
 隠密スキルの力なのか夢幻魔法の力なのか、ときたまゴブ次郎は触れていても気付かないときがある。
 これが一流の忍の力なのか。
 すでに僕たちの姿は他の人たちには見えていないようなので反転魔法で着地する。

「はぁ、焦った……」

「な、なんで……」

 女の子は口をぽかんと開けて驚いている。
 とにかくこんなところでは落ち着いて文句も言えないので、僕は毛魔法で女の子をグルグル巻きにしたまま反転魔法の足場を登ってビルの上に戻る。
 
「はぁはぁ、結構きついな……」

 高層ビルの屋上まで階段で戻るのは大変だ。
 重りをぶら下げた状態ではなおさら。
 僕だって車も電車も無い異世界の出身なので現代日本人の平均よりは体力があるつもりだ。 
 しかしさすがにこの高さのビルを階段で登るのは辛い。
 やっとのことで屋上に戻り、女の子を解放する。

「あの、なんで、どうやって……」

「落ち着いて。どうやって助けたのかは秘密だ。なんでって言われても理由は特にない」

「じゃあなんで助けたんですか!!そのまま死なせてくれればいいじゃないですか!!」

「別に死ぬのは構わないけど、君の方法ではたくさんの人が巻き沿いになって死ぬ」

「死ねば良いじゃないですか。みんな死んじゃえばいいんですよ!!」

 えぇ、そういう感じの子か。
 どうしたらいいのかな。
 僕はこんな感じの子は苦手だな。
 何言っても聞いてくれなさそうだから。
 完全に自分の殻に閉じこもってしまって最初から人の話を聞く気がない。
 しかしそっちがその気なら僕も適当に話を聞き流させてもらう。

「ああそうだね。死んだら良いね」

「そうですよ!死ねばいいんですよ!!みんな、みんな、みんな、死んじゃえばいいんだ!!ぐすっ、ぐすんっ……」

 えぇ、泣き出した。
 どうしろって言うんだ。
 ちょっとコミュ力検定1級の問題は僕には早いって。

「ぐすっ、ぐすっ、もう、こんな世界なんて滅んじゃえばいいんだ……」

「そうだね。滅んじゃえばいいね」

「何言ってるんですか!良いわけないでしょ!!ぐすんっ、すんっすんっ」

 自分で言ったんじゃないか。
 もう誰か助けてくれ。
 逃げてしまおうか。
 僕が居なくなってからこの子が飛び降りて大勢の人が死んだとしても、僕の責任ではない気がするんだ。
 元々僕がいなかったら一回目の飛び降りは成功していたわけで、結果は変わらなかったと思うんだ。
 よし、逃げよう。
 僕はデイジーを召喚する。

「ひっ、なに……」

「ごめんね。僕はお腹が空いたから帰るね」

 僕はデイジーに飛び乗った。

「ま、待って!!」

 女の子はデイジーの羽毛に縋りつく。

「なに?」

「わ、わたしも連れて行って……」

「え?」

 僕は固まった。






「すごい!わたし、空を飛んでる……」

「そうだね。飛んでるのはデイジーだけどね」

「この子、デイジーって言うの?」

「まあね」

「ふーん……」

 女の子の名前は真田志織。
 そう、真田だ。
 なんとなくその面立ちも知っている人に似ているような気がしなくもない。
 詳しくは聞かないけどね。
 彼女はデイジーの羽毛を掴んでどうやっても放さなかったので仕方が無く連れてきてしまった。
 彼女の居ない場所にいければいいと思っていたので特に行き先も無い。
 なんとなく日本を出たくてユーラシア大陸に向かってゆっくりと飛行中だ。
 もう夜になってしまうのでどこかで下りて夜を明かしたいのだけれど、こんな調子ではしゃぐ彼女のためにもう少しだけ飛んでいてあげようと思う。

「どうしてあんなことをしたの?」

 気がつけば僕はそう口にしていた。
 死にたい人にどうして死にたいのかなんて聞くのはどうかと思って口にしないようにしていたのだけれど、なんだか今なら答えてくれるような気がしたのだ。

「わたし、学校でいじめられているの……」

「いじめか……」

 かくいう僕も学生時代はよくいじめられたものだ。
 あれは辛いからね。
 
「ご両親や先生には相談したの?」

「先生には一応。でも全く変わらなかった。お母さんはとても忙しそうで、少し前までとても重い病気もしていたから相談できなくて……」

「なるほどね……」

 なんか聞けば聞くほど知っている人の血縁な気がしてきた。
 しかしそうであるならば、母と姉があの状況では確かに相談し辛い。
 
「もう、このままどこか遠くに行って誰も知らない場所で暮らしたい……」

「でも、お母さんやお姉さんには二度と会えなくなっちゃうよ?」

「え、わたしお姉ちゃんのことを言ったかな?」

「い、いや、お姉さんがいそうな顔をしているから……」

「そうなんだ。でもお姉ちゃんにもお母さんにも、普段からあまり会わないから変わらないかな」

 え、会わないの?
 何か家庭の事情だろうか。

「同じ家には住んでいるんだよね?仲が悪いとか?」

「ううん、仲は悪くないよ。でも、お姉ちゃんもお母さんもとても忙しいから……」

 ああ、そうか。
 あの2人は大企業の経営者なのだった。
 たぶん普段から秒刻みのスケジュールを生きているのだろう。
 あと、誰からもお父さんの話を聞いていない。
 亡くなっているのだろうか。

「ああ、お父さんの話?お父さんは生きてるよ?でもずっと海外に行っていて、何年かに1回くらいしか帰ってこないの。お姉ちゃんの小さかった頃からそうだったみたいだから、わたしもお姉ちゃんもお父さんとはなかなか距離感が分からなくて」

「そうなんだ」

 大企業の経営者一族っていうのは、こんなものなのかね。
 まだ真田家は仲が悪いわけではないみたいだからマシなほうなのかもしれない。

「遠くの国でこのまま暮らすのは無理だけど、もうちょっとだけ散歩して帰ろうか……」

「うんっ!」

 ちょっとだけだよ。


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