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9.治安の悪い道中
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意外と短かった牢獄生活から解放された俺たちは、すぐにリーベルの街を出て王都への旅路に戻った。
同じく魔法学園に入学するために王都に向かうエリックと一緒にだ。
エリックの相棒であるグレイハウンドのメリッサはリーベルの街の近くの森の中で元気に暮らしていたようで、エリックが呼ぶとすぐに出てきた。
「メリッサ、ごめんね。もう大丈夫だからね」
「ワフワフ」
「この人たちは僕を助けてくれた人だよ。こっちがキリク君でこっちがユーリーさん。さあ、挨拶するんだよ」
「ワンワンッ」
メリッサは俺とユーリーのほうに身体を向けるとお座りをして右前足を上げた。
めちゃめちゃ賢い犬だな。
犬というか魔物なんだけど、それでもグレイハウンドってこんなに賢くないだろ普通。
何度か狩りで出会ったことがあるが、もっと獰猛で頭も悪かったはずだ。
エリックの能力なのか、それともメリッサ自身が特別な個体なのかだな。
能力者にも魔物にも、まだまだ解明されていない謎が多い。
まあどっちでもいいか、モフモフ可愛いし。
ユーリーも俺も、メリッサのモフモフとした毛並みに夢中だ。
こいつ、俺の耳と尻尾よりも毛並みがいいかもしれない。
なんだか負けた気分だな。
面倒なので普段は毛並みなんか気にしてなかったが、トリートメントとか使ってみよう。
「私たち車だから結構速いけど、付いてこられる?」
「メリッサに乗れば馬車よりは速く走れると思うけど、その魔導車ってのが走るのを見てみないとはっきりはわからないかな」
ユーリーは無言で頷くと収納魔道具から車を取り出した。
いきなりでかいトラックが目の前に現れたことにエリックとメリッサは目を見開いて驚く。
事前に言ってあってもやっぱり驚くか。
収納魔道具なんか大商人や貴族しか持ってないものだからな。
生産地であるヤマダ村出身者の俺ですら手に入れたのは最近だ。
それもおじさんの未熟な頃の作品。
ユーリーはすでに職人として当時のおじさんを遥かに凌駕しているので、当然ユーリーが自分で造った収納魔道具は俺の100万リットルとは比べ物にならないほどに大容量の代物だ。
想像もできないような大きなものがどこからともなく出てくるのは覚悟していてもびっくりする。
「収納魔道具もすごいけどこの魔導車もすごいね、こんなの見たことないよ」
「まだ販売されてないプロトタイプらしいからな。まあ来年あたりになれば王家あたりがドヤ顔で乗り回してるんじゃないか?」
「ライフルを献上したときも大規模なハンティング大会だかなんだかで大騒ぎしてたわね」
ヤマダ村としては銃は売り物ではないのであまり喧伝してほしくはなかったようだが、村の名前が売れれば他の製品が売れるから黙認していたようだ。
だが今回の魔導車は売り物なので献上したら気が済むまでドヤ顔で乗り回してほしい。
王侯貴族から大量受注が入ることを見込んでヤマダ村ではすでに大量生産体制を整えているらしい。
取らぬ狸にならなければいいんだけどな。
「とにかく、乗り込んで走らせてみるか」
「メリッサはトップスピードは速いですけど、それを維持したままではすぐにバテてしまうのでお手柔らかにお願いします」
「了解。時速10から20の間で走行する」
馬車と変わらん速度だが、急ぐ旅でもないのでゆっくりいこう。
メリッサの体力は見た目通り底なしで、旅は思ったよりも順調に進んだ。
時速30キロくらいのスピードで走ってもメリッサは問題なくエリックを乗せて付いてきた。
そのくらいのスピードならば、長時間走り続けても大丈夫なようだ。
グレイハウンドの体力テストとかしたことがないのでわからないが、これが普通なのだろうか。
もしかしたらメリッサは噂に聞く上位種というやつなのかもしれない。
乗っているエリックの体力が続かないので2時間に1度くらいは休憩を入れるけどな。
「前方に障害物。1号車10秒後に停車するわ」
『2号車了解』
車に付けられた無線機からエリックの声が聞こえた。
犬に2号車はどうかと思うけどな。
そんなことを考えながら俺はアサルトライフルを掴んで降車する。
前方の安全を確保するためだ。
街道に横たわる太い丸太。
これは確実に盗賊の類の工作だ。
リーベルからこっち、治安が明らかに悪化している。
ヤマダ村の近くで盗賊に出会っているから他人のことはとやかく言えないかもしれないが、治安維持は統治の基本だろ。
エリックに聞いた話では、巡回の騎士が盗賊から金銭をもらって見逃しているという話もよくあることらしい。
やっぱ腐ってんな都会は。
それでも馬車より速いスピードで走る鉄の車とグレイハウンドなど、奇襲タイプの盗賊はよほどのマヌケでもなければ襲っては来ない。
面倒なのは罠を張って待ち構える今回みたいなタイプの盗賊だ。
デコボコ道をものともしない魔導車であっても、さすがに丸太を踏み越えることはできないから停車するしかない。
魔導車とメリッサを見てやばい相手だと察して逃げてくれるような相手であれば面倒が少なくて済むのだが、今回はどうにもそうではなかったらしい。
丸太を囲むように20以上の気配を察知した。
原理はわからないが、なんとなく昔から生き物の気配には敏感なんだよな。
それも悪意を持ってこちらを害そうとするような相手はすぐにわかる。
「一応警告しておくぞ!攻撃してきた時点でお前らの命の保証はできない!死にたくなければ武器を捨てて両手を上げて出てこい!」
警告への返答は、矢の雨という形で返ってきた。
同じく魔法学園に入学するために王都に向かうエリックと一緒にだ。
エリックの相棒であるグレイハウンドのメリッサはリーベルの街の近くの森の中で元気に暮らしていたようで、エリックが呼ぶとすぐに出てきた。
「メリッサ、ごめんね。もう大丈夫だからね」
「ワフワフ」
「この人たちは僕を助けてくれた人だよ。こっちがキリク君でこっちがユーリーさん。さあ、挨拶するんだよ」
「ワンワンッ」
メリッサは俺とユーリーのほうに身体を向けるとお座りをして右前足を上げた。
めちゃめちゃ賢い犬だな。
犬というか魔物なんだけど、それでもグレイハウンドってこんなに賢くないだろ普通。
何度か狩りで出会ったことがあるが、もっと獰猛で頭も悪かったはずだ。
エリックの能力なのか、それともメリッサ自身が特別な個体なのかだな。
能力者にも魔物にも、まだまだ解明されていない謎が多い。
まあどっちでもいいか、モフモフ可愛いし。
ユーリーも俺も、メリッサのモフモフとした毛並みに夢中だ。
こいつ、俺の耳と尻尾よりも毛並みがいいかもしれない。
なんだか負けた気分だな。
面倒なので普段は毛並みなんか気にしてなかったが、トリートメントとか使ってみよう。
「私たち車だから結構速いけど、付いてこられる?」
「メリッサに乗れば馬車よりは速く走れると思うけど、その魔導車ってのが走るのを見てみないとはっきりはわからないかな」
ユーリーは無言で頷くと収納魔道具から車を取り出した。
いきなりでかいトラックが目の前に現れたことにエリックとメリッサは目を見開いて驚く。
事前に言ってあってもやっぱり驚くか。
収納魔道具なんか大商人や貴族しか持ってないものだからな。
生産地であるヤマダ村出身者の俺ですら手に入れたのは最近だ。
それもおじさんの未熟な頃の作品。
ユーリーはすでに職人として当時のおじさんを遥かに凌駕しているので、当然ユーリーが自分で造った収納魔道具は俺の100万リットルとは比べ物にならないほどに大容量の代物だ。
想像もできないような大きなものがどこからともなく出てくるのは覚悟していてもびっくりする。
「収納魔道具もすごいけどこの魔導車もすごいね、こんなの見たことないよ」
「まだ販売されてないプロトタイプらしいからな。まあ来年あたりになれば王家あたりがドヤ顔で乗り回してるんじゃないか?」
「ライフルを献上したときも大規模なハンティング大会だかなんだかで大騒ぎしてたわね」
ヤマダ村としては銃は売り物ではないのであまり喧伝してほしくはなかったようだが、村の名前が売れれば他の製品が売れるから黙認していたようだ。
だが今回の魔導車は売り物なので献上したら気が済むまでドヤ顔で乗り回してほしい。
王侯貴族から大量受注が入ることを見込んでヤマダ村ではすでに大量生産体制を整えているらしい。
取らぬ狸にならなければいいんだけどな。
「とにかく、乗り込んで走らせてみるか」
「メリッサはトップスピードは速いですけど、それを維持したままではすぐにバテてしまうのでお手柔らかにお願いします」
「了解。時速10から20の間で走行する」
馬車と変わらん速度だが、急ぐ旅でもないのでゆっくりいこう。
メリッサの体力は見た目通り底なしで、旅は思ったよりも順調に進んだ。
時速30キロくらいのスピードで走ってもメリッサは問題なくエリックを乗せて付いてきた。
そのくらいのスピードならば、長時間走り続けても大丈夫なようだ。
グレイハウンドの体力テストとかしたことがないのでわからないが、これが普通なのだろうか。
もしかしたらメリッサは噂に聞く上位種というやつなのかもしれない。
乗っているエリックの体力が続かないので2時間に1度くらいは休憩を入れるけどな。
「前方に障害物。1号車10秒後に停車するわ」
『2号車了解』
車に付けられた無線機からエリックの声が聞こえた。
犬に2号車はどうかと思うけどな。
そんなことを考えながら俺はアサルトライフルを掴んで降車する。
前方の安全を確保するためだ。
街道に横たわる太い丸太。
これは確実に盗賊の類の工作だ。
リーベルからこっち、治安が明らかに悪化している。
ヤマダ村の近くで盗賊に出会っているから他人のことはとやかく言えないかもしれないが、治安維持は統治の基本だろ。
エリックに聞いた話では、巡回の騎士が盗賊から金銭をもらって見逃しているという話もよくあることらしい。
やっぱ腐ってんな都会は。
それでも馬車より速いスピードで走る鉄の車とグレイハウンドなど、奇襲タイプの盗賊はよほどのマヌケでもなければ襲っては来ない。
面倒なのは罠を張って待ち構える今回みたいなタイプの盗賊だ。
デコボコ道をものともしない魔導車であっても、さすがに丸太を踏み越えることはできないから停車するしかない。
魔導車とメリッサを見てやばい相手だと察して逃げてくれるような相手であれば面倒が少なくて済むのだが、今回はどうにもそうではなかったらしい。
丸太を囲むように20以上の気配を察知した。
原理はわからないが、なんとなく昔から生き物の気配には敏感なんだよな。
それも悪意を持ってこちらを害そうとするような相手はすぐにわかる。
「一応警告しておくぞ!攻撃してきた時点でお前らの命の保証はできない!死にたくなければ武器を捨てて両手を上げて出てこい!」
警告への返答は、矢の雨という形で返ってきた。
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