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6.魔法
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分身の目を通して俺を見る。
俺の目を通して分身を見る。
無意味なことに思えるが、それを同時に行なえるとなれば話が違ってくる。
単純に目が4つになったということだからな。
背中合わせになれば別々の方向を同時に見ることができる。
もっとたくさん分身を出すことができればもっとすごいことができそうなのだが、残念ながら今の状態では分身は1体しか出すことはできないようだ。
スキルが成長すればできるようになる可能性もあるのでどんどん使っていこう。
スキルを使うのには魔力を消費する。
しかしゲームのMPと違ってこの世界の魔力というのはすぐに回復するものらしい。
俺の12という少ない魔力であれば一瞬だ。
何度でも分身することができる。
今まで一人ではできなかった実践的な訓練などができて非常に有用だ。
本体と分身を同時に動かすのは難しいことのように思えるが、脳も2つあるのでそれほど大変なことではない。
分身は一度攻撃を受けるとすぐに消えてしまうので少し面倒だが、感覚の共有を切れば本気で殺す気で訓練することができるので濃密な訓練ができる。
本体と分身、別々の本を読むことだってできてしまう。
なんて便利な能力なんだ。
だがこれは勉強にはちょうどいいが、娯楽の本だと2倍のスピードで娯楽が無くなっていくのでやめておいたほうがよさそうだ。
まだまだ面白いことができそうなスキルだ。
今後色々と検証していこう。
「おはようございます」
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
次の日。
トレーニング、シャワー、朝食を済ませるとちょうどラズリーさんが部屋を訪ねてきた。
今日は待望の魔法の話をしてくれることになっている。
俺は魔力値が低いのでそれほど大きな魔法は使えないだろうとのことだったが、それでも十分だ。
指先から火や水がちょびっと出るだけでもいい。
それだけでも魔法が無い世界の人間は嬉しいものだ。
「今日は魔法についてお話いたしますね」
「はい」
「まずはこれとこれを」
ラズリーさんが手渡してきたのは1枚の羊皮紙のような紙と30センチくらいの細い棒。
紙には複数の丸と三角を合わせたような不思議な模様が描かれている。
これはもしかしなくても魔法陣なのではないだろうか。
そしてこの細い棒は杖だ。
「お察しの通り、これは杖と魔法陣です。杖は植物型の魔獣の枝、魔法陣の描かれている紙は魔獣の皮に特殊な加工をしたものです。本来魔法とはこのように触媒と魔法陣、詠唱の必要な面倒なものなのです」
ラズリーさんは杖で魔法陣を突くといつもしゃべっている言葉とは別の言語で『火よ』と唱えた。
すると魔法陣の上にろうそくの火くらいの小さな火が灯った。
火は30秒ほど燃え、消えた。
しかしこれだけの火を出すために触媒と詠唱が必要ならば、魔法とはすごく不便なものなのではないだろうか。
あちらの世界だったら100円のライターで同じことができるぞ。
「不便だとお思いになられましたか?」
「失礼ながら思いました」
「いえ、私たちもそう思いました。そしてこれができたのです」
ラズリーさんは懐から何か小さな箱のようなものを取り出した。
手の平に隠れてしまうくらいの箱だ。
黒いツルツルとした材質の素材でできている。
「今はこれをこうするだけです」
ラズリーさんが右端のボタンのようなものをカチリと押すと、先ほどのような小さな火が箱の左端に灯る。
これはまるっきりライターだな。
これが魔道具というものなのだろう。
魔力をエネルギー源としたこの世界独特の技術によって作られた道具。
「今の時代、戦闘の矢面に立つような職業でもない限りは魔法を習うというのは魔法技術を勉強することを差します。そして魔法技術もその根幹となる魔法も多岐に渡ります。すべて満遍なく学ぶというのはあまりお勧めできません。イズミ様はどの属性の魔力も持っておられますので学ぼうと思えば全て学ぶこともできるでしょうが、基礎を学ぶだけでも何十年かかるか分かりませんよ。何か専門的に学ぶものを決めたほうがいいと思います」
魔法を学びたいと漠然と思ったが、向こうの世界で例えるならば科学を学びたいと言っているようなものなのかもしれない。
21世紀に溢れる科学技術のすべてを学ぶとなれば、いったいどれだけの時間がかかるのだろうか。
しかし何かを専門的に学ぶといっても、俺は魔法技術の入り口すらも知らないのだ。
「とりあえず属性のこととかお聞きしてもいいですか?全部でなん属性あるのですか?」
「現在確認されている属性は6つです。地、火、水、風、光、闇、の6つですね」
「意外に少ないんですね」
「そうですね。属性は案外単純なものなのです。地は固体を表していまして、物質の形態の中でも固体に関する魔法を使うことのできる属性です。火はプラズマ、水は液体、風は気体です」
アリストテレスの四元素論と似ている。
神の作った魔道具である神器にもそう表示されているということは、神がそう言っているということだ。
案外真理なのかもしれないな。
「光と闇というのは?」
「光は陽、プラスを表していまして、回復や強化などの魔法が使える属性です。闇は陰、マイナスを表し、人に呪いをかけたり生命力を奪ったりする魔法を使えます」
光と闇は独特だ。
陰陽説に似ているような気はするが。
回復魔法とかは欲しいところだが、なんだか先ほどから魔法を覚えるよりも魔道具を買ったほうが早い気がしてならない。
とりあえずさっきの魔法陣からろうそくサイズの火を出す魔法にチャレンジしてみてから、あとのことを決めるとしよう。
「おお、これが魔法……」
「初歩の初歩ですけどね」
俺の持つ杖の先の魔法陣では、先ほどラズリーさんがやったときよりもやや安定感に欠けるゆらゆらとした炎が灯っている。
一度に注ぎ込める魔力の量が少ないので炎が安定しないのだ。
だが、魔法は魔法。
感動して涙が出そうだ。
「とりあえず、こんな感じの超初歩的な魔法を全属性分教えてもらってもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。私は光と闇の属性は持っておりませんから実際にやってみせることはできないのですが、それでもよろしければ」
「はい、大丈夫です」
相当なエリートな気がしてきたラズリーさんだが、魔力属性は全部は持っていないらしい。
だが光と闇以外の四属性は持っているということだ。
この世界の基準が分からないけれど、なんとなくすごいことな気がする。
すんごい偉い人だったらまずいから一度謝っておいたほうがいいかもしれない。
「色々と我が侭を言ってすみません。魔道具があるのに、原始的な魔法にこだわったりして面倒をおかけします」
「いえいえ。私実は本職は魔法関係のお仕事でして、魔法に興味のある方が増えてくださるのは嬉しいんですよ」
「そうなんですか。それで色々と魔法に詳しいのですね」
「ええ。それに、原始的な魔法も無意味というわけでは無いのですよ?」
「え?」
「原始的な魔法を習熟していけば、魔法系スキルというのが手に入ったりすることがあるのです」
魔法系スキル、なにそれ欲しい。
俺の目を通して分身を見る。
無意味なことに思えるが、それを同時に行なえるとなれば話が違ってくる。
単純に目が4つになったということだからな。
背中合わせになれば別々の方向を同時に見ることができる。
もっとたくさん分身を出すことができればもっとすごいことができそうなのだが、残念ながら今の状態では分身は1体しか出すことはできないようだ。
スキルが成長すればできるようになる可能性もあるのでどんどん使っていこう。
スキルを使うのには魔力を消費する。
しかしゲームのMPと違ってこの世界の魔力というのはすぐに回復するものらしい。
俺の12という少ない魔力であれば一瞬だ。
何度でも分身することができる。
今まで一人ではできなかった実践的な訓練などができて非常に有用だ。
本体と分身を同時に動かすのは難しいことのように思えるが、脳も2つあるのでそれほど大変なことではない。
分身は一度攻撃を受けるとすぐに消えてしまうので少し面倒だが、感覚の共有を切れば本気で殺す気で訓練することができるので濃密な訓練ができる。
本体と分身、別々の本を読むことだってできてしまう。
なんて便利な能力なんだ。
だがこれは勉強にはちょうどいいが、娯楽の本だと2倍のスピードで娯楽が無くなっていくのでやめておいたほうがよさそうだ。
まだまだ面白いことができそうなスキルだ。
今後色々と検証していこう。
「おはようございます」
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
次の日。
トレーニング、シャワー、朝食を済ませるとちょうどラズリーさんが部屋を訪ねてきた。
今日は待望の魔法の話をしてくれることになっている。
俺は魔力値が低いのでそれほど大きな魔法は使えないだろうとのことだったが、それでも十分だ。
指先から火や水がちょびっと出るだけでもいい。
それだけでも魔法が無い世界の人間は嬉しいものだ。
「今日は魔法についてお話いたしますね」
「はい」
「まずはこれとこれを」
ラズリーさんが手渡してきたのは1枚の羊皮紙のような紙と30センチくらいの細い棒。
紙には複数の丸と三角を合わせたような不思議な模様が描かれている。
これはもしかしなくても魔法陣なのではないだろうか。
そしてこの細い棒は杖だ。
「お察しの通り、これは杖と魔法陣です。杖は植物型の魔獣の枝、魔法陣の描かれている紙は魔獣の皮に特殊な加工をしたものです。本来魔法とはこのように触媒と魔法陣、詠唱の必要な面倒なものなのです」
ラズリーさんは杖で魔法陣を突くといつもしゃべっている言葉とは別の言語で『火よ』と唱えた。
すると魔法陣の上にろうそくの火くらいの小さな火が灯った。
火は30秒ほど燃え、消えた。
しかしこれだけの火を出すために触媒と詠唱が必要ならば、魔法とはすごく不便なものなのではないだろうか。
あちらの世界だったら100円のライターで同じことができるぞ。
「不便だとお思いになられましたか?」
「失礼ながら思いました」
「いえ、私たちもそう思いました。そしてこれができたのです」
ラズリーさんは懐から何か小さな箱のようなものを取り出した。
手の平に隠れてしまうくらいの箱だ。
黒いツルツルとした材質の素材でできている。
「今はこれをこうするだけです」
ラズリーさんが右端のボタンのようなものをカチリと押すと、先ほどのような小さな火が箱の左端に灯る。
これはまるっきりライターだな。
これが魔道具というものなのだろう。
魔力をエネルギー源としたこの世界独特の技術によって作られた道具。
「今の時代、戦闘の矢面に立つような職業でもない限りは魔法を習うというのは魔法技術を勉強することを差します。そして魔法技術もその根幹となる魔法も多岐に渡ります。すべて満遍なく学ぶというのはあまりお勧めできません。イズミ様はどの属性の魔力も持っておられますので学ぼうと思えば全て学ぶこともできるでしょうが、基礎を学ぶだけでも何十年かかるか分かりませんよ。何か専門的に学ぶものを決めたほうがいいと思います」
魔法を学びたいと漠然と思ったが、向こうの世界で例えるならば科学を学びたいと言っているようなものなのかもしれない。
21世紀に溢れる科学技術のすべてを学ぶとなれば、いったいどれだけの時間がかかるのだろうか。
しかし何かを専門的に学ぶといっても、俺は魔法技術の入り口すらも知らないのだ。
「とりあえず属性のこととかお聞きしてもいいですか?全部でなん属性あるのですか?」
「現在確認されている属性は6つです。地、火、水、風、光、闇、の6つですね」
「意外に少ないんですね」
「そうですね。属性は案外単純なものなのです。地は固体を表していまして、物質の形態の中でも固体に関する魔法を使うことのできる属性です。火はプラズマ、水は液体、風は気体です」
アリストテレスの四元素論と似ている。
神の作った魔道具である神器にもそう表示されているということは、神がそう言っているということだ。
案外真理なのかもしれないな。
「光と闇というのは?」
「光は陽、プラスを表していまして、回復や強化などの魔法が使える属性です。闇は陰、マイナスを表し、人に呪いをかけたり生命力を奪ったりする魔法を使えます」
光と闇は独特だ。
陰陽説に似ているような気はするが。
回復魔法とかは欲しいところだが、なんだか先ほどから魔法を覚えるよりも魔道具を買ったほうが早い気がしてならない。
とりあえずさっきの魔法陣からろうそくサイズの火を出す魔法にチャレンジしてみてから、あとのことを決めるとしよう。
「おお、これが魔法……」
「初歩の初歩ですけどね」
俺の持つ杖の先の魔法陣では、先ほどラズリーさんがやったときよりもやや安定感に欠けるゆらゆらとした炎が灯っている。
一度に注ぎ込める魔力の量が少ないので炎が安定しないのだ。
だが、魔法は魔法。
感動して涙が出そうだ。
「とりあえず、こんな感じの超初歩的な魔法を全属性分教えてもらってもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。私は光と闇の属性は持っておりませんから実際にやってみせることはできないのですが、それでもよろしければ」
「はい、大丈夫です」
相当なエリートな気がしてきたラズリーさんだが、魔力属性は全部は持っていないらしい。
だが光と闇以外の四属性は持っているということだ。
この世界の基準が分からないけれど、なんとなくすごいことな気がする。
すんごい偉い人だったらまずいから一度謝っておいたほうがいいかもしれない。
「色々と我が侭を言ってすみません。魔道具があるのに、原始的な魔法にこだわったりして面倒をおかけします」
「いえいえ。私実は本職は魔法関係のお仕事でして、魔法に興味のある方が増えてくださるのは嬉しいんですよ」
「そうなんですか。それで色々と魔法に詳しいのですね」
「ええ。それに、原始的な魔法も無意味というわけでは無いのですよ?」
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魔法系スキル、なにそれ欲しい。
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