87 / 96
86.カエデ・ニシオカ
しおりを挟む
男の娘は名前をカエデ・ニシオカというらしい。
貴族でもなんでもなく、平民だと言っていた。
故郷の国では身分制度というものがなく、平民もすべて苗字を持っているとも。
漢字というものがあり、西岡楓と書くとも。
そして故郷はすごく遠い場所にあるから二度と帰ることはできないだろうと悲し気な顔で語った。
船が難破して偶然この大陸に流れ着いたけど故郷の方角がわからなくて二度と帰れないとか遠すぎて現在の航海技術じゃたどり着けないとか、そういう感じであってほしいな。
カエデはどうやら馬車を持っている商会の正式な職員というわけではないようなのだが、ポニテ娘と一緒に一時的にお世話になっているというよくわからない立場らしい。
オークと戦わされていたので護衛の仕事でもしているのかと思ったが、仕事は特にないらしい。
だがポニテ娘が勝手に護衛のようなことをしだしたために、カエデも戦わされていたのだという。
腕っぷしには全然自信がなくて戦闘は全然ダメなので、他のことでお世話になっている商会に貢献しようと色々と手伝っているそうだ。
いい子だな。
力仕事では役に立たないが、料理は得意なので野営の料理を作ると男たちは喜んでくれるのだという。
そりゃ喜ぶだろ。
これだけ可愛くて守ってあげたくなるような子で料理が上手かったら、もう男でもいいと思ってしまう奴も出てきそうだ。
「それで、今も商人さんのお手伝いで何か入用の物が無いか聞いて回ってるんだよね」
なるほど、ここまでがセールストークの前座だったらしい。
身の上話から入るとはやり手のセールスマンっぽい手口だ。
直前まで親し気に話していたために、何か買ってくれと言われて断ると感じの悪い奴だと思われてしまうかもという心理になってしまう。
まあ別に何も買いたくないわけじゃないから買ってもいいんだけど。
「何があるの」
「一番多いのは港町から運んできた魚の干物とかの乾物かな。あんまり量は無いけどチーズとか葡萄酒、日持ちする野菜の類もあるって商人さんが言ってたね」
結構色々取り扱ってるな。
まあカエデがお世話になっていると言っていた商人の馬車は3台くらいあったからそのくらいはあるか。
食べ物が多いな。
魚の干物は港から運んできたんだから当然海の魚だろう。
食べたい。
葡萄酒はいらないけど、チーズもいいな。
日持ちする野菜は何があるのか聞くと玉ねぎがあった。
最高だ。
私は金貨を出して干物とチーズと玉ねぎをリュックに入るだけ買った。
私は孤児なので当然お金なんか持ったことがなかったので、何気に人生初お買い物かもしれない。
初買いが食べ物って、なんだか食いしん坊みたいだな。
まあ食べるのは好きだけどな。
「まいどあり!またよろしくね!!」
商品を持ってきたカエデは笑顔で手を振って去っていった。
可愛かったな。
お嫁にするならああいう子がいいな。
明け方、休憩所の利用者が見張りを残して寝静まっている時間にも私は起きていた。
というのも最近は小周天が熟達してきたのか、周囲から気を取り込んでいるうちは全く眠くならないのだ。
ついでにお腹も減らないし喉も乾かない。
つまり私は小周天を切らすことが無い限りは一睡もせず飲まず食わずでずっと動き続けることが可能ということだ。
なんだか仙人みたいになってきたな。
無欲でもないし不惑の境地でもないけど、少しだけ人類の域をはみ出し始めている気はしている。
便利でいいんだけどな。
小周天を切れば普通に眠くなってお腹も減るし。
この休憩所のような不特定多数の人間に囲まれた状況ではぐーすか眠る気にもならないのでちょうどいい。
それに、私の愛用している高級テントは使っていれば目立つ。
テント自体の見た目もさることながら、畳み方のわからないあのテントは未だにカプセルに直で入っているのだ。
周囲に人目のない状況ならまだしも、この状況で高級テントをカプセルから取り出すことはできなかった。
そのため今ユキトが眠っているテントはガチャのCランクアイテムである普通のテントだ。
ひろしの世界の高性能なキャンプギアでもなく、普通にこの世界で使われている一般的な布製テントだ。
防水が甘いので水も入ってくる雨の日地獄のテントなのだ。
できることなら眠りたくはない。
だが周りに全然眠らないのに動いてる化け物みたいな奴だとは思われたくないので、武器を抱えて目を瞑り身体を休めているふりをしている。
武術の達人とかがやりそうなあれだ。
敵襲があればバチリと目を開けて動き出す。
女の一人旅なので油断を見せない方がいいというのもある。
バリバリに警戒してるので襲っても無駄ですという姿を見せるだけでも多少の防犯効果はあるだろう。
そんな私のバチバチの警戒網に、一人の人間が踏み込んできたのがわかる。
なんだ、夜這いには少し遅すぎる気がするけどな。
すでに時刻は夜というよりも朝だ。
そろそろお日様が昇り始めることだろう。
私は武人のごとくバチリを目を開けて軽く武器を握って相手を確認する。
そこにいたのは何やらニヤニヤした嬉しそうな表情をした、ポニテ女だった。
今度はお前か。
貴族でもなんでもなく、平民だと言っていた。
故郷の国では身分制度というものがなく、平民もすべて苗字を持っているとも。
漢字というものがあり、西岡楓と書くとも。
そして故郷はすごく遠い場所にあるから二度と帰ることはできないだろうと悲し気な顔で語った。
船が難破して偶然この大陸に流れ着いたけど故郷の方角がわからなくて二度と帰れないとか遠すぎて現在の航海技術じゃたどり着けないとか、そういう感じであってほしいな。
カエデはどうやら馬車を持っている商会の正式な職員というわけではないようなのだが、ポニテ娘と一緒に一時的にお世話になっているというよくわからない立場らしい。
オークと戦わされていたので護衛の仕事でもしているのかと思ったが、仕事は特にないらしい。
だがポニテ娘が勝手に護衛のようなことをしだしたために、カエデも戦わされていたのだという。
腕っぷしには全然自信がなくて戦闘は全然ダメなので、他のことでお世話になっている商会に貢献しようと色々と手伝っているそうだ。
いい子だな。
力仕事では役に立たないが、料理は得意なので野営の料理を作ると男たちは喜んでくれるのだという。
そりゃ喜ぶだろ。
これだけ可愛くて守ってあげたくなるような子で料理が上手かったら、もう男でもいいと思ってしまう奴も出てきそうだ。
「それで、今も商人さんのお手伝いで何か入用の物が無いか聞いて回ってるんだよね」
なるほど、ここまでがセールストークの前座だったらしい。
身の上話から入るとはやり手のセールスマンっぽい手口だ。
直前まで親し気に話していたために、何か買ってくれと言われて断ると感じの悪い奴だと思われてしまうかもという心理になってしまう。
まあ別に何も買いたくないわけじゃないから買ってもいいんだけど。
「何があるの」
「一番多いのは港町から運んできた魚の干物とかの乾物かな。あんまり量は無いけどチーズとか葡萄酒、日持ちする野菜の類もあるって商人さんが言ってたね」
結構色々取り扱ってるな。
まあカエデがお世話になっていると言っていた商人の馬車は3台くらいあったからそのくらいはあるか。
食べ物が多いな。
魚の干物は港から運んできたんだから当然海の魚だろう。
食べたい。
葡萄酒はいらないけど、チーズもいいな。
日持ちする野菜は何があるのか聞くと玉ねぎがあった。
最高だ。
私は金貨を出して干物とチーズと玉ねぎをリュックに入るだけ買った。
私は孤児なので当然お金なんか持ったことがなかったので、何気に人生初お買い物かもしれない。
初買いが食べ物って、なんだか食いしん坊みたいだな。
まあ食べるのは好きだけどな。
「まいどあり!またよろしくね!!」
商品を持ってきたカエデは笑顔で手を振って去っていった。
可愛かったな。
お嫁にするならああいう子がいいな。
明け方、休憩所の利用者が見張りを残して寝静まっている時間にも私は起きていた。
というのも最近は小周天が熟達してきたのか、周囲から気を取り込んでいるうちは全く眠くならないのだ。
ついでにお腹も減らないし喉も乾かない。
つまり私は小周天を切らすことが無い限りは一睡もせず飲まず食わずでずっと動き続けることが可能ということだ。
なんだか仙人みたいになってきたな。
無欲でもないし不惑の境地でもないけど、少しだけ人類の域をはみ出し始めている気はしている。
便利でいいんだけどな。
小周天を切れば普通に眠くなってお腹も減るし。
この休憩所のような不特定多数の人間に囲まれた状況ではぐーすか眠る気にもならないのでちょうどいい。
それに、私の愛用している高級テントは使っていれば目立つ。
テント自体の見た目もさることながら、畳み方のわからないあのテントは未だにカプセルに直で入っているのだ。
周囲に人目のない状況ならまだしも、この状況で高級テントをカプセルから取り出すことはできなかった。
そのため今ユキトが眠っているテントはガチャのCランクアイテムである普通のテントだ。
ひろしの世界の高性能なキャンプギアでもなく、普通にこの世界で使われている一般的な布製テントだ。
防水が甘いので水も入ってくる雨の日地獄のテントなのだ。
できることなら眠りたくはない。
だが周りに全然眠らないのに動いてる化け物みたいな奴だとは思われたくないので、武器を抱えて目を瞑り身体を休めているふりをしている。
武術の達人とかがやりそうなあれだ。
敵襲があればバチリと目を開けて動き出す。
女の一人旅なので油断を見せない方がいいというのもある。
バリバリに警戒してるので襲っても無駄ですという姿を見せるだけでも多少の防犯効果はあるだろう。
そんな私のバチバチの警戒網に、一人の人間が踏み込んできたのがわかる。
なんだ、夜這いには少し遅すぎる気がするけどな。
すでに時刻は夜というよりも朝だ。
そろそろお日様が昇り始めることだろう。
私は武人のごとくバチリを目を開けて軽く武器を握って相手を確認する。
そこにいたのは何やらニヤニヤした嬉しそうな表情をした、ポニテ女だった。
今度はお前か。
39
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる