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8.巨大イノシシの被害
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おいおい、こんな化け物がいるなんて聞いてないよ。
無人島だったことも、俺が聞かなかったのが悪いと言われればそうなんだが。
とにかく何かこいつに効きそうな武器だ。
イノシシは刺身包丁の細い刃が心細く思えるほどの体格をしている。
俺はとっさにザックの外側に突き出ていた登山用のピッケルを抜いて岩場を転がった。
均されていないゴツゴツとした地面が体を削る。
数秒前まで俺が立っていた場所を、イノシシの巨体が通りすぎていった。
夕食の材料に使おうと思っていたポテチの袋が無残に踏みつぶされ、バリバリになった中身が砂と混ざり合う。
もったいないが、今はそんなことを言っていられる状況ではない。
イノシシはゆっくりとスピードを落とし、身体を翻すと俺のいる方向を向く。
俺はピッケルを構えてイノシシと対峙した。
突進攻撃を避けられたのが気に障ったのか、少し機嫌が悪そうに思える。
前足で岩場をガリガリと削り、今にも再び突進してきそうな雰囲気だ。
改めて正面から見ると信じられないくらい大きいな。
下あごから突き出る牙は俺の手首くらいの太さはある。
あんなもので突き上げられたら簡単に人間の身体なんかはバラバラになってしまうだろう。
恐ろしい。
手に持ったピッケルは固い氷も砕くことのできるゴツイものだが、あの筋肉と毛皮に覆われた身体を貫ける気がしない。
「ピギィ!!」
「お、おおぉぉぉ!!」
イノシシが吠えるので俺も対抗して吠えてみた。
そうでもなければ心が折れてしまいそうだった。
吠えて少し頭が冷えたのか、俺は魔法スキルという存在に思い至る。
そういえばJK神様からいただいた戦闘用のスキルを俺は持っているのだ。
右手の人差し指をイノシシに向け、火弾を放つ。
豆粒大の火の弾が高速でイノシシに向かって飛んでいき、右前足の付け根のあたりに当たった。
しかし爆発などはせず、普通に消えてしまった。
まあこんなもんか。
「ビギィィッ!」
威力に関してはあまり期待はしていなかったが、イノシシに痛みを感じさせるくらいのことはできたようだ。
火弾が当たったイノシシの右前足あたりは毛皮が黒く焼け焦げている。
まるでタバコを押し付けられた絨毯のようだ。
この威力ならば、イノシシを追い払うことができるのではないかという期待が膨らむ。
野生動物は痛みで学習する。
自分に痛みを与えるものを避けるのは生き物として当然のことだ。
田舎の畑の周りに張り巡らされている電気柵は、野生のイノシシやシカに痛みを与えて追い払うためのものなのだ。
しかし痛みは野生動物にとって、違う作用をもたらすこともある。
それは興奮である。
人間も極度の痛みを感じると痛みを緩和するために脳内麻薬が分泌され、興奮状態に陥ることがある。
理性の無い動物にとってそれは暴走に他ならない。
「ピギィィィッ!!」
「うわぁぁぁっ」
走るイノシシ、逃げる俺。
イノシシは暴れ牛のように尻を跳ねさせているのでそれほど速度が出ていないのが唯一の救いか。
しかしあの巨体が1メートル以上飛び跳ねるのだ。
その脚にはどれほどの筋力が秘められているというのか。
蹴られたらまず助からないだろうな。
ここには病院が無いどころか俺以外の人間がいない。
買ってきた消毒薬や包帯などの僅かな医療物資しかない状態では、かすり傷ですら重症化しかねない。
俺は汗やら涙やら色々な汁を垂れ流しながら走った。
股間から出てはいけない汁が滴った気がしたが、気にせず走った。
気が付けば周りには木々が生い茂り、足元は岩場から腐葉土に変わっていた。
後ろを見ればもうイノシシは追いかけてきていない。
なんとかイノシシを振り切ることができたようだ。
「助かった……」
しかしここはどこなのだろうか。
いつの間にか森の中に入ってしまったようだ。
ここはなかなかに広い島だが、自分の足で移動してきた以上は森を抜けるのはそう難しくはないだろう。
俺はイノシシに最大限の注意を払いながら、来た方向へと戻った。
必死に森の中を歩き這う這うの体で岩場に戻ると、テントがビリビリに破かれて中に置いてあったポテチが無残に食い荒らされていた。
「くそ、イノシシの奴め」
ポテチを食い荒らすためだけに、テントをビリビリにするなんて。
豚畜生に文句を言っても仕方がないかもしれないが、大声で叫びだしたくなるような怒りを覚えた。
俺の憩いの場所を砂だらけの油だらけにしやがって、あの野郎は絶対に許さない。
俺はいつかあのイノシシと決着をつけることを決意する。
ポテチの味を覚えられてしまった以上は、いつかは必ず対決しなければならないだろう。
人間の食べ物の味を知った野生動物は何度も人里に下りてくる。
おそらく俺がこの無人島で暮らしていく上で、あのイノシシは避けることのできない障害となるだろう。
俺自身を含めた食べ物がすべてあのイノシシの胃袋に収まるのか、それとも豚野郎の肥え太った肉が俺の胃袋に収まるのか。
これはそういう戦いなのだ。
そうと決まればこうしてはいられない。
読書も釣りもやめだ。
防衛設備を整えなければならない。
俺は夕食をカロ〇ーメイトとコーラで済ませ、バケツに入ったアジを放流した。
今日は長い夜になりそうだ。
日中の気温が30度を超えるこの島では、夜の方が涼しくて動きやすい。
キンキンに冷えたコーラを片手に、俺は石工スキルを発動した。
イノシシなんかには絶対に負けない。
しかしやっぱり、パンツとズボンだけは先に履き替えておくことにしよう。
無人島だったことも、俺が聞かなかったのが悪いと言われればそうなんだが。
とにかく何かこいつに効きそうな武器だ。
イノシシは刺身包丁の細い刃が心細く思えるほどの体格をしている。
俺はとっさにザックの外側に突き出ていた登山用のピッケルを抜いて岩場を転がった。
均されていないゴツゴツとした地面が体を削る。
数秒前まで俺が立っていた場所を、イノシシの巨体が通りすぎていった。
夕食の材料に使おうと思っていたポテチの袋が無残に踏みつぶされ、バリバリになった中身が砂と混ざり合う。
もったいないが、今はそんなことを言っていられる状況ではない。
イノシシはゆっくりとスピードを落とし、身体を翻すと俺のいる方向を向く。
俺はピッケルを構えてイノシシと対峙した。
突進攻撃を避けられたのが気に障ったのか、少し機嫌が悪そうに思える。
前足で岩場をガリガリと削り、今にも再び突進してきそうな雰囲気だ。
改めて正面から見ると信じられないくらい大きいな。
下あごから突き出る牙は俺の手首くらいの太さはある。
あんなもので突き上げられたら簡単に人間の身体なんかはバラバラになってしまうだろう。
恐ろしい。
手に持ったピッケルは固い氷も砕くことのできるゴツイものだが、あの筋肉と毛皮に覆われた身体を貫ける気がしない。
「ピギィ!!」
「お、おおぉぉぉ!!」
イノシシが吠えるので俺も対抗して吠えてみた。
そうでもなければ心が折れてしまいそうだった。
吠えて少し頭が冷えたのか、俺は魔法スキルという存在に思い至る。
そういえばJK神様からいただいた戦闘用のスキルを俺は持っているのだ。
右手の人差し指をイノシシに向け、火弾を放つ。
豆粒大の火の弾が高速でイノシシに向かって飛んでいき、右前足の付け根のあたりに当たった。
しかし爆発などはせず、普通に消えてしまった。
まあこんなもんか。
「ビギィィッ!」
威力に関してはあまり期待はしていなかったが、イノシシに痛みを感じさせるくらいのことはできたようだ。
火弾が当たったイノシシの右前足あたりは毛皮が黒く焼け焦げている。
まるでタバコを押し付けられた絨毯のようだ。
この威力ならば、イノシシを追い払うことができるのではないかという期待が膨らむ。
野生動物は痛みで学習する。
自分に痛みを与えるものを避けるのは生き物として当然のことだ。
田舎の畑の周りに張り巡らされている電気柵は、野生のイノシシやシカに痛みを与えて追い払うためのものなのだ。
しかし痛みは野生動物にとって、違う作用をもたらすこともある。
それは興奮である。
人間も極度の痛みを感じると痛みを緩和するために脳内麻薬が分泌され、興奮状態に陥ることがある。
理性の無い動物にとってそれは暴走に他ならない。
「ピギィィィッ!!」
「うわぁぁぁっ」
走るイノシシ、逃げる俺。
イノシシは暴れ牛のように尻を跳ねさせているのでそれほど速度が出ていないのが唯一の救いか。
しかしあの巨体が1メートル以上飛び跳ねるのだ。
その脚にはどれほどの筋力が秘められているというのか。
蹴られたらまず助からないだろうな。
ここには病院が無いどころか俺以外の人間がいない。
買ってきた消毒薬や包帯などの僅かな医療物資しかない状態では、かすり傷ですら重症化しかねない。
俺は汗やら涙やら色々な汁を垂れ流しながら走った。
股間から出てはいけない汁が滴った気がしたが、気にせず走った。
気が付けば周りには木々が生い茂り、足元は岩場から腐葉土に変わっていた。
後ろを見ればもうイノシシは追いかけてきていない。
なんとかイノシシを振り切ることができたようだ。
「助かった……」
しかしここはどこなのだろうか。
いつの間にか森の中に入ってしまったようだ。
ここはなかなかに広い島だが、自分の足で移動してきた以上は森を抜けるのはそう難しくはないだろう。
俺はイノシシに最大限の注意を払いながら、来た方向へと戻った。
必死に森の中を歩き這う這うの体で岩場に戻ると、テントがビリビリに破かれて中に置いてあったポテチが無残に食い荒らされていた。
「くそ、イノシシの奴め」
ポテチを食い荒らすためだけに、テントをビリビリにするなんて。
豚畜生に文句を言っても仕方がないかもしれないが、大声で叫びだしたくなるような怒りを覚えた。
俺の憩いの場所を砂だらけの油だらけにしやがって、あの野郎は絶対に許さない。
俺はいつかあのイノシシと決着をつけることを決意する。
ポテチの味を覚えられてしまった以上は、いつかは必ず対決しなければならないだろう。
人間の食べ物の味を知った野生動物は何度も人里に下りてくる。
おそらく俺がこの無人島で暮らしていく上で、あのイノシシは避けることのできない障害となるだろう。
俺自身を含めた食べ物がすべてあのイノシシの胃袋に収まるのか、それとも豚野郎の肥え太った肉が俺の胃袋に収まるのか。
これはそういう戦いなのだ。
そうと決まればこうしてはいられない。
読書も釣りもやめだ。
防衛設備を整えなければならない。
俺は夕食をカロ〇ーメイトとコーラで済ませ、バケツに入ったアジを放流した。
今日は長い夜になりそうだ。
日中の気温が30度を超えるこの島では、夜の方が涼しくて動きやすい。
キンキンに冷えたコーラを片手に、俺は石工スキルを発動した。
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しかしやっぱり、パンツとズボンだけは先に履き替えておくことにしよう。
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