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16.お出かけ
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いい匂いがするように改良した液状石鹸とシャンプー、ボディクリームが新たな村の特産品として発売されることとなった。
試しに父が王都に売りに行ってみたら貴族のご婦人たちに爆売れしたそうだ。
ご婦人のオイニー対策ってのはあちらの世界でも結構金をかけて行われていたことを今更ながら思い出す。
楊貴妃とかかなり体臭が濃かったらしくて、常にお香を焚いていたとかライチしか食べなかったとかあることないこと言われていたような気がする。
逆にナポレオンなんかは恋人のワキの匂いが大好きだったりするのだから、文化の違いというのはよくわからない。
さすがにワキの匂いはナポレオン個人の性癖なのかもしれないけど。
この国の多くの人間は異性からは濃い体臭よりもお花のようないい匂いがしていたほうがいいと思っており、そのおかげで僕の作ったデオドラントグッズは売れたのだ。
一部の特殊性癖者には本当に申し訳ないと思っている。
僕も女の子の体臭はわりと好きだけれど、自分は女の子に臭いと思われたくないのだ。
僕としては男の体臭は大嫌いなので男子諸君にこそデオドラントに気を使ってほしい。
ちなみに父は速攻でボディクリームを使っていた。
あの男、モテる要素にはとことん貪欲だ。
「いやぁ、クラウスのおかげで村の女たちがみんな綺麗になったような気がするぜ。ユリアの髪もサラサラだしな」
「洗髪石鹸のおかげね。あれで洗うと本当にサラサラになるのよね。あなたの髪もサラサラよハウリオ」
「惚れなおしたか?」
「もう、馬鹿♡」
確かに父の髪はサラサラだけど、そのせいでちょっとボリュームが無くなっている。
これはセットが大変そうだ。
今までは髪が皮脂でベトベトだったからセットに困るという経験をしたことはないだろう。
天然のポマードだね。
だけどこれからはサラサラの髪を上手くセットすることができずにパーティなどのフォーマルな席で困ることになるだろう。
父はパーティになるといつも恰好つけて前髪を上げていくから、そのときに泣きつかれても面倒だ。
そろそろ整髪ジェルみたいな整髪料を作ってもいいかもしれないな。
シャンプーが王都でも流行ればきっとこっちも売れる。
「うん?なんかお前また面白い顔してんな。またなんか作るのか?」
僕はそんな面白い顔をしていただろうか。
これでも決め顔をしていたと思うだけれど、キモ顔になってしまっていたかもしれない。
父はさすがに僕の実父なだけあり、僕の機微に敏い。
僕は髪をセットするための整髪料を作れば売れるのではないかという話を父にした。
「なるほどな。確かにサラサラすぎて前髪が全然キマらないと思ってたんだよな。だがいい匂いがする整髪料はもうすでにあるぜ」
「え、そうなの?」
「そりゃそうだろ。お前が生み出した洗髪用石鹸でなければここまでサラサラにはならなかっただろうが、髪の脂くらいなら普通の石鹸でも落とせる。金のある貴族の奴らはパーティの前に風呂に入って髪を念入りに洗ってから、そういういい匂いのする整髪料で髪を整えてから出るものなんだよ」
またも家が貧乏な弊害が出てしまったか。
まさかそんなにお風呂に気軽に入れると思わないじゃないか。
格差社会だな。
確かに考えてみれば石鹸自体はすでにあるわけだし、お金のある人は使うに決まっている。
身を寄せ合ってダンスをしたりするパーティに出席する貴族にとって、体臭は常に戦っていかなければならない敵なのだ。
いくらチート持ちでも、昨日今日戦い始めた僕がそう簡単にリードできるわけがなかったか。
「まあ、着眼点はよかったな。あと、俺は持ってないから作ってくれ」
買え。
「じゃあ行ってくるぜ。留守を頼む」
「行ってらっしゃい。気を付けるのよ。クラウスもね」
「うん、行ってきます」
僕と父、父の侍従3人は母に見送られて村を出る。
先日僕は誕生日を迎え、8歳となった。
屋敷で軽くお祝いをしてもらいプレゼントをもらったのだが、父のプレゼントは少し間に合わなかったのだという。
なんでも最寄りの街に短剣と杖を頼んでいたらしいのだが、先日向かったらトラブルでまだ出来ていなかったそうなのだ。
プレゼントが少し遅れたくらいは別に僕はなんとも思わないのだけれど、何も言わない僕を見た両親は僕が落ち込んでいると思ったようだ。
それで僕は直接街まで行くことになった。
お出かけでご機嫌取りってやつだね。
まあ普段は危ないから村の防壁から出てはいけないと言われているので新鮮ではある。
ちょっとだけ楽しみだ。
「ちょうどいい機会だから、冒険者登録もしちまうか。冒険者カードはあると便利だしな」
冒険者登録か、これまた異世界転生テンプレートだな。
きっと強面の先輩冒険者に絡まれたりするのだ。
でも父と侍従たちがいるから絡まれたりはしないのかな。
絡まれたとしてもなんとかなりそうではある。
「ちっ、街道がボコボコで歩きづらいな。ここも整備しなきゃならんし、金はいくらあっても足りねえな」
「でもよ旦那、街道の整備なんかしたって馬車なんか通るのか?」
とても主従とは思えない口調で父に話しかけたのは侍従のキースさんだ。
ちょっと細身で弱そうだけどすごい盾の使い方が上手いらしく、役割で言えばタンクらしい。
父との関係は幼馴染ということもあり、先輩と後輩という感じなのかもしれない。
まあ父は領民ともそんな感じだから、おかしくはない。
きっと公の場ではちゃんとしてるはず。
「キースさん、たぶんこれからは馬車も頻繁に通るようになるかもしれませんよ。キースさんは旦那が王都に坊ちゃんの作った品を売りに行くときに留守番だったからわからないかもしれませんけど、坊ちゃんの作った品を見た商人の反応はやばいですぜ。ありゃあ直接仕入れたいと思って領地に来てもおかしくありませんぜ」
父の後輩っぽいキースさんに更にその後輩っぽい口調で話しかけるのは、もう一人の侍従のイザークさんだ。
砂漠の国の血が混じっているのか、少し地黒のチャラ男だ。
もちろんボディクリーム愛用者。
影を操る魔法を使うことのできる魔法職らしい。
影使いは強キャラと僕の中の中二の魂が訴えかけてくるのだが、どうやらそれほど強い魔法を使えないため相手の動きを数秒阻害するとかに使っているらしい。
まさかのデバッファーだった。
「あぁ、そうなると宿とかも作らにゃならんな。ホント、金っていくらあっても足りねえ。人も足りねえし、奴隷でも買うか」
ど、奴隷!
それ僕知ってますエロゲで見ました。
試しに父が王都に売りに行ってみたら貴族のご婦人たちに爆売れしたそうだ。
ご婦人のオイニー対策ってのはあちらの世界でも結構金をかけて行われていたことを今更ながら思い出す。
楊貴妃とかかなり体臭が濃かったらしくて、常にお香を焚いていたとかライチしか食べなかったとかあることないこと言われていたような気がする。
逆にナポレオンなんかは恋人のワキの匂いが大好きだったりするのだから、文化の違いというのはよくわからない。
さすがにワキの匂いはナポレオン個人の性癖なのかもしれないけど。
この国の多くの人間は異性からは濃い体臭よりもお花のようないい匂いがしていたほうがいいと思っており、そのおかげで僕の作ったデオドラントグッズは売れたのだ。
一部の特殊性癖者には本当に申し訳ないと思っている。
僕も女の子の体臭はわりと好きだけれど、自分は女の子に臭いと思われたくないのだ。
僕としては男の体臭は大嫌いなので男子諸君にこそデオドラントに気を使ってほしい。
ちなみに父は速攻でボディクリームを使っていた。
あの男、モテる要素にはとことん貪欲だ。
「いやぁ、クラウスのおかげで村の女たちがみんな綺麗になったような気がするぜ。ユリアの髪もサラサラだしな」
「洗髪石鹸のおかげね。あれで洗うと本当にサラサラになるのよね。あなたの髪もサラサラよハウリオ」
「惚れなおしたか?」
「もう、馬鹿♡」
確かに父の髪はサラサラだけど、そのせいでちょっとボリュームが無くなっている。
これはセットが大変そうだ。
今までは髪が皮脂でベトベトだったからセットに困るという経験をしたことはないだろう。
天然のポマードだね。
だけどこれからはサラサラの髪を上手くセットすることができずにパーティなどのフォーマルな席で困ることになるだろう。
父はパーティになるといつも恰好つけて前髪を上げていくから、そのときに泣きつかれても面倒だ。
そろそろ整髪ジェルみたいな整髪料を作ってもいいかもしれないな。
シャンプーが王都でも流行ればきっとこっちも売れる。
「うん?なんかお前また面白い顔してんな。またなんか作るのか?」
僕はそんな面白い顔をしていただろうか。
これでも決め顔をしていたと思うだけれど、キモ顔になってしまっていたかもしれない。
父はさすがに僕の実父なだけあり、僕の機微に敏い。
僕は髪をセットするための整髪料を作れば売れるのではないかという話を父にした。
「なるほどな。確かにサラサラすぎて前髪が全然キマらないと思ってたんだよな。だがいい匂いがする整髪料はもうすでにあるぜ」
「え、そうなの?」
「そりゃそうだろ。お前が生み出した洗髪用石鹸でなければここまでサラサラにはならなかっただろうが、髪の脂くらいなら普通の石鹸でも落とせる。金のある貴族の奴らはパーティの前に風呂に入って髪を念入りに洗ってから、そういういい匂いのする整髪料で髪を整えてから出るものなんだよ」
またも家が貧乏な弊害が出てしまったか。
まさかそんなにお風呂に気軽に入れると思わないじゃないか。
格差社会だな。
確かに考えてみれば石鹸自体はすでにあるわけだし、お金のある人は使うに決まっている。
身を寄せ合ってダンスをしたりするパーティに出席する貴族にとって、体臭は常に戦っていかなければならない敵なのだ。
いくらチート持ちでも、昨日今日戦い始めた僕がそう簡単にリードできるわけがなかったか。
「まあ、着眼点はよかったな。あと、俺は持ってないから作ってくれ」
買え。
「じゃあ行ってくるぜ。留守を頼む」
「行ってらっしゃい。気を付けるのよ。クラウスもね」
「うん、行ってきます」
僕と父、父の侍従3人は母に見送られて村を出る。
先日僕は誕生日を迎え、8歳となった。
屋敷で軽くお祝いをしてもらいプレゼントをもらったのだが、父のプレゼントは少し間に合わなかったのだという。
なんでも最寄りの街に短剣と杖を頼んでいたらしいのだが、先日向かったらトラブルでまだ出来ていなかったそうなのだ。
プレゼントが少し遅れたくらいは別に僕はなんとも思わないのだけれど、何も言わない僕を見た両親は僕が落ち込んでいると思ったようだ。
それで僕は直接街まで行くことになった。
お出かけでご機嫌取りってやつだね。
まあ普段は危ないから村の防壁から出てはいけないと言われているので新鮮ではある。
ちょっとだけ楽しみだ。
「ちょうどいい機会だから、冒険者登録もしちまうか。冒険者カードはあると便利だしな」
冒険者登録か、これまた異世界転生テンプレートだな。
きっと強面の先輩冒険者に絡まれたりするのだ。
でも父と侍従たちがいるから絡まれたりはしないのかな。
絡まれたとしてもなんとかなりそうではある。
「ちっ、街道がボコボコで歩きづらいな。ここも整備しなきゃならんし、金はいくらあっても足りねえな」
「でもよ旦那、街道の整備なんかしたって馬車なんか通るのか?」
とても主従とは思えない口調で父に話しかけたのは侍従のキースさんだ。
ちょっと細身で弱そうだけどすごい盾の使い方が上手いらしく、役割で言えばタンクらしい。
父との関係は幼馴染ということもあり、先輩と後輩という感じなのかもしれない。
まあ父は領民ともそんな感じだから、おかしくはない。
きっと公の場ではちゃんとしてるはず。
「キースさん、たぶんこれからは馬車も頻繁に通るようになるかもしれませんよ。キースさんは旦那が王都に坊ちゃんの作った品を売りに行くときに留守番だったからわからないかもしれませんけど、坊ちゃんの作った品を見た商人の反応はやばいですぜ。ありゃあ直接仕入れたいと思って領地に来てもおかしくありませんぜ」
父の後輩っぽいキースさんに更にその後輩っぽい口調で話しかけるのは、もう一人の侍従のイザークさんだ。
砂漠の国の血が混じっているのか、少し地黒のチャラ男だ。
もちろんボディクリーム愛用者。
影を操る魔法を使うことのできる魔法職らしい。
影使いは強キャラと僕の中の中二の魂が訴えかけてくるのだが、どうやらそれほど強い魔法を使えないため相手の動きを数秒阻害するとかに使っているらしい。
まさかのデバッファーだった。
「あぁ、そうなると宿とかも作らにゃならんな。ホント、金っていくらあっても足りねえ。人も足りねえし、奴隷でも買うか」
ど、奴隷!
それ僕知ってますエロゲで見ました。
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