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改稿版
10.地竜
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胡椒を売っては逃げ回る生活を初めて早3ヶ月が経過しただろうか。
そろそろ知っている街が増えてきたので、転移魔法で遠く離れた街に行って胡椒を売ることができるようになった。
そうなればさすがに誰も俺のことを追ってこれない。
同じ時空間魔法の使い手ならば追ってくることもできるだろうが、時空間魔法の使い手は稀なんだそうだ。
まず時空間属性は魔法具がレアだ。
レアなアイテムである魔法具の中でも更にレアなのだから、持っている人が非常に少ない。
そして何と言っても時空間魔法の知識は難解だ。
おじいさんも言っていたけれど、この世界の魔法は道具や知識を用いた技術なんだ。
俺のようにタトゥを一定の模様に変えただけで魔法を使える魔法具というのはほとんど無い。
魔法は不可思議な現象だが、不可思議ながらもちゃんと法則のようなものがあるらしい。
そんな法則に基づいてみんな魔法を使っている。
その法則が時空間魔法はとても難解なのだという。
実際時間や空間の概念なんて21世紀生まれの俺でもよくわからんよ。
四則演算ができたら大卒みたいな扱いを受けるこの世界の人間には更にわからんだろう。
まあ案外感覚でできちゃったりもするみたいだから、居ないことは無いだろうけど。
さて、胡椒も安定して売ることができるようになったしそろそろ冒険者としてのランクを上げていきたいと思う。
オークを倒せば中魔石は手に入るけど、更に大きい大魔石というものやその上の特大魔石とかもあるようだしぜひ手に入れたい。
特大魔石ともなれば貴族や王族がオークションで競り合うような代物だという。
いったい1個で中魔石何個分のエネルギーがあるのか楽しみだ。
「この依頼を受けたい」
「こちらはCランクの依頼となりますが、大丈夫ですか?」
俺はまだDランクだが、一つ上のCランクの依頼も受けられないということは無い。
そのへんはギルド職員の裁量に任されているようだ。
俺はオークをたくさん狩っている。
その実績を考慮して欲しいと伝えたら渋々OKが出た。
今回狩るのはシャドウヴァイパー。
影を操る大きな蛇の魔物だ。
魔物の中には魔法に似た特殊能力を持つものもいる。
Cランクから上は大体そんな特殊能力を持った魔物ばかりだ。
特殊能力には魔力を使う。
だから魔力の塊である魔石も大きくなるんだ。
このシャドウヴァイパーという魔物も大魔石を持つ魔物として知られている。
そのためにCランクの中でもかなり上位の魔物だ。
だからこそギルド職員も止めるのだろう。
やってみないとわからないけど、多分大丈夫だと思うんだけどな。
大森林の中層部。
このあたりにシャドウヴァイパーは生息している。
大きな蛇だというから、藪の中に隠れたりはできないと思うんだ。
だから見つけるのは難しくないのではないかと思っている。
俺は慣れない様子で森を歩く。
最近あまり冒険者してなかったから、森の歩き方とかちょっと忘れた。
グラントさんごめんね。
『グギャギャギャ、ギャァァァァ!!』
どこからともなくゴブリンの悲鳴のような声が聞こえてきた。
ゴブリンは森の浅い場所から最深部までどこにでもいるから、別に不思議ではない。
だけどこの声はゴブリンがなんらかの魔物に襲われている声だと思うんだ。
もしかしたらシャドウヴァイパーかもしれない。
俺は精一杯足音を抑えてゴブリンの悲鳴がするほうへ行ってみることにした。
『グギャグギャ、グギャァァァッ』
またひとつ、ゴブリンの声が消えた。
ゴブリンを食べているのだとしたら、相当な食欲だ。
シャドウヴァイパーでなかったとしても、大型の魔物であることに変わりは無い。
俺としては大魔石さえ宿していてくれればどんな魔物でもいいんだけどな。
近づくにつれて、あちこちにゴブリンのものと思われる血や肉片がこびり付いているのが目に入る。
スプラッタだな。
見習いの頃はゴブリンの死体を見ただけでも吐いたりしていたけれど、今の俺はこのくらいで吐くことは無い。
グラントさんにも何度も怒られたからね。
森で吐いてたら吐瀉物の匂いに釣られて魔物も寄って来るし、何より無防備になる。
吐きそうな気持ちをぐっと堪えて声の方向へ進んだ。
そこに居たのはシャドウヴァイパーではなかった。
「なんでこんな浅い場所に……」
そこにいたのは地竜と呼ばれる魔物。
最強の魔物の一角であるドラゴンの一種だ。
大森林にもドラゴンは何種類か生息しているらしいのだが、その生息地はもっと奥地のはずだ。
それがなんでこんな中層部にいるのか。
ゴブリンをその辺に生えている草のごとくむしゃむしゃ食べるその巨体は、ゴツゴツとした岩のような鱗に包まれている。
翼は無いので空を飛ぶことが無いのが唯一の救いか。
とにかく、こんな危険な魔物を放置することはできない。
それにドラゴンは例外なく特大魔石を宿しているらしい。
これはチャンスではなかろうか。
地竜はゴブリンをむしゃむしゃするのに夢中で俺にまだ気付いていない。
強者の奢りだろうか、周囲を全く警戒する様子も見せない。
俺は早鐘のように鳴り響く自分の心臓を鎮め、魔法を発動する。
いつもの空間属性付与とワームホールを使った必殺のコンボだ。
のんきにゴブリンをむしゃむしゃと頬張る地竜の脳天に向かって、空間を切り裂く剣を突きこむ。
「はぁっ!」
ワームホールから突き出した剣は、甲高い音を立てて圧し折れた。
「え……」
地竜が、その太い首をゆっくりとこちらに向ける。
ぞっとするような瞳が俺を見つめていた。
そろそろ知っている街が増えてきたので、転移魔法で遠く離れた街に行って胡椒を売ることができるようになった。
そうなればさすがに誰も俺のことを追ってこれない。
同じ時空間魔法の使い手ならば追ってくることもできるだろうが、時空間魔法の使い手は稀なんだそうだ。
まず時空間属性は魔法具がレアだ。
レアなアイテムである魔法具の中でも更にレアなのだから、持っている人が非常に少ない。
そして何と言っても時空間魔法の知識は難解だ。
おじいさんも言っていたけれど、この世界の魔法は道具や知識を用いた技術なんだ。
俺のようにタトゥを一定の模様に変えただけで魔法を使える魔法具というのはほとんど無い。
魔法は不可思議な現象だが、不可思議ながらもちゃんと法則のようなものがあるらしい。
そんな法則に基づいてみんな魔法を使っている。
その法則が時空間魔法はとても難解なのだという。
実際時間や空間の概念なんて21世紀生まれの俺でもよくわからんよ。
四則演算ができたら大卒みたいな扱いを受けるこの世界の人間には更にわからんだろう。
まあ案外感覚でできちゃったりもするみたいだから、居ないことは無いだろうけど。
さて、胡椒も安定して売ることができるようになったしそろそろ冒険者としてのランクを上げていきたいと思う。
オークを倒せば中魔石は手に入るけど、更に大きい大魔石というものやその上の特大魔石とかもあるようだしぜひ手に入れたい。
特大魔石ともなれば貴族や王族がオークションで競り合うような代物だという。
いったい1個で中魔石何個分のエネルギーがあるのか楽しみだ。
「この依頼を受けたい」
「こちらはCランクの依頼となりますが、大丈夫ですか?」
俺はまだDランクだが、一つ上のCランクの依頼も受けられないということは無い。
そのへんはギルド職員の裁量に任されているようだ。
俺はオークをたくさん狩っている。
その実績を考慮して欲しいと伝えたら渋々OKが出た。
今回狩るのはシャドウヴァイパー。
影を操る大きな蛇の魔物だ。
魔物の中には魔法に似た特殊能力を持つものもいる。
Cランクから上は大体そんな特殊能力を持った魔物ばかりだ。
特殊能力には魔力を使う。
だから魔力の塊である魔石も大きくなるんだ。
このシャドウヴァイパーという魔物も大魔石を持つ魔物として知られている。
そのためにCランクの中でもかなり上位の魔物だ。
だからこそギルド職員も止めるのだろう。
やってみないとわからないけど、多分大丈夫だと思うんだけどな。
大森林の中層部。
このあたりにシャドウヴァイパーは生息している。
大きな蛇だというから、藪の中に隠れたりはできないと思うんだ。
だから見つけるのは難しくないのではないかと思っている。
俺は慣れない様子で森を歩く。
最近あまり冒険者してなかったから、森の歩き方とかちょっと忘れた。
グラントさんごめんね。
『グギャギャギャ、ギャァァァァ!!』
どこからともなくゴブリンの悲鳴のような声が聞こえてきた。
ゴブリンは森の浅い場所から最深部までどこにでもいるから、別に不思議ではない。
だけどこの声はゴブリンがなんらかの魔物に襲われている声だと思うんだ。
もしかしたらシャドウヴァイパーかもしれない。
俺は精一杯足音を抑えてゴブリンの悲鳴がするほうへ行ってみることにした。
『グギャグギャ、グギャァァァッ』
またひとつ、ゴブリンの声が消えた。
ゴブリンを食べているのだとしたら、相当な食欲だ。
シャドウヴァイパーでなかったとしても、大型の魔物であることに変わりは無い。
俺としては大魔石さえ宿していてくれればどんな魔物でもいいんだけどな。
近づくにつれて、あちこちにゴブリンのものと思われる血や肉片がこびり付いているのが目に入る。
スプラッタだな。
見習いの頃はゴブリンの死体を見ただけでも吐いたりしていたけれど、今の俺はこのくらいで吐くことは無い。
グラントさんにも何度も怒られたからね。
森で吐いてたら吐瀉物の匂いに釣られて魔物も寄って来るし、何より無防備になる。
吐きそうな気持ちをぐっと堪えて声の方向へ進んだ。
そこに居たのはシャドウヴァイパーではなかった。
「なんでこんな浅い場所に……」
そこにいたのは地竜と呼ばれる魔物。
最強の魔物の一角であるドラゴンの一種だ。
大森林にもドラゴンは何種類か生息しているらしいのだが、その生息地はもっと奥地のはずだ。
それがなんでこんな中層部にいるのか。
ゴブリンをその辺に生えている草のごとくむしゃむしゃ食べるその巨体は、ゴツゴツとした岩のような鱗に包まれている。
翼は無いので空を飛ぶことが無いのが唯一の救いか。
とにかく、こんな危険な魔物を放置することはできない。
それにドラゴンは例外なく特大魔石を宿しているらしい。
これはチャンスではなかろうか。
地竜はゴブリンをむしゃむしゃするのに夢中で俺にまだ気付いていない。
強者の奢りだろうか、周囲を全く警戒する様子も見せない。
俺は早鐘のように鳴り響く自分の心臓を鎮め、魔法を発動する。
いつもの空間属性付与とワームホールを使った必殺のコンボだ。
のんきにゴブリンをむしゃむしゃと頬張る地竜の脳天に向かって、空間を切り裂く剣を突きこむ。
「はぁっ!」
ワームホールから突き出した剣は、甲高い音を立てて圧し折れた。
「え……」
地竜が、その太い首をゆっくりとこちらに向ける。
ぞっとするような瞳が俺を見つめていた。
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