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改稿版
20.老将
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「こんなことが……。ああ、神よ」
「足が、動く。動くぞ!」
「目が、抉り出されたはずの俺の目が!」
治療は大体終わった。
一人につき中魔石20個程度はかかってしまっている。
ここ最近少しづつ貯まってきた大魔石をいくつか消費してしまった。
それだけ奴隷たちの怪我が酷いということだ。
何年も前まで巻き戻さなければ綺麗な身体にはならない人が多い。
しかし怪我を治せば動くことができる若い人たちはまだ魔石の消費量は少ないほうだろう。
最後に残ったのは老人だ。
怪我を治しても動けない可能性が高い。
場合によっては数十歳は若返らせる必要があるだろう。
「どうやら子供や若い者たちの怪我を治してくれたようですじゃの……」
穏やかな声で話しかけてくるのは、右目と右腕、左足を欠損している老翁だ。
残った手足はやせ細り、怪我を治してもろくに動けそうにない。
「感謝いたしまする。じゃが、儂らの治療は不要ですじゃ。もはや怪我が治ってもまともに動けるとは思えませぬ」
ほかのおじいさんおばあさんも同調する。
せめて安らかに死なせてくれ、と。
まあ俺がそれを聞き入れることは無いがね。
せっかく金を出して買ったのだ。
俺だって慈善事業で不良在庫を買い取ったわけではない。
「頼みまする。このままゆるりと死なせてはいただけませぬか?」
「それは俺が決めることだ」
おじいさんおばあさんたちは生き永らえることに複雑な想いを抱いているようだ。
平均寿命の短いこの世界で、その歳まで生きてきた人たちにはさぞかし色々な想いがあるだろう。
そして色々な技能も持っているはずだ。
若返らせたら即戦力になる可能性が大きい。
魔石の消費なんて小さな問題だ。
シャドウヴァイパーでもスナイピングすれば簡単に手に入るものだしね。
俺はロドリゲスに他の奴隷たちを部屋から出して風呂にでも入れてくれるように頼む。
今までの奴隷たちも怪我の程度によっては少々若返った人もいたが、それはまだ誤魔化せるレベルだった。
しかしこれから治療する老人たちは言い訳できないレベルで若返らせるつもりだ。
あとで対面したらわかってしまうだろうが、俺が魔法を使って老人たちが若返ったところを見せないようにすれば言い訳のしようもある。
子供や若い奴隷は怪我が治って多少は緊張が解れたのか、そこまで悲壮感を感じさせない表情で部屋から出ていく。
「治療を始めるぞ」
「お願いしまする」
怪我のひどい人から順に、おじいさんおばあさんを治していく。
一人当たり平均20歳くらいは若返らせないと戦力にはならないだろう。
魔石の消費がすごい。
大魔石がどんどん無くなる。
これが終わったらまた大森林に行かないとだめだな。
「なんと、これは……」
「すごい。腕が戻っただけではない。身体の倦怠感や震えも消えておる」
「まさか、若返っておるのか?」
「お肌も皺が無くなっているわ……」
よぼよぼのおじいさんは力強い益荒男になり、皺くちゃのおばあさんは大人の色気が漂う熟女になった。
栄養不足で多少痩せてはいるが、回復するのは難しくなさそうだ。
さて、最後のおじいさんだ。
俺を異世界に誘ってくれたのも、こんなおじいさんだったから俺はおじいさんには優しいよ。
どうやらこのおじいさんは、最初に治療はしなくてもいいと言ってきたおじいさんのようだ。
長い髭を蓄えた仙人のような雰囲気のおじいさんだな。
その右目は拷問によって抉られたのではなく、戦いによってできた傷のようだ。
額から顎にかけて大きな傷がある。
「頼みがありまする」
「なんだ?」
「右目の傷は治さないでおいてはくれませぬか」
できるかな、そんなこと。
ていうか目玉もなの?
傷ってどこまでが傷?
そういうの細かく言ってくれないと分からない。
「右目はいつ怪我した?」
「30は半ばの頃、好敵手と戦ってやられました。その思い出と共に刻んでおきたいのですじゃ」
「眼球は治していいのか?」
「そんなことができるのですかな」
「やろうと思えば」
「ではお願いします。注文など付けて申し訳ない」
俺は老人の右目の傷と脳以外をすべて30歳若返らせる。
たぶんこの老人が一番年上だから、そのくらい若返らせないとダメそうだった。
若返った老人の見た目は大体40歳くらいだろうか。
もう少し若返らせよう。
右目に傷を負ったという30の半ばくらいまで若返らせる。
「これは……。なんというお力」
「俺は戦力を求めている。あんたは戦えるだろう?」
「多少ながら戦う力を持っていると自負しております」
「頼むよ。俺に力を貸してくれ」
「まさかもう一度剣を握ることができようとは。老骨ながら、誠心誠意尽くす所存でございます」
やはり老人はいい。
手に職持ってるし、義理堅いし。
「旦那様、このような魔法が使えたなどとは聞いておりませんよ」
「悪かった。言い忘れていた」
時間遡及について今まで言ってなかったことについて、ロドリゲスに軽くお説教される。
確かにこの魔法はその存在がバレれば大変なことになる魔法だ。
もはや俺の家令といっても過言ではないロドリゲスにはもっと早く言っておくべきだった。
そういえばロドリゲスも50を超えて最近は身体にガタが来ていると口にしていたな。
「ロドリゲスも若返りたい?」
「いえ、私は歳を経てきたことに後悔などありませんよ」
「ふーん」
「ですが、もしも足腰が立たなくなった時にまだ旦那様が朝起きられないようなら、心配でお願いするかもしれません」
「そうか」
それはほとんど確定と言ってもいいのではないだろうか。
「足が、動く。動くぞ!」
「目が、抉り出されたはずの俺の目が!」
治療は大体終わった。
一人につき中魔石20個程度はかかってしまっている。
ここ最近少しづつ貯まってきた大魔石をいくつか消費してしまった。
それだけ奴隷たちの怪我が酷いということだ。
何年も前まで巻き戻さなければ綺麗な身体にはならない人が多い。
しかし怪我を治せば動くことができる若い人たちはまだ魔石の消費量は少ないほうだろう。
最後に残ったのは老人だ。
怪我を治しても動けない可能性が高い。
場合によっては数十歳は若返らせる必要があるだろう。
「どうやら子供や若い者たちの怪我を治してくれたようですじゃの……」
穏やかな声で話しかけてくるのは、右目と右腕、左足を欠損している老翁だ。
残った手足はやせ細り、怪我を治してもろくに動けそうにない。
「感謝いたしまする。じゃが、儂らの治療は不要ですじゃ。もはや怪我が治ってもまともに動けるとは思えませぬ」
ほかのおじいさんおばあさんも同調する。
せめて安らかに死なせてくれ、と。
まあ俺がそれを聞き入れることは無いがね。
せっかく金を出して買ったのだ。
俺だって慈善事業で不良在庫を買い取ったわけではない。
「頼みまする。このままゆるりと死なせてはいただけませぬか?」
「それは俺が決めることだ」
おじいさんおばあさんたちは生き永らえることに複雑な想いを抱いているようだ。
平均寿命の短いこの世界で、その歳まで生きてきた人たちにはさぞかし色々な想いがあるだろう。
そして色々な技能も持っているはずだ。
若返らせたら即戦力になる可能性が大きい。
魔石の消費なんて小さな問題だ。
シャドウヴァイパーでもスナイピングすれば簡単に手に入るものだしね。
俺はロドリゲスに他の奴隷たちを部屋から出して風呂にでも入れてくれるように頼む。
今までの奴隷たちも怪我の程度によっては少々若返った人もいたが、それはまだ誤魔化せるレベルだった。
しかしこれから治療する老人たちは言い訳できないレベルで若返らせるつもりだ。
あとで対面したらわかってしまうだろうが、俺が魔法を使って老人たちが若返ったところを見せないようにすれば言い訳のしようもある。
子供や若い奴隷は怪我が治って多少は緊張が解れたのか、そこまで悲壮感を感じさせない表情で部屋から出ていく。
「治療を始めるぞ」
「お願いしまする」
怪我のひどい人から順に、おじいさんおばあさんを治していく。
一人当たり平均20歳くらいは若返らせないと戦力にはならないだろう。
魔石の消費がすごい。
大魔石がどんどん無くなる。
これが終わったらまた大森林に行かないとだめだな。
「なんと、これは……」
「すごい。腕が戻っただけではない。身体の倦怠感や震えも消えておる」
「まさか、若返っておるのか?」
「お肌も皺が無くなっているわ……」
よぼよぼのおじいさんは力強い益荒男になり、皺くちゃのおばあさんは大人の色気が漂う熟女になった。
栄養不足で多少痩せてはいるが、回復するのは難しくなさそうだ。
さて、最後のおじいさんだ。
俺を異世界に誘ってくれたのも、こんなおじいさんだったから俺はおじいさんには優しいよ。
どうやらこのおじいさんは、最初に治療はしなくてもいいと言ってきたおじいさんのようだ。
長い髭を蓄えた仙人のような雰囲気のおじいさんだな。
その右目は拷問によって抉られたのではなく、戦いによってできた傷のようだ。
額から顎にかけて大きな傷がある。
「頼みがありまする」
「なんだ?」
「右目の傷は治さないでおいてはくれませぬか」
できるかな、そんなこと。
ていうか目玉もなの?
傷ってどこまでが傷?
そういうの細かく言ってくれないと分からない。
「右目はいつ怪我した?」
「30は半ばの頃、好敵手と戦ってやられました。その思い出と共に刻んでおきたいのですじゃ」
「眼球は治していいのか?」
「そんなことができるのですかな」
「やろうと思えば」
「ではお願いします。注文など付けて申し訳ない」
俺は老人の右目の傷と脳以外をすべて30歳若返らせる。
たぶんこの老人が一番年上だから、そのくらい若返らせないとダメそうだった。
若返った老人の見た目は大体40歳くらいだろうか。
もう少し若返らせよう。
右目に傷を負ったという30の半ばくらいまで若返らせる。
「これは……。なんというお力」
「俺は戦力を求めている。あんたは戦えるだろう?」
「多少ながら戦う力を持っていると自負しております」
「頼むよ。俺に力を貸してくれ」
「まさかもう一度剣を握ることができようとは。老骨ながら、誠心誠意尽くす所存でございます」
やはり老人はいい。
手に職持ってるし、義理堅いし。
「旦那様、このような魔法が使えたなどとは聞いておりませんよ」
「悪かった。言い忘れていた」
時間遡及について今まで言ってなかったことについて、ロドリゲスに軽くお説教される。
確かにこの魔法はその存在がバレれば大変なことになる魔法だ。
もはや俺の家令といっても過言ではないロドリゲスにはもっと早く言っておくべきだった。
そういえばロドリゲスも50を超えて最近は身体にガタが来ていると口にしていたな。
「ロドリゲスも若返りたい?」
「いえ、私は歳を経てきたことに後悔などありませんよ」
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「ですが、もしも足腰が立たなくなった時にまだ旦那様が朝起きられないようなら、心配でお願いするかもしれません」
「そうか」
それはほとんど確定と言ってもいいのではないだろうか。
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