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8.サイコロ
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「これがスキルです」
ミモザは全身からの発光を収める。
しかしものすごい発光だった。
まるで日輪の神、アマテラス大神のようだ。
このあたりの人間には皆このような力が与えられておるのだろうか。
「スキルというのは、誰にでも与えられておるのか?」
「いえ、スキルを与えられて生まれてくるのは10人に1人くらいの割合ですかね。持っているスキルの数も能力も人それぞれで、私のように光るだけのあまり使えないスキルを一つだけ与えられた者から有用なスキルをいくつも授かって生まれてくる稀有な者まで様々です」
運も実力のうちというが、これはまさにそれだの。
スキルがあるだけで人生が全く違ってくるだろう。
しかし、ミモザの全身が眩く光るスキルは使えんスキルだとは思わんがな。
あんなスキルを戦闘中に使われたら目を閉じて戦わねばならんし、夜であれば松明なしに戦えることだろう。
とても便利なスキルだ。
ワシもそのようなスキルが欲しい。
「それで、自分がスキルを授かっておるかどうかを知るためにはどうしたらいい?」
「スキルを使いたいと頭の中で強く念じてください。自分に使えるスキルが頭の中に浮かび上がるはずです」
「ほう……」
ワシ、スキルが使いたい。
あ?これは、なんだ。
頭の中に日ノ本言葉でもこの国の言葉でもない言葉が一つ浮かび上がる。
見たことも聞いたこともない言葉であるのに、ワシにはそれがなぜだか理解できた。
「サイコロ……?」
そう口に出した瞬間、ワシの手のひらの上に小さな物体が突如として現れる。
親指の先ほどの大きさのそれは、大きさの等しい六つの面を持つ四角い石であった。
色は薄く透きとおった白。
六つの面の表面には1つから6つの黒い点が刻み込まれておる。
「これは、博打や占術で使う賽だの」
「サイコロですか。聞いたことのないスキルですね。サイコロを振ったらなにかが起きるとかですかね」
「振ってみるか」
何が起こるか少し楽しみだ。
ワシは飯台の上に賽を軽く放り投げる。
賽はカラコロと転がり、やがて止まる。
出た目は4だ。
あまり縁起のいい数字ではないのう。
「そして何も起こらんな」
「もしかして、サイコロを出すだけのスキルなんでしょうか」
「そうかもしれん。どうせ出すなら酒とか刀とかにしてほしかったのう。塩でも可」
「まあ、その、スキルがすべてじゃないですよ。私のスキルもあまり使えませんけど、夜とか便利ですし」
使えんスキルを授かってしまったワシをミモザが必死に励まそうとしてくれておる。
ほんによきおなごだ。
だが別にワシはそれほど落ち込んでおらん。
強力なスキルがあればそれは便利だっただろうが、別になくても困りはせん。
持って生まれたものの少なさは前世も同じこと。
何も持って生まれぬわけではなく大して使えんものを持って生まれておるところがなんともワシらしいではないか。
サイコロ、なかなか気に入ったぞ。
「これはこれでよきものよ。ワシのスキルとしてこのサイコロをしっかりと書き込んでおいてくれ」
「書いてもあまり意味はないと思いますが、わかりました」
ミモザはワシのスキルと先ほど保留になっておった年齢を適当に書き込むと、出身地などの質問を2、3して登録作業を終える。
出身地も今生のものなど知らんので前世の出身地である近江と答えておいた。
どこにあるのか聞かれたが、そんなものはワシが知りたいくらいだ。
おそらく地続きではないと思うがの。
海に出たところでどちらの方角に行けば日ノ本にたどり着けるのかも検討すらつかん。
行けるかどうかもわからん日ノ本の地を夢想するよりも、この地を第二の故郷として骨をうずめる覚悟をしたほうがよいだろう。
この地には日ノ本にはなかった魔法やスキルという力もあるし、なかなかに面白い場所だ。
いかにワシの寿命が長かろうが生きるに飽くこともそうそうになかろうて。
ワシの魔力量や使えん面白スキルも判明したし、馬鹿な男を打倒して臨時収入もあった。
冒険者登録をしにきてよかったの。
「これが冒険者の身分証明となるタグです。首からかけておいてくださいね」
「わかった」
しばし席を外しておったミモザが帰ってきてワシに小さな金属の板のようなものを渡す。
板には穴が開いており、粗末な麻紐が通されておった。
この板と板に書かれた文字がワシの冒険者としての証らしい。
これで乞食ではなくワシも冒険者ということになるのかの。
ハーフエルフに対する迫害は根強く、おそらくワシがこんな板を首からぶら下げたところでワシのことを一端の冒険者と見る者はおらんだろう。
だが、事実としてワシは冒険者になった。
銅銭を5枚支払えば誰でも手に入れることのできる地位ではあるが、これは確かにワシが自分の力で手に入れた身分なのだ。
それに今は乞食に毛が生えた程度の身分だが、冒険者にはランクと呼ばれる序列がありそれが上がれば身分も上がるらしい。
朝廷から侍が頂く官位のようなものだろう。
ワシは登録したばかりなので最低のFランク。
上には7つのランクがあり、上から2番目のAや一番上のSのランクになるともはやこの土地の統治者に膝を折らんでもいいほどの身分となるそうな。
狩った獲物を適正価格で買ってくれて便利くらいにしか思っておらなんだ冒険者登録だが、これは面白そうなことが聞けたな。
冒険者という仕事が身ひとつでそれほど成り上がれる仕事だとは思いもせなんだわ。
これはワシにぴったりの仕事だの。
ミモザは全身からの発光を収める。
しかしものすごい発光だった。
まるで日輪の神、アマテラス大神のようだ。
このあたりの人間には皆このような力が与えられておるのだろうか。
「スキルというのは、誰にでも与えられておるのか?」
「いえ、スキルを与えられて生まれてくるのは10人に1人くらいの割合ですかね。持っているスキルの数も能力も人それぞれで、私のように光るだけのあまり使えないスキルを一つだけ与えられた者から有用なスキルをいくつも授かって生まれてくる稀有な者まで様々です」
運も実力のうちというが、これはまさにそれだの。
スキルがあるだけで人生が全く違ってくるだろう。
しかし、ミモザの全身が眩く光るスキルは使えんスキルだとは思わんがな。
あんなスキルを戦闘中に使われたら目を閉じて戦わねばならんし、夜であれば松明なしに戦えることだろう。
とても便利なスキルだ。
ワシもそのようなスキルが欲しい。
「それで、自分がスキルを授かっておるかどうかを知るためにはどうしたらいい?」
「スキルを使いたいと頭の中で強く念じてください。自分に使えるスキルが頭の中に浮かび上がるはずです」
「ほう……」
ワシ、スキルが使いたい。
あ?これは、なんだ。
頭の中に日ノ本言葉でもこの国の言葉でもない言葉が一つ浮かび上がる。
見たことも聞いたこともない言葉であるのに、ワシにはそれがなぜだか理解できた。
「サイコロ……?」
そう口に出した瞬間、ワシの手のひらの上に小さな物体が突如として現れる。
親指の先ほどの大きさのそれは、大きさの等しい六つの面を持つ四角い石であった。
色は薄く透きとおった白。
六つの面の表面には1つから6つの黒い点が刻み込まれておる。
「これは、博打や占術で使う賽だの」
「サイコロですか。聞いたことのないスキルですね。サイコロを振ったらなにかが起きるとかですかね」
「振ってみるか」
何が起こるか少し楽しみだ。
ワシは飯台の上に賽を軽く放り投げる。
賽はカラコロと転がり、やがて止まる。
出た目は4だ。
あまり縁起のいい数字ではないのう。
「そして何も起こらんな」
「もしかして、サイコロを出すだけのスキルなんでしょうか」
「そうかもしれん。どうせ出すなら酒とか刀とかにしてほしかったのう。塩でも可」
「まあ、その、スキルがすべてじゃないですよ。私のスキルもあまり使えませんけど、夜とか便利ですし」
使えんスキルを授かってしまったワシをミモザが必死に励まそうとしてくれておる。
ほんによきおなごだ。
だが別にワシはそれほど落ち込んでおらん。
強力なスキルがあればそれは便利だっただろうが、別になくても困りはせん。
持って生まれたものの少なさは前世も同じこと。
何も持って生まれぬわけではなく大して使えんものを持って生まれておるところがなんともワシらしいではないか。
サイコロ、なかなか気に入ったぞ。
「これはこれでよきものよ。ワシのスキルとしてこのサイコロをしっかりと書き込んでおいてくれ」
「書いてもあまり意味はないと思いますが、わかりました」
ミモザはワシのスキルと先ほど保留になっておった年齢を適当に書き込むと、出身地などの質問を2、3して登録作業を終える。
出身地も今生のものなど知らんので前世の出身地である近江と答えておいた。
どこにあるのか聞かれたが、そんなものはワシが知りたいくらいだ。
おそらく地続きではないと思うがの。
海に出たところでどちらの方角に行けば日ノ本にたどり着けるのかも検討すらつかん。
行けるかどうかもわからん日ノ本の地を夢想するよりも、この地を第二の故郷として骨をうずめる覚悟をしたほうがよいだろう。
この地には日ノ本にはなかった魔法やスキルという力もあるし、なかなかに面白い場所だ。
いかにワシの寿命が長かろうが生きるに飽くこともそうそうになかろうて。
ワシの魔力量や使えん面白スキルも判明したし、馬鹿な男を打倒して臨時収入もあった。
冒険者登録をしにきてよかったの。
「これが冒険者の身分証明となるタグです。首からかけておいてくださいね」
「わかった」
しばし席を外しておったミモザが帰ってきてワシに小さな金属の板のようなものを渡す。
板には穴が開いており、粗末な麻紐が通されておった。
この板と板に書かれた文字がワシの冒険者としての証らしい。
これで乞食ではなくワシも冒険者ということになるのかの。
ハーフエルフに対する迫害は根強く、おそらくワシがこんな板を首からぶら下げたところでワシのことを一端の冒険者と見る者はおらんだろう。
だが、事実としてワシは冒険者になった。
銅銭を5枚支払えば誰でも手に入れることのできる地位ではあるが、これは確かにワシが自分の力で手に入れた身分なのだ。
それに今は乞食に毛が生えた程度の身分だが、冒険者にはランクと呼ばれる序列がありそれが上がれば身分も上がるらしい。
朝廷から侍が頂く官位のようなものだろう。
ワシは登録したばかりなので最低のFランク。
上には7つのランクがあり、上から2番目のAや一番上のSのランクになるともはやこの土地の統治者に膝を折らんでもいいほどの身分となるそうな。
狩った獲物を適正価格で買ってくれて便利くらいにしか思っておらなんだ冒険者登録だが、これは面白そうなことが聞けたな。
冒険者という仕事が身ひとつでそれほど成り上がれる仕事だとは思いもせなんだわ。
これはワシにぴったりの仕事だの。
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