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昼飯は、豪華に
しおりを挟む「それなら、町の子供は…」
言ってる事は分かるけど、口にせずにはいられなかった僕に、買取嬢さんは続ける。
「親が居るでしょ?住民に手出しなんてしたらいずれにしてもお尋ね者よ。それに、泣き寝入りしても食べて行けるのよ。貴方の親は村に居て、この町の衛兵に被害を届けるのに何日掛かるのかしら」
「調子に乗って採り過ぎたんだね…」
「良い子ね。この量だけ買い取るわ。後は干したりして保存なさい」
ジャリソウ 4kg 20,00
ツルショウガ 15束 30,00
キセルタケ 1本3g相当 1,50,00
計 2,00,00U
銀貨2枚、2万ウーラ。贅沢をしなければ、余裕を持って2日過ごせる金額と言われた。そして音がしにくい枚数だとも。
「さ、早くしまって」
「うん…」
カバンの底に銀貨を1枚。余り物のジャリソウを流し込み、売れ残ったキセルタケとツルショウガを乗せて隠蔽した。残る1枚は首に掛けた皮袋へ。
「乾燥キノコもちゃんと売れるから。困った時に出しなさい」
最後に一言、頑張りなさいと励まされ、僕はギルドを後にする。周りの人が、敵に見える。お金を持つって、こう言う事か。
昨日は買えなかった小さなパンを買う。これ一つでは足りないのでジャリソウやツルショウガをおかずに…と考えて、考えが変わる。
「ちょっと良いかな」
「いらっしゃい。見ない顔だけど、買ってくのかい?」
野菜売りの露店には、色々な野菜に野草が並んでいる。その中にツルショウガが無いのを確認して声を掛けたのだ。
「ギルドで買取り出来なかったツルショウガの余り物があるんだけど、アカナス辺りと交換出来ないかな」
「ツルショウガねぇ。まあ見せてみな」
言われたので、4束見せる。
「アカナス3つと交換なら文句無いでしょ?」
「あンた村の子だね?アオウリ1本持ってきな」
曲がりの強いアオウリをおまけしてくれた。これでお腹一杯になれる。けど町中ではゆっくり食べる場所が無い。草カゴに入れて移動して、着いたのは馬車の発着場。広くて馬も居て、宿無しな僕の唯一心が和む場所だ。
「馬には食わすなよ?」
「僕の分だよこれ」
「肉を食え肉を」
村ではあまり食べられなかった肉だが、町の住民は毎日のように食べていると、馬の世話をしてる人は言う。冒険者や狩人が狩って来るウォリスやゴーラ等の肉を食べているそうだ。ウォリスは昨夜来なかった四つ足で、ゴーラは黒い人型のデブ。味はゴーラの方が良いとされるが、ほとんど干し肉にされてしまうので肉として食べた事は無い。
「あ、薬師さんのお店ってあるかな?」
「そりゃああるが、いや、あっただな」
「もう無いの?」
「代替わりして魔道具やポーションなんてのを売ってんだ。薬師の婆さんは引退してっから、あるなしで言えば無いな」
店の場所を聞いてその場を離れた。
大通りを南に1本入った路地の中に、その店はあった。少し新しい吊るし看板には瓶と腕輪?指輪?とにかく輪っかが描いてある。薬師の店だと葉っぱに水滴が多いので、店が変わったのは確かなのだろう。
カランカラン
ドアを開けると音がする。ドアの上に鳴子が付いてるのか。魔物を捕まえる罠みたいだ。
カランカランカランカランカランカラン
「うるさいうるさーいっ!誰だお前は!?」
カウンターの奥の扉から飛び出して来た小柄な子が、声高に叫ぶ。背丈は僕と同じくらいか。性別は髪も長いし、多分女の子だろう。
「泥棒と間違われたくなかったからさ」
「で!?何だ?何の用だ?」
「ギルドで売りそびれたジャリソウとキセルタケがあるんだけど、欲しいなら…って」
「何?ぼったくる気?」
「ぼったくる程品薄なの?」
「どっちも流通品だから足代上乗せされてんのよ」
この町の冒険者は採集しないのだろうか。
「僕のは採れたてだから足代要らないよ」
「…どこで採れたのよ、それ」
「まだ冒険者じゃないけど、商売のネタは話せないかな」
一応品物は見てくれるみたい。カゴが出て来た。
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