【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

文字の大きさ
14 / 385

涙は、出さない

しおりを挟む


 店の裏庭で雑草を毟っているとセーナが帰って来た。

「草毟り?……大丈夫ね。よしよし」

 どうやら雑草の中にも有用な物があるそうで、僕もそれを知ってて少し驚かれた。食べれるヤツだと言ったら呆れられたが。

「おばあちゃんの入れる施設が決まったわ。2ヶ月くらい会えなくなるから寂しいわ」

「1人か2人か。会えるまで元気で居なくちゃねぇ」

 次に会えるのはセーナだけだから1人だね。1年経ったら顔を出そうと思うけど。

 お茶を持ってくからと言われて作業部屋で待つ。少ししてお茶を持ったセーナがドアを蹴るので開けてやった。

「おねしょはしてない様ね」

「瓶も使ってないよ」

「良い事ね。で、どっちに通うかは決めた?」

 国立魔物抗専か、スミ学アッゼニか。どちらも良いと思うが、ダンジョンでの活動って所に興味を持ったとセーナに告げた。

「あら、あンたなら直ぐに冒険者になれるからって決めるんだと思ってたわ」

「アッゼニなのは予想してたのか」

「冒険者の活動にダンジョンは欠かせないからね。ダンジョンで採取される薬草なんかも、地上で取れる物より薬効が高いのよ」

「それを取って来いって事だね」

「期待してるわ。ただ、書いてはなかったけど国立もダンジョン対策はしてると思うのよね。国としては氾濫プリミラしてからの対策が主なのだろうけど」

「ぷ、氾濫プリミラ?」

「放ったらかしにするとダンジョンから魔物が出て来ちゃうのよ。洪水みたいにね」

 村の近くの洞窟でも、年に1回は中に潜って狩ってたな。規模は全然違うけど、放っとくと被害が増すのは同じだと言われた。

「おばあちゃんの入居は明後日。それからアッゼニに移動になるわね。支度はまだ全然でしょ?」

「うん。カバン買った店で何が要るかは聞いて来たよ」

「お金はあるんだし、好きな物買いなさいな」

「銀座からお店まで着いて来てよ」

「…一気に買おうとするとお金持ちになるって事ね。良いわ」

「ありがどーごぜーますだぁ」

「止めてよ気持ち悪い」

 貴族が喜ぶ感謝の意を表すと気持ち悪いと言われた。お貴族様は気持ち悪いのが好きなんだな。

 食料買い出しのついでに僕の買い物もしてしまおうって事で早速外へ出る。生鮮野菜の代わりに干し肉と干し野菜、塩等の調味料を身銭を切って買う。総額1万ウーラ也。出発までに、店にある食べ物を食べ尽くしながら、コレ等の食べ方を練習しろって事らしい。

「ねえ、こう言うのも、要るわよね?」

 干し果物。コレはフサベリーの赤いヤツだ。干した後、お酒に漬けてまた干した物で、日持ちがして甘いらしい。1kgで30,00ウーラもした。買わざるを得なかった。

 夕飯を食べて寝る。そして朝。今日は終日閉店で、僕の買い物に付き合ってくれた。銀座で引き出した銀貨100枚が心と体に重く伸し掛る。

「うう、敵が、敵が見える…」

「全部倒しちゃいなさい」

「武器、武器は…」

「鍛えた手足で頑張りなさい」

 後ろから杖で突っつかれて店に行き、昨日言われた品々を吟味して行った。背嚢、寝袋、タオル5枚、ランタン、雨具、食器、水筒。総額6,65,00ウーラ也。泣きそうだ。

「泣いて良いかな?」

「はいはい。コッチで武器を見ましょうねー」

 樽に刺された武器を見て溢れそうな涙が引っ込む。引き抜いて、色々見て、次を引き抜く。命を預ける物だけに妥協は出来ない。どれも直しが必要そうで、コレだと言える物が無かった。

「良いのあった?」

「無かった」

「悪いモンじゃ無いハズだぜ?」

「直さなきゃいけないし、直す時間が無いんだ」

「それなら武器屋に行くしか無えな」

 防具も僕の背丈に合うのが無かったので専門店に行く事となった。

「あンた、この店知ってたのね」

「来年来るって言ったけど今年中に来れたよ」

「おや、セーナかい。そっちのは…冷やかしに来た子だね?連れ子かい?」

「可愛いでしょ?他人よ」

 僕は可愛いらしい。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です 再投稿に当たり、加筆修正しています

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...