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女性も、強い
しおりを挟む領地渡り。村人の僕は当然した事は無いが、行商で他領に行く者や、遠征で食べてる冒険者は必ず聞いた事がある言葉だ。国を跨ぐ場合は国渡りと言う。もちろんソッチもした事無い。他所から来た冒険者なら、自分達が誰の治める土地に行くかくらい、調べて行くモノだ。聞いた話によると物価や貨幣価値、貨幣自体も変わる事があるからだ。戦争やってた頃なんて、知らん者が近付いただけで襲い掛かる時代があった程だと村の爺さんが言っていた。
女冒険者は答えを出していたが、エノン侯爵が領地を持たない事は知らなかった。
「ユカタ、答えは?」
「あ、スミヨン辺境伯様だよ」「それだ!」
今更遅いよ。仲間達も声を失ってる。
「領主様の名前を騙るのがどう言う事か、分かりますよね?冒険者さんよぉ」
薄い土の壁がポロポロ消えると同時に、静観してた男が口を開いた。静かに、それでいて怒ったような口調だ。実際に怒ってなくても領民的にはそうしなきゃいけないのだが、この人はどっちだろう。
「お前等の名前は名簿にある。偽名でもギルドにナシ付けりゃあ一発だ。お前等が殺りに来た事は黙っててやるが、衛兵に突き出されたく無かったら、明日の馬車に乗るんだな。ついでに予約もして、な」
「くっ」「出直すわよっ」
何か言いたげな馬鹿を女が引っ張る。衛兵に突き出されるのも大変だが、馬車が使えなくなる事も大変だろう。逃げの一手しか無いよな。
「お客さん達、時間を取らせて済まない。時間はまだだがすぐに出すから乗ってくれ」
引き返そうとする6人が居る前で大きな声を出し、客を馬車に誘導する悪そうな顔の人。笑顔も怖い。早く乗らないと怖そうなので急ごう。
「お嬢さん、助かりやしたぜ」
「馬が怖がって逃げ出したら困るもの」
「ああ、前の上り馬車で。その節はご迷惑お掛けしやした」
怖い顔の人がセーナに礼を述べる。セーナはよくビビらず対応出来るな。僕なら震える自信がある。あの6人もビビってたし、他のお客もオドオドと乗り込んでいた。
僕達の座席は大体真ん中。前に2人が2組、僕とセーナ、向かいにレイさん。後部に3人が座る。
前の2組は男女と男男で、僕の隣は男男で、2人共細長い感じの人だ。男女の組はレイさんの隣。セーナとレイさんの隣はそれぞれ女性で、女性2人男1人の冒険者パーティーみたいだ。
「どうした?男に見られて喜ぶ男は少ないぞ?」
「ああごめんね。これだけ男手が居れば魔物に絡まれても平気かなーって」
隣の男に見てたのを気付かれてしまった。
「あら、私の手は要らないのね?」
「私は足手まといなのね、悲しいわ」
「そんな事言ってないよー」
隣と対面からボヤかれて取り繕う。それを見てた女性達が笑った。
「アタシ達も戦えるからね、坊や」
「フフッ、お隣の術者さんには敵わないけど」
「私は本当に足手まといなのでじっとしてますね」
「大丈夫よ。殿方が守ってくれるから、ね?」
「ごめんって」
レイさんに弄られて赤くなってしまった。だが僕が赤くなったおかげで女性達の話は膨らみ、それぞれの役割を知る事が出来た。完全に非戦闘員の女性が1人とその護衛で魔法剣士!の男。武僧の細い人2人。斥候兼剣士と魔法使いの女性。盾剣士の男。言わずもがなのセーナとレイさん、そして軽戦士扱いの僕。…コレ、本当に僕が守らなきゃ行けない感じだ。
「これだけ戦力のある馬車も珍しいわね」
「心強いです」
僕もそう思ったし、事実、本当に楽な旅程だった。女性達が馬車で寝てくれたので、男達の警戒範囲が減ったし、魔物の夜襲は人手の多さと魔法剣士!の火魔法でかなり戦いやすい状況で殺り合う事が出来た。明かりがあるだけで本当に変わるのだ。それと、武僧2人が凄かった。夜だからってフンドシ一丁で殴る蹴る。馬車の入口を守ってた斥候剣士の女性は真っ赤になってたよ。
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