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計画は、入念に
しおりを挟むジュンとマキ、そして取り巻き3人が戻って来る。
「エリザベス様、申し訳ございません。どうしても1つ、見付からない物がございました」
「全てを揃えるのでは無いのだから大丈夫よ」
取り巻きの言葉に返し資料を受け取るエリザベス様はテーブルの上にアッゼニ周辺の地図を広げて、その上に他の資料を重ねた。学園って、こんな凄い地図持ってるのか…。ギルドの壁に張ってある地図なんてちょっとした線と地名書いてあるだけなんだぞ?硬い獣皮紙に顔料を使って青い線がうねってる。これは川か。アッゼニを中心に、1つ先の村までの地形が細かく描写されていた。敷物にして良い物じゃない。そんな地図に乗せられた資料を持ち上げ、小分けにして隣へ回して行く。
「アタイ、花なんて分かんないよ?」
「枝葉は分かるだろ?折れやすいとか、葉っぱの形とかに見覚えあったりさ」
ん~っと唸ってロシェルは資料の紙束とにらめっこを始める。他の者も資料と地図を交互に見ながら目的の植物の生えていそうな場所を探し始めた。
「あの、日の当たらない急斜面…って、どこでしょうか…」
「んー、山間の谷間とかかな。この隙間とかどうだろう?」
「ユカタァ。沼とか湖ってどこ~?」
「ロシェルのはハズレだろ。この地図には載ってないじゃないか。一先ず川の近くの平らになってる所に目星付けてみよう」
「エリザベス様、この辺りが怪しく感じます」
「どれ…。ユカタはどう思いまして?」
「え?んん…、山頂の丘か…」
「どうやらお眼鏡には適わなかった様ね」
「残念ですーっ」
「けど、この山の麓、北向きの急斜面はジュンの見てるヤツが生えてそうかも」
「候補が見付かって何よりね」
「嬉しいですーっ」
皆が候補を挙げて行き、僕が場所を絞るとレイナが模写した略地図にマークして説明書きを加えてく。レイナは地図描くのが上手いな。
「レイナって、絵を描くのが得意なの?」
「え?まあ、好きの範疇ね。ユカタは絵を描いたりはしないの?」
「地面に丸描いて、くらいしかした事ないよ」
「冒険の役に立つとは思わなかったけど、貴方に勝るものがあると思うと少し誇らしいわね」
「レイナ様は子供の頃からお上手でした」「そうだね。私の書いた文字に絵を描いてくれたもんね」
「子供の頃の話は恥ずかしいわ」
「私も読みましてよ?貴女を初めて茶会に招いたのも、ソレがきっかけだったのだから」
「い、いつの間に流出を…」
「亡国の騎士の話、私好きでしたわ。本職に話したら笑われてしまいましたが」
「うう…、子供の頃の話なので…」
そろそろみんなの集中も切れたか。町を中心にマーキングした場所は20ヶ所を超えている。これは3日4日は掛るだろうな。
「エリザベス様、全部見て回るのに3回か4回か、それ以上掛かると思うんだけど、期限は大丈夫かな」
「一月で回れる数に絞ったのでしょう?1つでも見付かると嬉しいわ」
「それと、敵が出るんだけど、戦力は足りてないと思う」
「あなたエリザベス様のお力を知らないの!?」
「エリザベス様に掛かれば魔物の1匹や2匹訳も無いわっ」
「盗賊20人とか来たら?ウォリス15匹とか」
「そんなのタラレバよタラレバ」
「僕の経験則だよ。盗賊に襲われた時は僕が馭者の代わりに走らせたし、ウォリスの夜襲でそんくらい来たんだ」
「ユカタってやっぱり殺ってたんだね」
「ロシェルだって何人か殺ってるでしょ。みんな、魔物や人を殺した経験は?」
当たり前だが、ロシェル以外の女子にそのような経験は無かった。学園の生徒の中でも、魔物はともかく人を殺した経験を持つ者は少ない。僕だってタマゲルぶつけた程度だしさ。
「分かりました。家から護衛を頼みます」
「エリザベス様、良いのですか?」
「構いません。娘のわがままを聞けぬ程の親であれば、私は国を出るだけです」
レイナの言葉に返すエリザベス様。お貴族様の家も色々あるんだな。
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