【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

文字の大きさ
79 / 385

計画は、入念に

しおりを挟む


 ジュンとマキ、そして取り巻き3人が戻って来る。

「エリザベス様、申し訳ございません。どうしても1つ、見付からない物がございました」

「全てを揃えるのでは無いのだから大丈夫よ」

 取り巻きの言葉に返し資料を受け取るエリザベス様はテーブルの上にアッゼニ周辺の地図を広げて、その上に他の資料を重ねた。学園って、こんな凄い地図持ってるのか…。ギルドの壁に張ってある地図なんてちょっとした線と地名書いてあるだけなんだぞ?硬い獣皮紙に顔料を使って青い線がうねってる。これは川か。アッゼニを中心に、1つ先の村までの地形が細かく描写されていた。敷物にして良い物じゃない。そんな地図に乗せられた資料を持ち上げ、小分けにして隣へ回して行く。

「アタイ、花なんて分かんないよ?」

「枝葉は分かるだろ?折れやすいとか、葉っぱの形とかに見覚えあったりさ」

 ん~っと唸ってロシェルは資料の紙束とにらめっこを始める。他の者も資料と地図を交互に見ながら目的の植物の生えていそうな場所を探し始めた。

「あの、日の当たらない急斜面…って、どこでしょうか…」

「んー、山間の谷間とかかな。この隙間とかどうだろう?」

「ユカタァ。沼とか湖ってどこ~?」

「ロシェルのはハズレだろ。この地図には載ってないじゃないか。一先ず川の近くの平らになってる所に目星付けてみよう」

「エリザベス様、この辺りが怪しく感じます」

「どれ…。ユカタはどう思いまして?」

「え?んん…、山頂の丘か…」

「どうやらお眼鏡には適わなかった様ね」

「残念ですーっ」

「けど、この山の麓、北向きの急斜面はジュンの見てるヤツが生えてそうかも」

「候補が見付かって何よりね」

「嬉しいですーっ」

 皆が候補を挙げて行き、僕が場所を絞るとレイナが模写した略地図にマークして説明書きを加えてく。レイナは地図描くのが上手いな。

「レイナって、絵を描くのが得意なの?」

「え?まあ、好きの範疇ね。ユカタは絵を描いたりはしないの?」

「地面に丸描いて、くらいしかした事ないよ」

「冒険の役に立つとは思わなかったけど、貴方に勝るものがあると思うと少し誇らしいわね」

「レイナ様は子供の頃からお上手でした」「そうだね。私の書いた文字に絵を描いてくれたもんね」

「子供の頃の話は恥ずかしいわ」

私もわたくし読みましてよ?貴女を初めて茶会に招いたのも、ソレがきっかけだったのだから」

「い、いつの間に流出を…」

「亡国の騎士の話、私好わたくしきでしたわ。本職に話したら笑われてしまいましたが」

「うう…、子供の頃の話なので…」

 そろそろみんなの集中も切れたか。町を中心にマーキングした場所は20ヶ所を超えている。これは3日4日は掛るだろうな。

「エリザベス様、全部見て回るのに3回か4回か、それ以上掛かると思うんだけど、期限は大丈夫かな」

「一月で回れる数に絞ったのでしょう?1つでも見付かると嬉しいわ」

「それと、敵が出るんだけど、戦力は足りてないと思う」

「あなたエリザベス様のお力を知らないの!?」

「エリザベス様に掛かれば魔物の1匹や2匹訳も無いわっ」

「盗賊20人とか来たら?ウォリス15匹とか」

「そんなのタラレバよタラレバ」

「僕の経験則だよ。盗賊に襲われた時は僕が馭者の代わりに走らせたし、ウォリスの夜襲でそんくらい来たんだ」

「ユカタってやっぱり殺ってたんだね」

「ロシェルだって何人か殺ってるでしょ。みんな、魔物や人を殺した経験は?」

 当たり前だが、ロシェル以外の女子にそのような経験は無かった。学園の生徒の中でも、魔物はともかく人を殺した経験を持つ者は少ない。僕だってタマゲルぶつけた程度だしさ。

「分かりました。家から護衛を頼みます」

「エリザベス様、良いのですか?」

「構いません。娘のわがままを聞けぬ程の親であれば、私は国を出るだけです」

 レイナの言葉に返すエリザベス様。お貴族様の家も色々あるんだな。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です 再投稿に当たり、加筆修正しています

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...