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午後の、ひととき
しおりを挟む補習の半日が終わり、ヘトヘトになったロシェルを連れて鍛錬場前の斜面に向かうと、3人衆はシートを広げて昼食の支度を済ませていた。3人衆は勘定も出来るようになって、補習から解放されていた。
「お待たせー」「お腹すいたよぉ…」
「お疲れ様です」「手早く済ませましょ」「お茶、淹れたよ」
くり抜いた木の水筒にお茶を入れて来たと言うジュンが僕とロシェルにお茶を出してくれる。水出し茶らしく、ゴクゴク飲める。
「ユカタァ、ごは~ん」「自分のを先に食べなさい」
僕のお弁当を集る飢餓者を突き放し、僕もお弁当を広げる。早く食べて、早く出ないと外周を走る事になり兼ねないからだ。とは言えお嬢様達の速度は変わらない。焦っているのは僕だけのようだな。
「急くラデュは切り株に躓くと言います」
「途中の門から帰っても良いものね」
「北回りで、西門前で進退を決めよ?」
町の外周ならそう言うのも出来る訳か。しっかり食べて準備して学園を出た。
学園から門前まで、まだ3往復しかしてないので、道の分からない僕は女子達の後ろに付いて行く。隣にはロシェルがいて手を引かれた。
「壁が見える範囲からは出ない事。ロシェルはジュンから離れないように。良いね?」
街道のある門前から外れると、壁の前であっても草木が茂る。こんな所で迷子もバカバカしいので壁に張り付く勢いで進む事にした。
「お金になりそうなのある~?」
「それを自分で探すんだ。まあこんな町の前だと薬効も無いだろうけどね」
「見付ける事が出来るかどうかの問題ね」
「あれ、ウスバカスミだよ」
「因縁の薬草だね。摘んでくかい?」
値は付かないだろうが予洗いの練習は出来るだろうし提案すると、3人衆は丈夫そうな下の方の葉を短剣やナイフで摘み取ってカバンに安置した。
「ロシェルは摘まないの?」
「あんなの洗うの無理だもん」
「洗わなくても売りには出せるぞ?」
それでも摘まないようだ。とは言え採取に興味が無い訳では無く、丈夫な葉や生食出来る草の実なんかは摘んだり摘み食いしてた。
「なっ!?」「何だお前等、こんな所からっ」
壁の横から出て来れば門番も驚くわな。特に北門は人の出入りが規制されてるので警備も厳重だと補習で習った。
「採取の練習してる学生だよ。ぐるーっと1周するつもりなんだ」
北門の門番は槍を向ける程では無いものの、薮から出て来た僕達を訝しむ。レイナが学生証を見せて、元貴族なのを知ると少しだけ身元が知れてホッとしたようだ。
「ウェストモーア家…。殉職された1人か?」
「ええ…」
この門番は、レイナの父を知っている訳では無い。元下級貴族のほとんどは、9年前の戦争で戦死している者なのだ。
「無碍には出来んが贔屓も出来ん。くれぐれも壁には登るなよ?」
どうやら横切っても良さそうだ。この先は貴族街に近いので、あまりウロチョロしてくれるな。だって。
「つ、次は南側から行こ?」
「だね」
毎度毎度誰何されてはげんなりするもんな。そう何度も来ないだろうけど。
町を囲む壁の傍なら敵はいないと踏んでいたが、どうやらそれは間違いだった。1匹とは言えブフリムだ。面倒この上無い。なぜなら放置して行けないからだ。
「ペトレス・シンフィプシス!」
ジュンの魔法がブフリムに突き刺さり、ガインッと中剣の腹で頭蓋骨を凹ませる。斬って汚したくないのだ。
「誰だっ!?下に誰が居る!?」
「ブフリムがいたぞ~」
戦闘の騒ぎを聞き付けたのか、壁の上から声がする。上からは冒険者かと聞いて来たので学生だと続けると、ロープを下ろして2人の兵士が降りて来た。ロシェルみたいな人ならざる降り方はしてないな。
「ブフリムはどうしたっ」
「ここにおります。まだ止めは刺しておりません故、ご注意を」
ここはマキが対応するみたいだ。壁の上は城勤めの兵士の職場であるとレイナが教えてくれた。
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