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出会いの、きっかけ
しおりを挟む「ほぉん、鍛錬になるのか」
「浄化済みの時なら私達でも出来そうね」
「行った時に浄化されていれば良いのですが」
「汚れても良い服で、行くのが良いね」
「あまりオススメしないけどねー」
僕からの報告を聞いて、クリスと3人衆は興味を持つが、ロシェルはあんまりな感じ。ジュンの言う通り毎回排水路が浄化されてる事は無いだろうし、他の場所の清掃だってあるのだ。治安の悪い所へ行く事もあるだろう。それを思うと、女の子だけでやる依頼ではないのかも知れない。
「ユカタ君、明日は休みますよね?」
「2日行ったし、明日は装備を干す予定だよ?」
「良かったら明日、鍛錬に付き合って頂けませんか?」
マキは今回も魔法職の護衛だった事もあり、もっと実力を上げたいそうだ。腑甲斐無いと彼女は言うが、護衛も立派な仕事だと返す。装備を干す予定ではあったが予定は未定。そう言う事なら付き合おう。
「アタシもやるー」
「俺も明日はギルドにゃ行かねぇ。的になっても良いぜ?」
「兄貴が石塗れの火だるまにされるってんなら見ない訳には行かねぇな」
「わ、私も、ですか?」「流石に火だるまには出来ないわよ」
魔法戦はともかく、交代要員が多いに越した事は無い。明日は朝食摂ったら鍛錬場に集まる事となり、解散となった。
「ユカタよぅ」
「ん?」
「今日は本当に貴重な体験が出来たぜ。あんがとな」
「俺もあんな数の敵と殺り合ったの初めてだ。楽しかったぜ」
夕飯時。左右をマッチョに挟まれた僕は狭い思いをしながら感謝の言葉を聞く。滅多に遭えない強敵と戦い、勝ったのはミルコにとって良い経験になったんだな。コレが助太刀したのが僕だけで、クリスが居ない状況だったら僕は戦えていただろうか。2人のタッパと筋肉が、少しだけ羨ましいと思った。
「敵?そんなんより、よ。俺ぁ久しぶりに女と話が出来た。お前のおかげだぜ」
「!そうだな。俺も講師以外で初めてだ」
騒がしい食堂が、にわかに静かになった気がする。そしてヒソヒソと語り合う外野達。誰が可愛いとか、おっぱいがどうとか言ってるからお前等はモテないんだ。そしてモテ男への悪口に変わる。だからお前等はモテないんだ。
「おうおう、モテる男へのやっかみか。テレちまうぜ」
なぜテレるんだ?
「兄貴はモテてないだろ」
そうだそうだ。
「俺ぁモテたぞ?街の女とも話したしな。また会う約束もした」
「は?はぁ…そうか、兄貴は幻術症に罹って…」
「馬鹿め、ユカタも言ってただろうが。清掃依頼で知り合った女達だ。また会いたいってよ。ガハハッ」
お婆さんと子持ちの女性だよね?会いたい、じゃなくて、また来てください、だろ。男の子連中にはモテモテだったけどさ。
「兄貴よ…」
「何だね弟よ」
「俺も清掃依頼に行く!行かねばならぬ!」
「フッ、止めておけ。お前には、出会いの神の加護は無い」
誰よ出会いの神って。この辺りの神様は1柱だけだよね?
「神様は見て居られるからな。俺の想いに応えてくれる。でなけりゃこの世に神は無しっ。ユカタ、明後日は早起きするから付き合え!」
「ちょ!?」
問答無用で2人に同行する事になってしまった。別に僕要らないでしょうに。
「おはよ。ユカタお疲れ?」
鍛錬場に来た僕に、ロシェルから労いの言葉が掛けられる。明日の事で少し憂鬱なのだが、ロシェルに言っても解決には至らないだろう。
「おはよ。明日、マッチョ兄弟と清掃依頼受ける事になっちゃってさ」
「えー」
「悪ぃな。ユカタは借りるぜ?」
「弟が駄々こねて泣くモンだから仕方なく、な」
「お前等ユカタを悪の道に連れてったら殺すかんな!?」
ナイフを構える目がマジだ。僕の後ろに控えてたマッチョ兄弟も引き笑いを浮かべてそうな声で笑う。3人衆はと言うと、それぞれ木剣や杖を振って鍛錬を始めているようだ。ロシェルを押して鍛錬に合流した。
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