【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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意外な、才能

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「ほれ、ここじゃ」

 会頭の仕事を放っぽり出して連れて来られたのは街の南側にある職人街の一角、生活音に金属を叩く音混ざり、表通りとは違った騒がしさがある。

 おじいさんは連れて来た職員にドアを開けさせると、塩梅はどうかと聞きながらズカズカ中へ入って行った。

「塩梅だ?…おう、誰かと思ったらクリスエス商会の。武器の卸しはしないんじゃ無かったのかい?」

「可愛い孫娘に甘えられてな。嫁にはやらんぞ?」

「家のも娘だ。男連れて来い。ボコボコにしてやる。…そっちのチビが可愛い孫娘の婿だな?」

「そうじゃ。やらんぞ「お爺様っ!」」

 僕は婿になるらしい。ジュンは慌てて割り込んで、レイナとマキは僕の左右にくっ付いた。婿になっては冒険者出来なくなるからな。ちなみにロシェルは疲れて寮で寝てるよ。

「で?何が欲しいんだ?杖に剣ってトコか?」

「うむ。小僧、言ってやれ」

 促され、説明する。鍛冶屋の親父は途中から紙を取り出して要点をまとめ出した。

「ふん。弱い力で引けて石を飛ばす弩か。軽く、それでいて威力も欲しいと」

「軽さにも限度はあるから、彼女が構えられるくらいなら十分だよ」

 強さと重さが比例するのが弩の難点だ。先日馬を撃ったヤツは地面に据えられていたのだろうが、持って撃つのは無理だろう。

「手習い程度に弓を使った事はあるわ。けど全力で引けないの」

「魔法による制限か?」

「似たようなモノね」

「そうか、ちょいと待っとれ」

 鍛冶屋の親父はそう言うと、作業場の奥へ隠れてしまった。

「コラ、茶でも出さんか」「お爺様っ」

「おおい、炉にヤカンでも突っ込んどけ」

「やると怒るクセに!あ、お客さん来てたのね。今用意しますのでお待ちを。オホホ…」

 鍛冶屋の親父が声を上げると居住スペースと思しき方から女性が顔を出し、僕等を見てサッと身を隠した。オホホなんて笑い方エリザベス様でもしないぞ?

「お待たせしてごめんなさいね~」

 湯は既にあったのだろう。時間を待たずにお茶を持って来た女性は作業机にお茶を並べて行く。茶色い中に白い線のある髪が珍しい。頭に着けた2つのお団子がピクピクして面白いな…。

「あれ、耳?」

「あ…。ごめんなさい。お嫌いでしたか?」

 つい口走ってしまった僕が悪い。女性は両手で頭の上の丸いのを隠して愛想笑いを浮かべる。

「どゆこと?」

「小僧。このお嬢さんは獣人だが、まさか偏見等あるまいな?」

「無いよ。耳を見たのは初めてだけど、村のシスターは獣人だったよ」

 獣人は村には1人か2人は居るモノで、町ともなれば4人はいるモノだ。ただアッゼニで見たのは初めてだし、獣人は帽子等で耳を隠すと聞いていたので珍しかったのだ。

「シスター、ね」「女性ですね」「好意を、持たれてましたか?それとも今でも好きですか?」

「そりゃあ女の人だよ?優しいおばちゃんだったよ?シスターだけど旦那がいるよ?」

 3人衆に囲まれてなぜか問い詰められた。女性と聞いて反応し過ぎだと思う。まあ3つ下の娘はふわもこで可愛かったけどさ。鍛冶屋の親父が戻って来たので口を噤んだ。

「待たせたな。お嬢さん、コレを引き絞ってみろ」

 そう言って、何本も持って来た弓を引かせてみる。引ける力を確認したいのだろう。

「コレが、限界ね。何度も放つ事は出来ないと思うわ」

「よし。またちと待っとれ」

 再び奥に向かってく。その隙に僕達も弓を引かせてもらった。僕とマキはレイナが限界だと言う弓を軽く感じるのは当たり前かも知れないが、ジュンも普通に引いて見せる。そしてジュンとマキは更に強い物も引く事が出来た。

「ジュンも弓やってたの?」

「うん。レイナちゃんに弓を薦めたの、私だから…」

 3人は投げた板を狙い撃ちとかして遊んでたんだって。その中でレイナとマキは動く的に当てられたそうな。凄いな。





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