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やれる、機会
しおりを挟む村に入ると兵士の数に少し驚く。前回エリザベス様とオドノヒューに行った時の3倍はいる感じで、兵士用のテントだけで1つの集落みたいになっていた。
「エリザベス様、凄い人数だね」
「村々の治安維持を見直したそうよ。以前の事もあるから」
あの襲撃の後、村に常駐させる兵の質や数を変えたり、野盗討伐の頻度を増やしたりしてるそうだ。そして昨日からエリザベス様とエヴィナの家の兵士が護衛として増えて今の人数になっていると続けた。
先を急ぐ旅なので村での逗留時間は短い。それでも女性達は湯浴みをし、馬車へ戻って来た。
「ユカタ、また体拭いただけ?」
「拭いてもないぞ」
「何でさ。臭いよ?」
「ロシェル、靴脱げ。どっちが臭いか確かめてやる」
「アタシ臭くないもんっ!エヴィナちょっと聞いてよー」
「自業自得だぜ?」
「お前も靴脱げエヴィナ。お前のトコの兵士が邪魔して来たせいで水使えなかったんだからな」
「あ?ウチのがそんな事すっかよ」
「お嬢って言ってたぞ?エリザベス様の所はお嬢様だろ?」
「…おい、調べて来い」
「行って参りやす」
歩き出した馬車からメイドが飛び降りた。危ない事しよる。
「マジモンなら頭下げるわ。多分下げる事になるだろーけど」
「お嬢様、詫びはコチラでしますので…」
「黙ってろ。ユカタ、足ぃ匂ってくれ。靴も替えたから臭くねぇハズだ」
「あ、アタシ臭くないもん」
「信じるよ。ロシェルは臭いと思うけど」「おいコラ」
わちゃわちゃしてると外に出ていたメイドが帰って来て、無言のまま土下座した。
「お前が頭下げて済む問題じゃ無え。勝手すんなや」
「申し訳ありやせん」
「ユカタ、済まねぇ」
エヴィナは椅子から離れて土下座するメイドを蹴り飛ばし、その場に土下座して言った。
「次の村で入れればそれで良いよ」
「それじゃあ示しが…、分かった。借りは必ず返す」
2つめの村に着いたのは夜。夕飯を済ませてタライの湯で体を洗い、馬車に戻る。
「ちゃんと体洗った?」
「洗ったよ」「んじゃ、寝よーぜ」
「その前に、夜の番をメイドだけにやらせたくないんだけど」
「ンな事気にしねーで良いのに」
「僕等の経験にならないじゃん。エヴィナは嫁ぐだろうから、そんな事しなくて良いのかも知れないけどさ」
「あ?トゲがあんな。ならソイツはどうなんだ」
「ロシェルは盗賊になるから、そのうち殺さなきゃね」
「ユカタァ、酷くねー?」
「僕冒険者になるために学園入ったの。金貨2枚も払ってさ。だから少しでも身に付けたいんだよね。君等親の金で入ったんだろ?」
「…そうだがよ」「そうだけど…」
「甘え過ぎじゃない?親の金だから?」
「お客人、言葉が過ぎやすぜ」
「学園じゃ不寝番なんて月に1度しかないんだよ。なぜやれる機会を逃すんだ?装備着ろよ」
「あンたもだよ。コッチはドキドキしてんのに。ヤる機会だろうが」
ヤらないよ。エヴィナにそう告げて、メイドが使う方のベッドに座り込んで背中を向けた。装備を脱いで薄着になっていた2人は寝るようだ。
「オレは、下手な奴に嫁ぐくらいならって、アソコに潜り込んだんだ。全く、甘ちゃんだったぜ。おい、装備出しな」「「へい」」
「アタシだって傭兵よりは生きやすいって言われて入ったんだ。それより酷い野盗になんて、堕ちたくないよ」
どうやら甘ちゃん共は着替えるみたい。カチャカチャと装備を着ける音がした。
不寝番は2人のメイドの片方と共に、1人ずつの交代となる。最初は僕、次にエヴィナでロシェルの2時間交代だ。時間はメイド達のに合わせた。
「……」
「……」
メイドと向かい合わせの椅子に座り、会話なく見つめ合う。お互いに寝てないかを確かめるための向かい合わせらしく、目を閉じると殺気が飛んで来る。勉強になるな。僕も真似てみたが効果は無さそうで、鼻で笑われてしまった。
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