【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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猫は、肉食

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「ば、ばたくしせーかいやの長男、ロナンともーします」

「自分はっ、せーかしょーイズマートの次男で、オイシンともももおしますっ」

 噛み噛みの自己紹介だが、ホーさんには伝わったようでどちらの親とも面識があると言う。宿と料理の青海屋と、総合食品販売のイズマートだそうな。どちらも海の町パンサラッサにあるんだって。

「それって、戦争してた所だよね?」

「お、ああ。あの頃は、どちらもガリガリで、さ」

「食い物に、感謝し過ぎた」

 今でも感謝し過ぎていると思うがね。4人が落ち着いた所で場所を移す。今回は16人もいるので会頭の執務室では無く、2階売り場を通って奥にある会議室で話を持たれる事となった。2階売り場は高級品が見事に陳列されていて、嫌でもキョロキョロしてしまう。タオル真っ白過ぎ。あんなフワフワどうやって作ってんだ?

「ユカタァ~、あれ~」

「料理屋でも始めるのか?あれ料理用のナイフだぞ?」

 ロシェルの猫撫で声は慣れたもので僕の心臓を締め付けて来るが、異性に武器を贈る者は居ないので、買うなら自分のお金で買いなさい。しかも料理用じゃないか。しないだろ?

「寮暮らしだと男の子の胃袋を料理で掴む…とか出来ないもんね」

「ユカタ君は、料理上手な子って好き?」

 ペニーもカシーも上手だもんな。女子の手料理を食べるチャンスなんて演習場で泊まりの時くらいだろう。男女でパーティーを組む事が出来るのなら、な。

「アタシだって、やれば、出来る」

「期待してるよ」

 会議室は街内外の提携商人が集まって販売方針を決めたりする場所と聞かされる。それだけに僕達が余裕で入れる広さがあり、テーブルに椅子、演台があり、正面には学園で使うような黒板が備えられている。

「学園の教室より立派だね」

「当たり前じゃ。安モンなんぞ使ったら舐められるわい」

「うわ」

 ジュンに言ったつもりが隣にいたのはおじいさん。クリスエス商会の会頭だった。いつもなら奇声を上げてジュンに絡みに行くのに、隣に立ってたのでびっくりしてしまった。

「エリザベス様、エヴィナ様。お掛け下され。皆も座ってくれ」

 エヴィナも様を付けるのか、珍しいな。ジュン以外が席に着き、おじいさんの隣にいたのだろう、若い女性に採集品を渡して行く。

「ユカタ、ああ言うのも好きなんだねー」

「手際を見てたのっ」

 若いのに手さばきが良い。束になった薬草を、束を解さず値踏みする。おじいさんもチラチラと見ているが文句はないのだろう。静かに見ていた。

 結果、ウロの実以外は値が付いた。ウロの実はヘタが付いてないとダメなんだって。ヘタ付いてるのだけだと数が無いから買取不可。仕方ないね。

「皆さんのおやつにしてください」「そんなぁ…」

「なら私が個別に買い取るわ。ジャムにしてユカタの胃袋掴んであげる」「私も、食べるね」

 ガッカリのジュンに、ペニーが買うと名乗りを上げる。僕とカシーの胃袋は掴まれてしまうらしい。そこに私も私もと、甘い物に飢えた女子の声が上がる。結果、ウロの実はレイドの資産となり、加工された後皆の胃袋を掴む運びとなった。

「男性の胃袋を…勉強になります。会頭、買取価格が出ました」

「そうか」

 会頭は見積書を見てふんと鼻を鳴らした。多分良いのだろう。孫娘に紙を渡す。

「お爺様ぁ…」

「……」

「お嬢様ぁ~…」

「…………分かった!端数を切り上げれば良いのだろ!貸してみいっ」

 孫に甘いぜ。ジュンから紙を、お姉さんからペンを取り、サラサラと数字を書き足した。

「どうじゃ!?」

「16人でぇ、割り切れませぇん」

 割り切れる値段に書き換えられた。これが猫撫で声だ。普段オドオドしてるのに、恐ろしい子である。

「会頭…」

「こ、これでも足は出んだろうに」

「最後のそれは会頭のポケットマネーからお願いしますね」

 いくら上乗せしたんだろ?








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