【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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村長の、息子

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「話は伺っておりやす」

「何の?」

 避妊魔術の話だって。そう言えば前に話してたよな。ライラは避妊魔術を施せる教会をオーイで調べて来たと言う。

「調べただけって事は、オーイでは出来なかったって事?」

「はい。そもそもこっちでは避妊魔術自体多くありやせん」

「何で?」

「それは…差別、でやすね。もちろん金も掛かりやすが」

 これ以上は聞くべきではないな。話題をずらし、避妊魔術が出来る街を聞くと、オーイの北にあるローシャムパークで受けられるそうだ。

「行くにしてもここからだと場所が分からないし、オーイから街道使って北上するのが安心だろうね」

「はい。ですので旦那様、致すのであれば外に」

「尻でも良いよな。ヘヘッ」

 エヴィナよ、僕は食事中なんだが。

「俺、初めてだから…さ…」

「ハキ、僕は食事中なんだけど?」

「うぐ…飯と俺!どっちが好きなの!?」

「飯!」

「う、俺も飯だけどよぉ…」

「飯と寝るのは何かと比べちゃダメだろ」

 納得は出来るが耳を垂らしてしまったハキを水風呂で慰めてやった。



 村の造成は順調で、拠点の周囲を壁で囲み、東西にアルアインさん作の大きな扉が付けられた。水源は下流の川に護岸を作って川幅を広くし、ぬかるみは水を溜めてミズマタルの種を撒いた。そして水無川の南北には水が抜ける土台の上に壁を建て、水無川の西側を残すだけとなった。

「ベス、アレは敵?」

「今の所は。如何なさいます?」

 湿った草薮には近寄らず、造成に掛かりっきりなってたおかげで敵の侵入を許してしまった。水無川の西対岸、ぬかるみの際には弓と刃物を持った獣人が50人程いるそうで、東対岸に立つ僕達と睨み合いになっている。朝、洗い物に出ていたライラ達が発見して問答となり、あっちの代表が来るまで待っているそうな。

 ライラに聞く所によると、あっちは小さな集落の男手共で、長い間この水場を使っていたとの事。こっちは国とパー家に譲ってもらった土地なので所有権は僕にある。後から来た者が独り占めするなと言う集落側と、パー家の水源を使えと言うライラの対立を、ベスが代表者同士の話をするよう持って行ったそうだ。

「つっ立って見てたってすぐには来ねえんだろ?こっち来て座ってろって」

 休憩小屋にはエヴィナが居て、フル武装で壁際に座ってる。セーナとジュンは町で買って来た椅子に座り、本を読んで過ごしてる。この場にいない面々は、拠点の方の防衛に励んでもらってもらった。

 昼になり、ようやく相手の代表が来た。若い獣人が叫んでいるのでそうのだろう。男手を割って現れたのは年寄りの獣人で、きっと男に違いない。男手共の先頭に立ち、勝手にジュンの作った道を渡って来た。僕達も向かう。

「お前が侵入者共の頭か!」

 年寄りにしては威勢の良い声を張る。

「俺は王家の許しを得てパー家よりこの地を譲り受けたユカタ・ウェストモーアだ。ぬかるみを放ったらかしにした挙句、魔物の巣まで作っておいて、我が物顔するお前は誰だ!」

 負けないように声を張り、細い通路に対峙する。年寄り獣人はフンと鼻を鳴らすと体を貯水池に向けた。

「ガキに名乗る名前等無いわ」

 言うが早いか。あろう事か貯水池に向けて粗末な物を出し、汚い汁を垂れ始めた。

「ヒグッ!アッ…」

「代表!」「村長!!」

 許す事は出来なかった。僕は年寄りに向けた掌から槍を射出し胸を貫く。それに僅かに遅れてセーナが風魔法を使ったのだろう。年寄りの首が切れた。僕の槍諸共に。命を絶たれた年寄りは、下流に向けて倒れ行く。だがそんなの関係無い!

「ジュン!そこの床切り取って!すぐ排水!」「はいっ」

 年寄りの立っていた場所をジュンの土魔法が切り抜くと、せき止められていた水が勢い良く流れ出し、死体を越えて川へと向かう。下にはミズマタルの栽培地があったのに、この分じゃ水流で掘られてしまったな。
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