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来る者、拒まず
しおりを挟む村の南から南西に掛けての新規外壁が仮設されるまでの12日で、残りの4集落への制裁を終えた。どの集落も戦力を使い果たしており、残った人数では僕達の敵ではなかった。実力では、ないけどな。各集落の長と、十何人かの男。そして1人の少年が死んで、希望者が僕等の村に加入した。
「ユカタ君っお帰り」「まーたこんなに連れて来たのかよー」
留守番をしていたジュンとハキが迎えに来た。
「ただいま。ジュン、家を狭くしちゃってごめん」
「大丈夫。アルアインさんに設計を頼んで効率が上がったから、明日には増築出来るよ」
門の北側にある獣人達の住居は、門を挟んで南側に建つ僕達の家より優に5倍は長くなった。今回の遠征で各集落から来た獣人達は、最初に来たエヴァさん達を含めて大人女性58人。子供男子17人、子供女子23人。男幼児10人、女幼児8人となった。106人。僕達含めて117人。野菜が尽きるので今は狩りをして肉を主食にしてもらっているが、農産物の増産は急務だ。
「へえ、ココがあンた様の縄張りかね」「壁しか無いねぇ」
「お前等、生言うんじゃないよ?今日からでも働いてもらうからねっ」
最後の集落から来てもらった女性達が、村を見渡し軽口を叩く。最初に来た女性が威嚇をするが、皆歩きで疲れているし、強がりなのは分かってるので宥めて撫でて、退いてもらった。
「けっ、飼い慣らされやがって…」
「みんな。まずはお風呂で体を洗っておいで。その後は食事をしてゆっくり休んでくれ。後、お前」
悪態吐いた女に詰め寄ると、女は余裕の表情で強がって見せる。
「自分からココに来るって言ったから連れて来たんだ。あんまり強がるな」
「はっ!断れる雰囲気出さなかったクセにっ。あたしがあンたなんかの思い通りになると思わない事だねっ」
「不安で尻尾が挟まれてるぞ?」
「ユカタ、放っとこ」「そーだぜ?構うからイキやがるんだ」
ロシェルとハキが口を挟み、僕を引き剥がす。
「飼い慣らすなんて言うな。次は無いぞ」
「だったら従えさせてみな」
ならまずは絶食からだな。3日程飯と水を抜き、妹が居たので石打ちにするのを見せた。無事心を折って従順にはなったが、レイナ達からは凄く批判された。同意でした事なのに。
馬車が使えるようになり、セーナ達いつもの4人は行商に出てしまった。外貨の獲得と食料調達の大事なお仕事だ。僕も行きたいとか甘えた事は言いたくても言えない。仮設の外壁の内側で、僕とハキは開墾作業に勤しむ。残りは壁を作ったり、畑の水遣りとか色々だ。移住して来た獣人達も出来る仕事を探してやってる。
「あの、ご主人様。あた、わたしも何か手伝いを」
声を掛けて来たのはキツい仕打ちを受けた妹で、名前をセティルと言った。欠けてしまった左耳は僕の指示でなったモノだが、欠損を治す事を彼女は断った。姉の楔にしてもらうそうだ。
「ならそうだな、休憩するからお茶に付き合ってくれ。ハキ、休憩だ」「あいよー」
セティルとハキを連れて壁を背もたれにすると、コップと水筒を出して注いでやる。
「ありがとう、ございます。そ、それで」
「そこまでだぜ?」
コップを受け取ったセティルはお礼と共に何かを切り出そうとしてハキに止められた。何だ?
「ハキ、教えてよ」
「ん、ただの虐めだよ」
「ダメじゃんそんなの」
セティルの姉は、僕への従順を示したその日から他の獣人により村八分にされていると言う。食事の提供は受けているし、謂れ無い暴力等は受けていないと言うが、僕の見えない所では徹底して無視されているそうだ。
「姉は、許されないんでしょうか」
「さーな。俺もアイツ嫌いだし」
虚勢を張って舐めた口利いてたのがハキ的には苛つかせたらしい。
「取り巻きに担がれてよ、ソイツ等を守りたいとか思ってたんだろ」
今ではその取り巻き達にも無視される日を送っているそうな。面倒事を起こしてくれるなよ…。
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