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相互、扶助
しおりを挟む自家製エールはメイドから獣人に製造法が伝授され、畑の拡充に麦の増産がなされた。そしてついに、紙の製造が始まった。畑の一等地にある草畑から刈った草が、刻まれて灰を入れた鍋で煮られてる。青臭さで子供達が逃げた。僕も他の作業に行ったので後の事は分からないが、四角く伸されて壁の傾斜に干されてた。
「白くなったね」
「まずは第一歩、だね。後は強度と厚みを確かめなくちゃ」
僕の言葉に返すジュンはやる気に満ちていた。雑草をお金に変える錬金術。商売人の血が騒ぐのだろう。乾いた紙は剥がされて、夜遅くまで色々と検証が行われていた。
「ユカタ君!私、紙を作るからっ」
その前に少し寝た方が良い。朝から元気なジュンは目に隈作って自作の紙を押し付ける。白くて程良くコシがあり、手触りも滑らかだ。試し書きされた文字や線は滲みも少なく市販の紙に負けてないと感じた。
「無理しない程度に頑張って。まずは寝て、体を休めて?」
「そんなっ、休んでられないよ!」
「壁から落ちたら紙作り出来なくなるよ。手伝える所は他の人に任せて、ね?」
何とか納得させられたようだ。食事を済ませて寝ると言う。で、早速僕に手伝いの依頼がされた。肥料撒きだった。
「旦那様~、コッチも手伝ってくれよー」
ハキめ、人遣いが荒い。草畑の反対側、畝立ての終えた畑作業では新たな種蒔が行われている。葉物と実物を植えるそうで、僕は水遣りに加わった。
水遣り組が内外の畑区画を水浸しにして戻ると、休憩を取ったジュンも落ち着いた表情に戻っていた。
「さっきはごめんね。私変なスイッチ入ってたみたい」
詫びられても、いつもの事だから気にもならんよ。ジュンはアルアインさんやセーナにも手伝いをお願いしたみたい。2人はポーチ関係で多忙の身だが、折を見て手伝ってくれるそうな。皆ジュンには世話になってるしな。持ちつ持たれつだ。そうやって住民全員がジュンの手伝いをした結果、ジュンの手から紙作りが離れた。ジュンは新たな造成の為の外壁建築に戻ったが、紙作りから手が離れても残念がってはいなかった。あくまで紙は目的の1つだそうで、コストダウンの手段に過ぎないのだと。売らないのかと思って聞いてみたが、もっと色を付けてから、だって。付加価値商法、だっけ?貴族の便箋に装飾施したりするヤツ。あんな事をするのだろうな。
ジュンの手伝いをした事で弊害も出た。ポーチの生産が滞ったのだ。とは言えお金自体はどうと言う事は無い。なぜならポーチ5つも売れば家が建つのだから。それよりも、食材を買いに行く機会は変わらずなので効率が悪いとセーナは愚痴った。
「売りが無いのでしたら私が買いに行きやしょう」「オレもな」
「2人で行かせるのは不安だな。夜襲は相変わらず多いし」
「俺も行って良いぜ?」
「ハキは村に居なさい。あンたの手先は村に必要よ」
僕の言葉にハキが乗るのをセーナは諌める。確かに手先は器用だが、子供に長旅させたくない親心でもあるだろう。
売り物が無いのに買い物行く。商人失格な行動を取らざるを得ず準備をしていると、何人もの獣人が駆け寄って来た。
「ご主人様!何か来ますっ」「やべぇ奴だぜ!?」「空からだ!」
「空?とにかく家に隠れさせろ。ベス、分かるか?」
「獣人達の索敵範囲には驚かされますね。……来ました。騎竜でしょう」
騎竜。って事は騎士団か。外壁に上がって空に動く物を見る。点が3つ動いてる。アレだな。拠点がほぼ更地で良かった。皆に指示して更地に出ないようにしてもらい、子供達は引き続き避難。僕は3つの点が騎竜の姿と分かるまで壁で待機。剣をキラキラさせて迎えた。
「久しいな、ユカタ」
「やはり王子殿下でしたか。今飲み物を用意させます」
招いてない客にヒト種は忙しく動き回る。獣人達は手伝うに手伝えずポカンと見てるだけ。だがこれは仕方ない。ヒトの決めた序列を彼女達は知らないのだ。
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