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やる事は、やってるって
しおりを挟む「領主様、お初にお目に掛かります。我等は国からの依頼により参りました『ハーブアンドガーディアンズ』、私はリーダーのペニーと申します」
「うむ、よく参られた。地域の植生の調査、心置き無くするが良い」
「…あの、ユカタ君、よね?」
「冒険者、無礼ですよ?こちらはこの地の領主にしてウェストモーア家当主、ユカタ・ウェストモーア男爵です。公の場での言葉は慎みなさい」
「り、領主、様?」「ウェストモーア…家」「男爵!?」「村人だったよな?ハズだよな?ですよな?」
「エリザベス、ここまでにしよう」「はい、貴方様」
「どうも、ウェストモーア家当主のユカタ・ウェストモーア男爵だ。驚いたか」
領主館の政務室に挨拶に来た4人は面を上げさせた時からおかしな顔になっていて、僕は今にも吹き出しそうになるのを堪えながら答弁していた。横に立つエリザベス様はよく吹き出さなかったモノだ。すっかり土木作業員だと思い込んでいた4人は僕の変わり身に面食らっていた。土木作業員なのは事実だが。
「色々あって貴族になってね。色々あって領主になっちゃった」
「色々を端折り過ぎだ…ですよユカ、領主様」
「公の場は終わったからもう言葉を戻して良いよ。こう見えて、元村人だから」
「知ってるわよ!驚きで混乱するわっ」
「俺達もお返しするぞ?」「そだね」
「「私」」「「俺」」「「「「達、結婚しました!」」」」
「おおう…」
「アタシ達もユカタの妻だよ?」「ええ、パーティーメンバーに魔道砲のセーナ、他にも沢山」「妾もねー」
「「「「えーーー!」」」」
いつの間にか現れたロシェルにエリザベス様が続き、ロシェルが爆弾発言を被せる。4人は大きく驚いたが、僕だって面食らったよ。皆、結婚してたのか…。ペニーとオイシン、カシーとロナンで夫婦になったそうだ。女性と話そうとしてキョドってた元デブも成長したのだな。
旧知の友が集まれば、その日は宴会となる。皆タダ酒を煽りたいだけだろうが、理由を付けて押し切られ、翌日は業務停止となってしまった。
「領主なのに壁作ってるのな」「こんな事してる貴族初めて見るわ」
僕とハキが仕事をしていると、今日からここでの仕事始めであるハーブアンドガーディアンズの4人が作業現場に顔を出す。少し離れると魔物が出るので4人共フル装備だ。防御に寄り過ぎに思えなくもないが、死なない事は良い事だ。頑張れよーっと送り出すと、壁の穴から外に出る。門から出ろ馬鹿共め。帰る前に閉じてもらおう。
「残念だったな旦那様」
「残念なモンか。ここに可愛い妾が居るじゃないか」
「あう、抱き着くなよぉ」
仕事中なので我慢する。今の僕は色欲領主ではなく土木作業員なのだ。焦らず急いで丁寧に、昼までの仕事を終わらせた。しかし午後休憩を長く取り過ぎ、4人が壁の穴を通るのを赦してしまった。無念。
「ユカタ君、お楽しみだったね?」
「みんながベロンベロンになってたからだ」
「俺、疲れたー」
「ハキちゃん、一緒にお風呂入ろうねーっ」
ジュンは魔法で壁の穴埋めをすると、草臥れたハキを連れてってしまった。僕もお風呂行こう…。
翌日。H&Dの皆は、畑 の様子も気になると言って3人衆の案内で畑の視察に繰り出した。報告する先は国だけにしてもらいたいが、いずれ知られてしまう事だから仕方無しと諦める…と、エリザベス様も言っていた。
「ジャリソウがあんなに膨れるなんて初めて見たわ?どうやったのよ?」
壁作り昼の部が終えて早々、ペニーから秘匿事項の開示が要求された。が、コレたまたまだから説明しようが無いんだよな。この程度の薬草の増産ならペニーの実家でもやってるだろうが、聞くとそうでもないと言う。ペニーの家ではもっと山奥に生える貴重な薬草の増産が主で、街の中で薬効を下げず、肥大化させる術は無いと続けた。薬効が変わってないと言うのは初耳だ。
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