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何しに、来たの?
しおりを挟む工事中の壁と外門内門を封じて、戦闘に耐える者は総員武装の元各員配置に着いた。壁の上に立つ僕等の姿が相手にも見えたのだろう。歩兵が全面に押し出されているのが見える。
「何だ?やる気満々じゃねーの」
「素人ですね。私なら盾と魔法の混成部隊を二列で出しやすね。破城槌も見えやせんし、これじゃあ戦いにもなりやせんよ」
ライラは兵種を見て分析する。僕なら盾部隊と破城槌を前に出し、わちゃわちゃしてる隙に梯子部隊をバラけて出して侵入させるかな。なので偵察に重点を置いて指示を出す。五感鋭い獣人であっても虚を突かれる事はあるからな。
「貴方様、左右からの分隊は見られません、と」
「引き続きお願い。後ろは手薄だから手を抜かないように」「はい、しかと伝えますわ」
取り敢えず今は目の前の隊列に集中だ。凹みに戻したふかふかの残土に足を取られながら行軍する歩兵の間を、騎馬隊と馬車隊が街道を2列になって進む。歩兵達の不平不満が聞こえて来そうだ。
「歩兵の足が遅いってさ」
「水撒いてぬかるみにしたら上がって来れなそーだな」
「水なんて勿体ないわ。風でも吹かせてやれば動けなくなるわよ」
攻撃力に劣る風魔法でも使い用によっては効果がある良い例だな。たっぷり1時間も待たされて、ようやく声が届く場所に集まった。
「大勢で来訪ご苦労。私はこの地を治めるユカタ・ウェストモーアだ。用向きを聞こうか」
僕の声が戦闘の合図になったのか、下にいた数人の兵が弓を向けて撃って来た。が、当たらず逸れた。エリザベス様の風魔法だ。
「セーナ様、レイナ様、準備整いました」
「残土まで下げてくれれば良い。放て」
マキの報告に返事をすると、2人の魔法が重なって、敵の前に火柱を横倒しにしたような長ーい火の壁が現れた。グルグルと渦を巻いて、火の壁が敵兵を炙る。小さい盾等何の役にも立たず、体を燃やされ動けなくなる。死にたくない者は後退し、馬は人を捨てて走り出した。
逃げ出す者と後詰が合流するのを見計らい、卑怯な僕の出番となった。背中に背嚢を背負った僕と呪物を背負ったハキが、密集した敵兵の足元からありったけの土を収納する。
瞬間、声も無く。落下して、しばらく後、痛みを告げる声が上がった。8mの高さを落下して、平気な者は多くない。街道の上にいた者は運が良い。街道の左右にいた者は滑り落ちて死ぬまでは行かなかったのだろう。痛みを告げる声は主にこの辺りから聞こえていた。運が良かったな。
「ハキ」「おうっ」
土を掛ける。掘ったのだから埋めるのは当たり前だ。掛けてやる情けは無い。人殺しをさせてしまったハキには後でたっぷり掛けてやるつもりだ。
「へ、兵が…」「隊長殿、兵が、埋まりましたっ」
下の声が何となく聞こえて来た。エリザベス様の風魔法か。目配せすると頷いて、また話が出来るようにしたみたい。
「大勢の兵を亡くした事、お悔やみ申し上げる。私はこの地を治めるユカタ・ウェストモーアだ。改めて用向きを聞こうか」
「な!?なぜ居らん!?なぜこれだけしか兵が居らんのだっ!?」
僕の言葉は無視された。3番目の馬車から降りて来た男の声は、頑張って集めた兵が消えてしまった事に憤慨し、報告していた騎兵に八つ当たりし始めた。兵が埋まったと言ってたのに聞いてなかった隊長さんだが、真面目に戦争する気は無かったと言う事か?それだと何か悪い事したかなぁ。
「話が出来ないなら死んで頂く」
「あ」
あ、まで聞こえたが、もう遅い。軽い頭を重くして、男は地面に寝そべった。
「隊長殿は名誉の戦士を遂げた。話をしてやる。投降し、代役を立てよ」
馬に乗っていた者は下馬し、馭者は降りて中に居た者を外へ出した。馬車の後部から出て来たのは、立派な盾を持った重騎士だった。なぜ先に出さなかったのか。
「無能か」
「無能はもっと上で御座る」
独り言に返事が返って来た。
「そうだな、言い過ぎたな」
僕の言葉に、重騎士達は盾を置いた。
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