【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

文字の大きさ
371 / 385

平穏は、続かない

しおりを挟む


「うう、貴族様との商売に、色気なんて出せないわよぉ…グスッ」

 立会人が政務室を出て、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったペニーを慰める。貴族独特のオーラは僕等平民の心を抉って来るからな。気持ちは痛い程分かる。

「分かってるよ。僕はともかく後ろ盾は怖いからね。色気出そうとする者が出た時に、しっかり釘を差せって事だと思うよ」

「帰ったら父さん達に釘差して、自慢してやるわっ」

 栽培が成功すると良いけどな。出来なかったら泣き損だ。翌日からは再び野外の調査をし、10日掛けて魔獣帯の際までを見て周り、旧友達はオーイへと帰って行った。

「これからは冒険者の往来も増える事でしょうね」

「今回は話が分かる相手だったけど、勝手する輩も必ず現れるわ」

「そうだね。立ち入り制限区域、みたいなのを作らなきゃ。棟梁さん達と予定の調整するね」

 旧友を見送る3人衆は今回の来訪で得た経験をすぐに反映するようだ。畑や工場、人の住む住居には必要以上に近付いて欲しくない。壁の上も危ないから上がって欲しくないと感じた。その日の夜の話し合いでは来訪者の移動制限についてを議題に上げて、村の西・畑区、水源区の工場周辺、村の東・居住区への立ち入りを禁止する事に決まった。同時に侵入者への罰則も決められる。

 開け放たれた路地に誤って入って罰を受けては可哀想。なので各集合住宅の入口には木の門が設置された。今はまだ来訪者が居ないので、来訪者が来たらその都度守衛を立てる事となり、住民達に伝えられた。畑の入口にも門が建ち、工場の周りには壁が建てられた。獣民少年共が上がれないようにスベスベのオーバーハングにしたのでヒト種は絶対無理だろうと思ったが、ロシェルは難無く上がって見せた。男の子達には喜ばれたが、やり直しのジュンは不満顔だった。

「んもー、ロシェルちゃん何で登れるのーっ!?」

「日頃の鍛錬?」

「これ以上高くしたら余計興味を引いちゃうよっ」

「こんな曲がった形の壁な時点で目立つしね。普通の壁に戻そうか」

「そうだね…気を引かないのが一番…だね」

「お前等も、登れるからって登んなよ?」

「「「うぇーーい」」」

 とは言え娯楽がないからな。登り出す前に何とかしなければ。

 余計な事に4日も使ってしまったが、村は平穏を取り戻し、宿屋が完成した。酒場の右隣に隣接して造られた建屋は1階石造、2階木造の二階建て。酒場に隣接する場所を切り抜いたコの字型に造られて、中庭では整備や洗濯、簡単な鍛錬ができる。素泊まりのみで1泊5,00~40,00Uとなっている。5,00Uのは大部屋雑魚寝、僕は泊まりたくない。

 宿屋は出来たが客はしばらくないだろう。と高を括っていた僕に報告が入る。

「…で、どう致しましょうかね?金を返して帰しますかい?」

 1泊5,00Uの大部屋に、獣民少年共が寝泊まりに来たと宿屋の新米女将が告げ口に来た。娯楽も無ければお金を使う場所も無い。悪さをしてる訳でもないので頻発しないなら良いのではないかと話をまとめた。それに客が来るまでの練習にしたら良いんだ。

 建設が落ち着いたと思ったらまた新設するそうで、壁作りに来てくれたのは棟梁兄だけとなった。宿屋の隣に公共浴場と、さらに隣にもう1つ宿屋を作る予定だそうで、来たる新規住民のために集合住宅も増産したいとの事。大通りに向かい合わせになる店舗も作りたいそうだ。夢は膨らむな、人来ないけど。ハキとオッサンと僕で壁作りを続けて10日。陸路から何者か来たと壁の上から報告があった。

「貴方様、大勢が騎馬と馬車にて現れました」

 エリザベス様の風魔法も飛んで来た。エリザベス様が数を把握する前に報告するとは、だいぶ大勢なのだろう。

「ユカタ~、多分軍人だよ?どーしよ?」

「どうしようも何も、出入りを封鎖する。ジュンを呼んでくれる?」「あ~い」

 ロシェルも言うが、騎馬を連れてるって時点でそんな気はした。








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。 失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった! この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。 一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。 「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」 底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...