75 / 1,519
泣いた
しおりを挟む昼飯は茹で肉とスープとツイストソーサー。
シルケに来てから主食はずっとソーサー、即ちマタル粉なんだよな。他に主食足り得る炭水化物は無いのだろうか?
マタルの粒入りスープは食った事あるけど、麺だとか団子とか、他の料理のバリエーションがあっても不思議では無い筈だ。
「テイカよ、マタル粉やマタルの種ってソーサー以外で料理法は無いのか?」
「はい。茹でた種をスープにしたり、ソースで絡めて食べたりしますね。粉に関してはツイストソーサーにビックリしたくらいに薄いソーサーしか知りません」
「私も」
「ならマタル以外で主食になる物ってあるか?」
「「肉」ですね」
良い笑顔で答えよる、可愛い肉食獣共め。
「穀物とか根菜とかないの?」
「大体スープの具ですね」
「丸焼きの具とか」
なるほど。食休みを長めに取ってその間に少し試してみよう。
「カケル、食べ物で遊んだらダメ」
泣いた。泣いてテイカに泣き付いた。
「よしよし、カケル様は悪くないですよ。真面目に主食の種類を増やしたかっただけなんですよね。悪いのは残り少ないマタル粉ですから泣かないで下さいね」
「ゴメンねカケル」
撫でられて、慰められて、膝枕で昼寝した。
目覚めるとイゼッタが肉布団してた。
午後の作業はテンション上がらず、木材の加工は二人に任せ、俺は組み上げの時重い物を持つ係と上の方の釘を打つ係だけやった。
後輪の車軸受けの取り付けと、船の上部、壁と屋根を組んで穴埋めしてた。
乾燥したら進水式と試乗だがもう明日で良いや。窓も付いてねーし。
朝起きて、目を閉じて、荷車の窓について考える。防具を注文してるとは言え、もう街に行くの面倒なんだよな。窓を発注しても数日掛かるし。この家を引き払うなら家の窓をバラして使うかな。ソファーや絨毯もバラしてフェルトにすれば乗り心地も変わるだろう。取り敢えず窓だな。
二人を起こさずベッドから抜け出し、キッチンで干し肉を齧っていたらイゼッタが起きて来た。
「昨日は、ごめんなさい」
「何について謝ってる?」
「カケルの…、気に障る事、言った」
「そうだな。泣く程悔しかった」
「本当にごめんなさい」
「俺は必要だと思った事をやっている。たとえそれが失敗してもだ」
「うん…」
「マタル粉でソーサー以外の主食を作れ。それまで荷車作ってるから」
「うん…」
「起きてるんだろ?テイカはどうする?イゼッタとやるなら工具を返せ」
ドアを開けて出て来たテイカは涙ぐんだ目で工具を差し出して来た。
無言で受け取り居間の窓を外した。
荷車のフロントに外した窓を当て、ボールペンで当たりを引く。鑿で少し内側から掘り進め、穴が空いたらキレイに整えて行き、樹液を付けて嵌め込んで、更に隙間を埋めてって、乾燥したら窓の完成だ。
家に戻りたくないので荷台で寝る。板の間なので背中が痛いが気にしない。
もう、味とかそんなの気にせずに、肉だけ食って生きようか…。鬱々とした気分で目を閉じていると、テイカが朝食だと呼びに来た。足が重い。腰も重い。テイカに支えられ家に連れて行かれた。
「がんばって、作ってみ…ました」
マタル粉で作った何かが皿に乗っている。
ソファーに座らされ、仕方なく食べるが、何だこれ?蕎麦掻きか?肉のスープに入れて混ぜましたって感じのネトネトだ。麺の文化は無さそうだし、原点と言えば原点か。
「どう…ですか?」
「年寄りなら良いかもな」
三口食べて俺は食事終了。二人は頑張って残さず食べた。
「変な物作って、ごめんなさい」
「構わない。俺がやれって言ったんだ。だが俺はほぼ同じ工程で、もっと美味い物を作れたがな」
「教えて!…下さい」
「そのうちな」
「カケル様、あたしも叱って下さい。あたしは、何も出来ませんでした…」
「出来ないのが当たり前だ。知識も概念も無いんだからな。そして無理して作ったのが、アレだ」
「ごめんなさい…」
「もう謝るな。因みにあれは蕎麦掻きって名前だ」
「カケル様は知っておられたのですか?」
「味付けは違うがな。ガキの頃食べてあまりの不味さに親に怒られても手を付けなかった」
「二度とあんなの作らない!」
「是非そうしてくれ」
暫く休んだら進水テストだ。それまで寝よう…。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる