女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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良い人

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 朝になり、身形を整え朝食へ。食堂でソーサーを齧りながら今日からの予定を伝える。
俺、イゼッタ、シトンとアズは荷車でメルタールへ向かう。お留守番となったテイカは不満げだが、渡り廊下や複合施設の明り取りを付けてもらいたいので連れて行く訳には行かない。お土産買ってくるから良い子で待っててくれ。

朝食を終えて装備を着込み、荷車のメンテナンスをしてる間に女達の支度が終わるのを待つ。皮のタイヤはそろそろダメかなー?帰って来たら魚の皮でも貼り付けてみるか。あれこれ思案していると支度を済ませた女達が集まったので荷車に乗り込み移動した。

「カケルさん…、来る時も思ったんだが、何で飛べんの?」

丸太に引き続き、荷車に乗って飛んでいる事が信じられないようだ。落ちないように俺の腰にしがみ付くシトンがスレ可愛い。

「飛ぶだけならイゼッタもできる。要は鍛え方次第だ」

適当な事を言ってるが、きっとやれば出来ると思う。戯言を鵜呑みにしたシトンは感心しているようだった。一方アズはと言うと、特にやる事も無いので寝てる。肝が座ってるな。
思い出したのでシトンに金を渡しておく。当面の生活費だ。

「そんな、いらねーよ」

「宿代に服、冒険者やるなら装備も要るだろが。それに、孕んだら子育てもあるんだぞ?」

「そうなったら…家に帰るよ…」

「とにかく持っとけ。無いよりはマシだから」

「カケルさんマジ惚れそう」

「もう惚れてる」

「なら惚れた!」

「ならパーティーは解散かな?」

むっくり起きたアズの言葉に狼狽えるシトンだが、まだ冒険者は続けたいようだ。頭を撫でて落ち着かせてやると、アズの手が伸びて可愛い顔して来たのでお金を置いてやった。したたかさんめ。

暫く飛ぶと海を越え陸に入る。メルタールまではもう少し掛かるので、飛んでる鳥など眺めながら高度を維持して飛ぶ。

「あれ、鳥じゃない」

「野獣みたいですね。珍しい」

抱き着いてるシトン毎荷車の後ろに移動して目を凝らすと、確かに鳥じゃないのが見えた。鳥の頭で体に羽を生やした四足が、何故かこっちに飛んで来る。

「アズは見た事あるのか?」

「学園の授業で見る機会がありました。スカイエアランダー、だったかな?そんな名前です」

「捕まえたら、乗って飛べそう」

確かに乗れそうだが、お前普通に飛べるじゃん。グリフォンみたいな三匹の野獣は脇目も振らず飛んで来る。中々速い。

「狩ったら金になるかなー?」

「狩るより飼いたい」

「逃げよーよー」

「カケルさんにお任せします」

飼いたいかー。家に連れ帰ったら兎が食べられちゃうかもなー?お昼兼おやつの干し魚を手に取り近寄って来た鳥モドキにチラ付かせてやると、右に左に凝視してる。なるほど、お腹減ってたんだな。投げてよこすと食いついて、我も我もと食べに来る。俺達の食う分無くなっちゃったけど、追って来なくなったから良いや。

「カケルさんって、良い人なんですね?」

「金はあるからな。無駄な殺生したく無かっただけだよ。解体するのも面倒だし」

「捕まえてホルストの代わりにしたら低い所を移動出来ましたよ?」

「その手があったかー」

「帰りにも居たら捕まえよ!」

イゼッタはやる気だがそんな簡単に手懐けられるもんなのだろうか?帰りには肉を狩る予定もあるし、居たらやる、程度には覚えておこう。

森を抜けて街道が見えて来たが、商隊が居るので降りられない。困った。

「あの感じだと途中で野営しそうですね」

後ろから追い越すのはしない方が良いと言う。何となく同意できる。先に進んで着陸できるならそっちが良いが、開けた場所なので見られてしまうかも知れん。

「森の中を突っ切る迂回路があるよ。治安はその分悪くなるけど」

「ならそっちから行くか」

「賞金首で一儲け」

「さっきは餌付けしてたのに…」

「野獣は悪くないからな」

「可愛いは、正義」

一路森の街道に向かった。
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