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由々しき事態
しおりを挟むアズとシトンに案内されて森の街道に来た。荷車がすれ違うギリギリの幅の土の道は回転も出来ない。しかも荷車の腹を擦る程の深い轍が出来ていて、道の横には薮や太い木々が生い茂っている。イゼッタの水レンズで上空から覗いているのだが、これは絶対に降りたくないぞ。
街道の入口付近に見張りを立てて、轍に乗り上げた商隊を囲って襲うのにバッチリな立地じゃないか。
「やる?」
正直荷車やお客様が居なければイゼッタと二人で何とでも出来ると思う。荷車を降ろしてやる場合、荷車を壊される可能性がある。
「何考えてる?」
「降りたら荷車壊れそう」
「頑張って作ったもんね…。なら此処から魔法でも撃つ?」
それもありか。ギフトで商隊が居るか調べると、居ないと出た。まあ納得の道だしな。ついでに一般人や冒険者が居るかも調べたが冒険者は居らず、一般人も街道沿いには居ないと出た。これなら平気かな?
「街道沿いには人は居ないみたいだ」
「ん。なら道を太くしとく」
杖を持ち、荷車から身を乗り出したイゼッタが、魔法で巨大な旋盤を何枚も作り出す。落ちないように上から保持して見ているが、ざっと直径三十ハーンはあるな。旋盤は縦積みにされているので何枚あるかは分からんが等間隔に並んでるみたいだった。それを街道の入り口に落とすと、触れた木がおが屑に変わる。あ、何か赤いのが見えた。
一番下の旋盤が地面を削り出すとその場で留まる。街道の真上を飛ぶ荷車と同じ位置の草木を切り刻み、おが屑にしながら進んで行った。
「魔力はどうだ?」
「一度作れば維持だけだから。魔法で邪魔されなければ問題無い」
「とんでもない魔法ですね。初めて見ました」
「自慢の妻だ」
「えへへ。慣れれば誰でも使える」
轍は多分、多少は削れてると思うのだが、おが屑に埋もれてどうなってるかは分からない。それでも道幅が広くなって光が当たるようになった分通りやすくはなったかな?賞金首で一儲けは出来なかったが荷車を壊されるよりはマシと考えよう。
ボランティアの公共工事をしながら街道を進んで行った。
街道の出口まで一キロハーン程となり、此処からは地面を行く。タイヤに負担を掛けたくないので地面スレスレを飛んでるけどな。
数ハーン前では依然バリバリと道作りしてるので音とおが屑が凄い。野獣やモンスターは音にビビって逃げ出したのだろうか、全然見ない。野党も同じく逃げたようだ。
暫くすると森を抜け、草原に出たので魔法を解いてもらう。
「イゼッタ、お疲れさん」
「もっと褒めて」
「撫でてやるからもう一仕事頼む」
頭を撫で撫で森の方を指差した。
「森の中に人が居るんだよなー。すげー気になる」
「女?」
「ああ、気になるだろ?一般人みたいだし」
「けどそろそろお昼。お腹空いた」
由々しき事態だ。
空腹になるとイゼッタは切なくなってしまうのだ。今は料理道具も無いし、森の中で生食出来る木の実でも探すか。ワタウリみたいに樹冠に成ってると有難いのだが…。
森のてっぺんギリギリまで飛び上がり、生食出来る木の実を探し移動すると、木の幹に直接成ってる木の瘤の様な木の実を見つけた。俺は荷車から出られないのでイゼッタが飛んで取りに行く。荷車にポイポイ投げ込まれた物を掴み取ると、見た目はライチみたい。しかしかなり硬いな。十個程投げ込んでイゼッタが戻って来たので大鉈で割ってみると、一口サイズの黄色いふわふわがポロポロ零れ落ちた。
「カケル、あ~ん」
自分も空腹だろうに俺に食べさせてくれるなんて…、俺を毒味役にするつもりだな?
味は南瓜味でふわふわのパンだった。ちょっと青臭い。
「…食える。スープに浸して食べたいな」
「はむ…。んん、味の付いたソーサー」
皆で木の実をハムりながら一般人らしき者の場所に向かった。
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