女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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人間の屑

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 売れる武具を売り払い、代金の殆どを振り込んでもらったらギルドを後にする。まだ二の鐘が鳴って間も無いし、土産物でも物色しよう。これをしないと帰った時に怒られる。
エージャの見立てで色々な物を買う。包丁に鍋釜等の調理器具。鋤鍬等の耕作道具に種。キレイな布に、糸や針。調味料や野菜等の食料品。そして食器やカトラリー。マントやポンチョ、サンダルなんかも大量に買い付けた。

「だいぶ買ったな」

「このくらいは買わないと長く待たせたお詫びにはならないかと」

エージャも気にしてたようだ。

「後は、一度顔を見せるのは如何でしょうか?」

「戻って来れなくなりそうだがなぁ」

「逆に、皆様を此方に連れて来てしまうのです。私では見逃している買い物もありますでしょうし」

「リアとサミイ、メイド二人は留守番で、呼び寄せるのは龍三人…、否、カラクレナイも留守番だな。リュネとミーネだけ連れて来ても買い物には参加出来んな」

「ではダンジョンにでも潜って頂きますか?」

「んー、それがな?以前、ネーヴェをダンジョンに連れてったんだが、ダンジョンが萎縮して敵が逃げ隠れしたんだ。あの二人が来たらダンジョン自体が隠れてしまいかねんよ」

「確かに…」

そんな訳で帰るのは無しだ。素直に宿に帰ろう。


 考えてみたら、今朝はまだ朝飯を食ってなかった。元気一杯で気付かなかったが、何となく小腹は空いてるので宿の酒場で飯にした。酒場には冒険者がチラホラ見える。今日は休みなのだろうな。朝だと言うのにエールを飲んで、ウェイトレスの尻を眺めてる。正に冒険者、人間の屑だ。

「けしからん尻ですね」

「エージャの尻もけしからんぞ?」

「見ますか?」

「後でな。朝から酒を飲む習慣が無いものだから何故飲むのか理解出来無い」

「酔えて、お腹が満たされます。エールは飲むソーサーですから」

「理屈は解るけどさ。出来れば冷やして飲みたいんだよなぁ」

「雪でも《収納》してみますか?」

「それなー。あ、熱を《収納》すると冷たくなるってミーネが言ってたな」

「試して見ましょうよ」

「お前飲みたいだけだろ?まあ良いや」

けしからんウェイトレスにエールを二つ頼み、人間の屑の仲間入りを果たした俺達は、なみなみ注がれたエールの熱を《収納》するべく集中した。
液体から熱量を《収納》するとなると、一気には出来無い。下がり過ぎて凍ってしまうからだ。少しづつ、冷蔵庫のチルド室をイメージして静かにジョッキを見詰めた。

ダメでした。

やっぱりアレは人の出来る範囲を超えてるぞ?味見と称してゴキュゴキュ飲ってるエージャは飲めりゃ何でも良いみたい。けど俺は冷やして飲みたいので他のアプローチから攻める事にした。
ゴム風船を引っ張ったり縮めたりすると、熱が増減すると言う実験を夏休みの自由研究で持って来たクラスメイトの佐々木君を思い出した。テレビの面白実験の丸パクリじゃねーかと総叩きに遭って泣いてたな。俺はその番組を見てなかったし、提出したのは紙粘土で作ったバットとボールだったので純粋に感動したのだが。しかしこれは使えないな。エールは伸び縮みしないもん。こんな所でやったら曲芸かと思われかねん。
小学校で更に思い出したが、野球サボって家族で富士山登った今井君が居た。勿論野球サボったので総叩きに遭って居たのだが、富士山寒いと言ってたな。気圧を下げると冷えるのかも知れん。これなら使えるか?
俺のエールの周りを《威圧》で囲み、思い切り膨らませる。

結果、少し冷えた。

テーブルの広さ程度の減圧ではそこまで下がらないのだろう。もう、樽事上空五千ハーンに上げるしか無い。さりとて半分飲んじゃったし、これ以上は冷やす必要は無いな。諦めて焼肉を頬張った。
俺は人間の屑にはなれそうもない。目の前の屑は二杯目のエールを頼んでいた。
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