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金属バット
しおりを挟む素晴らしい経験を得て目覚めた朝。朝食を食べ終えお茶を飲み、作業を開始する。昨日水に漬けていた種達は、しっかりふっくら含水したようだ。水を替えて煮る準備をしよう。
「カケル、何それ?」
「鍋を使う程の量じゃないからな。このまま煮られるようにしたんだ」
作ったのは、お椀が乗る程度の小さな鉄板に、リアに作ってもらった属性魔石を埋め込んだ、携帯用火の鉄板だ。属性魔石も一粒しか使ってない。鉄板の下には同じくらいの大きさで耐火煉瓦を敷いて、テーブルの上でも煮炊きできるぜ。テーブルに並べた十一個のお椀にそれぞれセットし火に掛けた。蓋も作って乗せとこう。
暫くするとくつくつと湯が沸いて、蓋の隙間から蒸気が漏れる。火力を調節したらシャリーに火の番をさせて外に出る。カラクレナイ用入口の前ではリームが収穫したアマグキ三種が太くて長くて立派な茎を晒している…、基、置いてある。
「カケル様のより長い…」
「太さはカケル様の勝ち」
「味はどうなのかしら…」
アマグキ突っ込んだろか。兎達にチラッチラ見守られ、三種の草茎を検める。葉が長いのがナガバアマグキで、葉が細いのがホソバアマグキ。残ったのが普通のアマグキだと思う。名前のまんまだな。茎の太さはどれも変わらず、葉を取ったら見分けが付かないな。
普通のアマグキの葉を取っ払って《洗浄》し、《散開》した物を手で搾る。入れ物用意してなかったのを察知してテイカが鍋を持って来てくれた。ありがたし。搾るのは誰でも出来るので皆にも手伝ってもらおう。イゼッタとテイカが普通のアマグキ、フラノノにはホソバアマグキを任せ、サミイとリアはナガバアマグキを搾りだす。俺、リアの乳を搾る。乳はまだ出ない…ってやる事あるから!現実逃避良くない!
極々薄い雑木紙を作り、鉄板を曲げて作った漏斗に組み合わせて水を注ぐ。雑木紙は元々木なので穴は空いてるだろうが、練ってあるので水を通すか不安だったのだ。だが雑木タオルは水を吸うし、不安は杞憂に済んで良かった。
漏斗のセットと煉瓦の入れ物を三つ用意し、搾った汁をそれぞれ濾して行く。搾りカスが取り除かれた薄緑の泥水は、初見では口にしたくない。兎達が鉄板を持って来てくれたのでテーブルに耐火煉瓦を置いて火に掛けよう。
ぐつぐつぐつぐつぐつぐつ…
茶色くとろみのある液体になった。これを冷やし固めれば黒糖になると思われる。糖が含まれてればな。鉄板でバットを作っておこう…。金属バット…良い響きだ。
「主様。この匂いは何だ?」
アマグキを栽培してくれたリームが野菜を担いでやって来た。お仕事お疲れ様です。
「アマグキを搾った汁を煮てるんだ」
「人の子や兎達は甘い味に蕩けているようだが、我は好んで食う程では無いかな」
「龍は塩と脂派だからな」
「うむ。焼けた脂の旨味を知ったら生では物足りん」
「カケル様、種の水が無くなりそうです。足しても良いですかー?」
「良いぞ。昼飯の時間までその調子で頼む」
種を煮るシャリーからの報連相を聞き、種の様子を見に行く。煮種を一粒ずつ浮かせてフーフーし、指で潰してみる。まだ芯があるな。口にするとプリっとしたりサラサラしたりと食感に違いがある。ヒラバ類はサラサラ系、アマグキ類はプリプリ系、フサナリはモチモチ、ムチムチ、サヤノクサはサラサラ、プリプリ、サラサラだった。ヒラバ類とサヤノクサ、マルサヤノクサは使えそうだ。引き続き火の番よろしく。
厨房から持ち出して来たお玉で茶色いトロトロを混ぜる女達の元に戻る。水分もだいぶ抜けて、良い頃合だな。バットに流して冷えるのを待つ。
「皆お疲れ様。後は冷やすだけだから自由にしてくれ」
「食べられるの?それ…」
「見た目はよろしくありませんが、カケル様の事ですからきっと大丈夫なのでしょう」
まあ、見た目は悪いよな。
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