女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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 樵の女将の実家である、集合住宅の扉の鍵を開けて階段を昇る。最上階の部屋に着き、更に鍵を開けて室内に入った。

「《洗浄》するからちと待ってて」

「はぁい」「はい」

部屋全体を《洗浄》して積もった埃を一掃し、二人を迎え入れた。

「ここがカケルさんの浮気現場ですか…」

「無駄に大きいベッドに、お風呂や厨房もありますね」

「所で…」

「ああ、待て待て。姿を出して挨拶しろ、死んじゃうぞー」

リュネの目が細くなったので慌てて止めると、ドアを開けて二人の女が姿を現し片膝を着いた。

「カケル様、お久しぶりです」「お帰りなさいませ」

「久しぶりだな。此奴等はこの国の暗部のお前と貴様だ。さっきはありがとな」

「お前です」「貴様です」

「「ありがたきお言葉」」

仕事モードか、それもとリュネにビビってるのかちょっとお堅い口調の二人だ。リュネとシャリーを紹介したら、シャリーにお茶を淹れてもらい、暗部の二人に街の話等を聞く。
食料品が値上がりするのは毎年の事で、こればかりは仕方の無い事だそうだが今年は少し高値水準なのだと。商業ギルドによる更地の買い上げは、アルア邸用地については事実だし、周りに変な物建てられても困ると言う建前だが、土地を転がして利益を得る事も考えていると言う。

「土地転がしが悪いとは言わんが…」

「独占はやり過ぎですね。安いから全部買ったと言うのでは贈賄と変わりませんよ」

「シャリー、多分だが安くはないぞ」

「と、言いますと?」

「はい。建設費用の三割程になります」

「建設自体も商業ギルドが請け負うので、王家への力が強くなる一方です」

「額が予想出来ません…」

「孫請けにちゃんと金が流れれば良いんだがなー」

「カケルさん、マゴウケとは何ですか?」

「商業ギルドが受けた依頼を建築業者等に委託するのさ。ある程度の中抜きは仕方無いとしても、しっかりとした支払いをしないと碌な建物にならんのよ」

「な、ナカヌキ…?」

「手数料って事。王金貨百枚で請け負って、五十枚しか委託業者に落ちなかったら家が半分の大きさになっちまう。だが商業ギルドは予定した大きさで作れ、となる」

「それだと、スカスカになりますねぇ」

「壊れ易くなったりするよな」

営巣に金を掛けないリュネも、何となく理解したようだ。

「それに、街の中でも商業ギルドの力が増してしまいますね」

「はい。手が付けられなくなります」

「もう遅いぞお前よ。商業ギルドは戦争で枯れ果てたウラシュ島以外全大陸にあるからな。殆ど世界制覇済みだ」

「なんと…」「よくご存知で」

「俺、今ウラシュ島に街作ってんだ。そこで出来た加工品の行商に来たのさ」

「「成程」」

「まあ、商業ギルドは利益を得たいだけだろ。第三者機関でも立ち上げて金の流れをクリーンにするよう進言しとけ」

「「御意」」

「アルアに文句が来て泣かそう物なら、商業ギルドなんざ更地にしてやる」

「あら素敵。他の女の為なのが少ぉし癪ですけど」

「アルアは抱いてないからな?」

「大人になったら?」

「そりゃあ分からんが…」

「「伝えておきます」」「伝えるな!」

他にも色々、売れる商品とか聞けた。

「砂糖ですか…。貴族以外も買えるのでしょうかね」

「お金次第です」「まあ無理ですね」

「なら、これならどうだ?」

「茶色いですね」「良い匂いがしますね」

「黒糖と名付けた。食ってみろ、甘いぞ」

小さな塊を口に入れたお前と貴様に衝撃が駆け抜ける。

「あまぁ!」「あっめっ!」

「砂糖とは全く違う深い味わいがたまりません!」

「煮詰めた果物より甘いとか何なんですかこれは!?」

「売れるかな?」

「「買います!」」

甘味不足はここでもか。俺の問いにピルで食い付いた。

「シャリー」

「生産するとなると手間賃が嵩みますね。1ナリ三千ヤンくらい取っても良いと思います」

「それじゃあ高過ぎて手が「「買います!」」……そうか」

雑木の木箱に入れて売ってやったよ。
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