694 / 1,519
次は我が身
しおりを挟む「残念…」
赤ちゃん一番乗りを逃して主寝室のベッドの上で大の字になってるイゼッタのお腹を、リアが優しく撫でている。
「よくやりました。産まれたら撫でてあげますから、もう少し頑張りましょうね…」
その横ではカロが一番乗りを避けたお腹を褒めていた。
「カロの子はやはり空気読んでるのだろうか?」
「あるかも知れませんね。子供は不思議の塊です」
「あきゃ~」
メッツ君を抱くエージャはとても普通の女だ。それもまた不可思議である。
サミイが必死になってても、人はやっぱり腹が減る。昼食にはハンバーグでも作ってやろうとテイカを残して厨房に赴く。だが残念、お手伝いの婦人方がテキパキと料理を作っちゃってた。
「旦那さんはみんなと待ってておくれ」
任せて良いなら任せよう。厨房を離れ、再び主寝室へと向かう足を、カロ邸を声高に響き渡る声が止めた。
「カケル様!」
階段を駆け降りるテイカが俺の胸に飛び込んで来た。だいぶ慌てているのう。
「テイカよ、まあ落ち着け。ママ上殿の時もそうだったろ?」
「はい…、そうでした」
「食事はお手伝いの人等が作ってるし、俺達は顔見せの許可が降りるまで待つ事にしようか」
「落ち着いていますね」
「前例があるからだな。それにテイカが俺の代わりに慌ててくれる。助かるよ」
テイカを連れて客間に戻ると、皆ソワソワと落ち着かない様子。ママ上殿とその胸に抱かれてるメッツ君だけだな。落ち着いてるように見えるのは。
「カケル、産まれたの?」
サミイが産気づいた時に移動していたイゼッタとリアはカロと三人川の字になってる。
「多分な。知らない赤ちゃんが何処かから転移でもして来なきゃな」
「わた、わたくしどきどきしてまいりました…」
「深呼吸して。ひっひっふー。呼ばれたら見に行こうな」
二人のお腹を撫でてると、部屋の外からノックと共に荒らげた声がした。
「カケル殿!カケル殿!おめでたですぞ!名前はどうしておりますか?あの声ならきっと男の子、もしかしたら女の子かも「あーなたー?」…あ、ああ…」
テンションの上下が激しい親父殿だ。カロの主寝室は男子禁制。なので部屋の外を動物園の生き物の如くウロウロしているようだ。ソファーに掛けて、子供の名前でも考えるかな…。
ママ上殿曰く、平民には忌み名のような物は無いらしい。それでも野獣や魔獣、モンスターの名前を付けるような親は居ないそうだ。殆どが以前親父殿に聞いた、親族の名前をもじって使うのだと言う。因みに、メッツ君の名付けはママ上殿であった。やはりな。
ソファーに座る俺の横で撓垂れ掛かるママ上殿は、こんな時なのにペニスケをスリスリ。抜き放たぬだけまだマシか。こんな事してると我も我もと寄って来るエージャは、只今メッツ君を揺らしてるのでパッと見普通の女だ。反動が怖い。
部屋の外から聞こえる鳴き声と親父殿の呻き声を聞きながら、大体一オコンそこら経っただろうか。現場で立ち会って居たシャリーが戻って来た。
「皆様お待たせ致しました。先ずはカケル様、続いてご両親の順でどうぞ」
「私!見たい!」
「そうか。イゼッタ達を先にしてくれないか?次は我が身だからな」
「そうですね。ママ上様、よろしいですか?」
「大丈夫、赤ちゃんは逃げないわ」
「ではカケル様に奥様とリア様。その後でご両親のお二人と続いてください」
イゼッタとリアを浮かせて押して参る。カロはテイカとお留守番だ。
「カロ、無理して我慢するなよ?」
「はい…。けど、そろそろかも知れません」
「カケル、早く」
「テイカさん一人では流石に取り上げられませんでしょうし」
直ぐに戻ると部屋を出て、産室となっている客室に向かう。シャリーがドアをノックすると、中からどうぞと声が掛かる。
「失礼します。カケル様達をお連れしました」
「ふにゃ、ふあ~あ~~」
此方も落ち着きだしたようで、声高だった鳴き声も気の抜けた声になっていた。
0
あなたにおすすめの小説
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
異世界での異生活
なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる