女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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次は我が身

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「残念…」

 赤ちゃん一番乗りを逃して主寝室のベッドの上で大の字になってるイゼッタのお腹を、リアが優しく撫でている。

「よくやりました。産まれたら撫でてあげますから、もう少し頑張りましょうね…」

その横ではカロが一番乗りを避けたお腹を褒めていた。

「カロの子はやはり空気読んでるのだろうか?」

「あるかも知れませんね。子供は不思議の塊です」

「あきゃ~」

メッツ君を抱くエージャはとても普通の女だ。それもまた不可思議である。

 サミイが必死になってても、人はやっぱり腹が減る。昼食にはハンバーグでも作ってやろうとテイカを残して厨房に赴く。だが残念、お手伝いの婦人方がテキパキと料理を作っちゃってた。

「旦那さんはみんなと待ってておくれ」

任せて良いなら任せよう。厨房を離れ、再び主寝室へと向かう足を、カロ邸を声高に響き渡る声が止めた。

「カケル様!」

階段を駆け降りるテイカが俺の胸に飛び込んで来た。だいぶ慌てているのう。

「テイカよ、まあ落ち着け。ママ上殿の時もそうだったろ?」

「はい…、そうでした」

「食事はお手伝いの人等が作ってるし、俺達は顔見せの許可が降りるまで待つ事にしようか」

「落ち着いていますね」

「前例があるからだな。それにテイカが俺の代わりに慌ててくれる。助かるよ」

テイカを連れて客間に戻ると、皆ソワソワと落ち着かない様子。ママ上殿とその胸に抱かれてるメッツ君だけだな。落ち着いてるように見えるのは。

「カケル、産まれたの?」

サミイが産気づいた時に移動していたイゼッタとリアはカロと三人川の字になってる。

「多分な。知らない赤ちゃんが何処かから転移でもして来なきゃな」

「わた、わたくしどきどきしてまいりました…」

「深呼吸して。ひっひっふー。呼ばれたら見に行こうな」

二人のお腹を撫でてると、部屋の外からノックと共に荒らげた声がした。

「カケル殿!カケル殿!おめでたですぞ!名前はどうしておりますか?あの声ならきっと男の子、もしかしたら女の子かも「あーなたー?」…あ、ああ…」

テンションの上下が激しい親父殿だ。カロの主寝室は男子禁制。なので部屋の外を動物園の生き物の如くウロウロしているようだ。ソファーに掛けて、子供の名前でも考えるかな…。

 ママ上殿曰く、平民には忌み名のような物は無いらしい。それでも野獣や魔獣、モンスターの名前を付けるような親は居ないそうだ。殆どが以前親父殿に聞いた、親族の名前をもじって使うのだと言う。因みに、メッツ君の名付けはママ上殿であった。やはりな。

ソファーに座る俺の横で撓垂れ掛かるママ上殿は、こんな時なのにペニスケをスリスリ。抜き放たぬだけまだマシか。こんな事してると我も我もと寄って来るエージャは、只今メッツ君を揺らしてるのでパッと見普通の女だ。反動が怖い。


 部屋の外から聞こえる鳴き声と親父殿の呻き声を聞きながら、大体一オコンそこら経っただろうか。現場で立ち会って居たシャリーが戻って来た。

「皆様お待たせ致しました。先ずはカケル様、続いてご両親の順でどうぞ」

「私!見たい!」

「そうか。イゼッタ達を先にしてくれないか?次は我が身だからな」

「そうですね。ママ上様、よろしいですか?」

「大丈夫、赤ちゃんは逃げないわ」

「ではカケル様に奥様とリア様。その後でご両親のお二人と続いてください」

イゼッタとリアを浮かせて押して参る。カロはテイカとお留守番だ。

「カロ、無理して我慢するなよ?」

「はい…。けど、そろそろかも知れません」

「カケル、早く」

「テイカさん一人では流石に取り上げられませんでしょうし」

直ぐに戻ると部屋を出て、産室となっている客室に向かう。シャリーがドアをノックすると、中からどうぞと声が掛かる。

「失礼します。カケル様達をお連れしました」

「ふにゃ、ふあ~あ~~」

此方も落ち着きだしたようで、声高だった鳴き声も気の抜けた声になっていた。







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