女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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十日

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 俺の隣に横たわり、肩に頭を付けるママ上殿からママミルクの匂いがする。

「もう直ぐですね。けど顔見せは明けてからかしら」

「夜中の出産だとそうなるの?」

「カロ様が疲れてたら、そうなるかもですね」

「ママ上殿も少し寝た方が良い。夜中に何度も起きておっぱいやらオムツ替えとかするんだろ?」

「よくご存知で。それでは遠慮無く…」

腕に絡んで寝ちゃったよ。エージャが毛布を掛けてくれた。

「カケル様の隣を奪う壁が憎いです…」

メッツ君を抱いてないと、この通りである。少し安心した。
目を瞑り、ママの香りに包まれて、夢の中へと片足突っ込んで居ると、腕に絡んでたママ上殿がそろりと起き出した。メッツ君のご飯かな?目が開かないので見えないが、泣き出そうとするメッツ君の口をおっぱいで塞いでる感じの音がする。ちゅぱちゅぱ鳴ってるし当たっているだろう。メッツ君のちゅぱ音を聞いていると、不意にドアが開かれた。

「カケル様はお休みですか?」

声からアルネスと分かる。手を挙げて応えた。

「ここに居るぞー」

「お嬢様が出産なさいました」

「直ぐに行けるか?」

「はい。お願いします」

その割には静かなんだよな。

 カロの部屋に着いた俺は静まり返った部屋の奥へと一直線に向かう。

《感知》《回復》《耐性》《抵抗》

ぐったりとしたカロと、カロの隣の大切な命に俺のスキルを掛けまくる。

「早く呼べよ馬鹿野郎が」

思わず零してしまったが、回復が効いて良かった。そしてカロは心を取り戻した。

「か…、カケル…様…」

「俺は人以上、ドラゴン以下の回復スキルがあるんだ。抱いてやれ」

「もう、冷たくなりかけて…………温かい…。え?何で?」

「その子が生きたいと願ったからだ」

「お嬢様ぁっ!!」

アルネスは泣き崩れた。空気と溶け込んでいた産婆達も少しずつざわつき出した。

「産湯は無いのか?」

「そっ!そうだよ!産湯!早くっ」「「はいっ」」

洗う為では無い。温める為だ。それに気付いた産婆はお湯を用意し、お包みのままの命に生きる為の熱を与えた。
温められて、静かに息をする赤ちゃんに引き続き回復を施す。鬱血によりダメージを受けた脳への回復は、俺にもダメージが入る程の集中を要した。初めて使った《叡智》がかなりのリソースを割いてやがる。
《逃げる》と同時に発動する《並列思考》に《空想》。カロに掛けている《耐性》。そして赤ちゃんに掛ける《抵抗》《耐性》《回復》。それに増しての《叡智》である。倒れる前に、カロのベッドに横になり、スキルを放って気絶した。


「カーケールさぁ~ん」

目の前におっぱい。ここは天国だな。

「…リュネ?俺は死んだのか?」

「ふふっ、死んでたら知り合いに頼み込んでアンデッドにしてもらってましたよ」

なにそれこわい。見慣れた主寝室の天井を隠すようにリュネの双丘が顔に圧迫感を与えている。ベッドの周りにはテイカとシャリーにアルネスが立ち、隣にはカロが眠るその子を抱いていた。

「上手く行ったようだけど、もしかしてリュネが助けてくれたのか?」

「うふ、膝枕してただけですよ~」

多分、嘘だろうな。けど今は、そう言う事にしておこう。すまんが眠くて動けない。お休みと告げて再び目を閉じた。


 次に目が覚めると赤ちゃん大合唱の最中だった。起き上がる俺の横に、いちにいさんしぃごぉ…ろく…六?よく見たらガンダーまで合唱に参加してた。

「あ、旦那さまが起きましたよ!」

「カケル!」「カケル様っ」

「おはよう。この泣き声はおっぱいなのか?それともオムツか?」

「おっぱい」「お乳ですね」「おっぱいです」

「溢れてますからおっぱいでしょうね」

「また服が汚れちまう」

「カケル様も飲みますか?」「ママ!」

皆揃っておっぱいらしい。俺も腹が減ったよ。

「俺は普通に飯が食べたい。所で俺はどんだけ寝てたんだ?」

誰に聞いた問いでは無いが、テイカが答えた。

「十日です」

マジでか…。


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