女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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濃いめで

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 門から橋の袂迄約五キロ。皆が歩くので俺も歩いて付いて行く。お喋りしながら街道を行く女子達の後を付いてくのは世が世なら事案物だが、許可を得ているので問題無い。辺りの野獣も草食でこっちに寄って来ないし、何とも平和なハイキングとなった。

「着いたー」「おっきーねー」「水あるよ!」「ん」

…五キロを休憩無しに歩き切るのはどうなんだろう?現地民は少女であっても健脚である。皮鎧の中を汗でビタビタにした俺は、《洗浄》して火照りと塩味を洗い流し、空に浮かんで体を休める。

「カケル、おつかれ?」

「大丈夫だ、問題無い。水飲むなら言ってくれー」

「「はーい」」「飲むー」「ん」

道から外れた濠の脇に雑木シートを敷いて、低いテーブルを出し、コップに水を注いでやる。

「カケル、これ」

ネーヴェが出したのは以前こっそり持ってった箱入りの黒糖だ。混ぜて飲むつもりだろうか?

「黒糖水を作れば良いのか?」

「ん、濃いめで」「あ、私もー」「お願いします」「ありがとう、ネーヴェちゃん」

たっぷり入れて、掻き混ぜて、甘くなった茶色い水をキャッキャしながら飲んでいる。元気だなぁ。

「ねぇねぇネーヴェちゃん、この池って、お魚とかいないの?」

「さあ?カケルー」

ティータの質問がネーヴェ経由で俺に来る。

「居ないよ。雪と雨水を溜めた濠だから、染み込む以外に水の出入りは無いんだ」

「なんだぁ、お魚とか取れれば食べたり売ったり出来そうなのになー」

「漁業になるかは置いといて、濠の中に湧いた虫を食べてくれる者は必要だな。ミズゲルでも入れとくか?」

「ミズゲル?」「アイスゲルの仲間ですか?」「アイスゲル、雪の季節にしか見ないよ?」

「俺はまだ見た事無いんだがな」

ティータ曰く、もっと寒い、吹雪になるような時期にならないとアイスゲルは現れないのだと。客の冒険者に拠ると、硬く凍った体を割って、核を取って五ヤンぽっち。そこそこ重い体を持ち帰っても一匹分で五十ヤン。新米にはやり切れないし、中堅からは金にならんので手を出すのは無駄と言われているそうな。

「魚なら、ヒラウオとかでも良いのかな?あれ沼で養殖してるみたいだけど」

「分かんない。お母さんに聞いてみるね」

宿では干物を仕入れているので、加工迄出来れば安上がりなのかも知れないな。

「カケルー、ごはーん」

俺はご飯じゃ無い。魚の話で腹が減ったのだろう。ネーヴェが浮いてる俺に乗っかって飯を集る。肉はある。ソーサーは無いがマタル粉はある。塩、調味料もあるな。鉄板に焼き用煉瓦板を出して、マットの横に置いてやると、薄切り肉を盛った皿を攫って勝手に焼き出した。

「ソーサーも焼こうぜ?」

「あ、カケル様。私焼きまーす」「私もー」

少女達がマタル粉を練って生地にして、形を整え焼いて行く。

「皆上手いモンだな」

「ソーサーが焼けないとお嫁に行けないって、お母さんが」

「カケル様に美味しいの食べてもらいたいもんね」「ねー」

良い子達だ。ネーヴェからの賜り物と、女子の手作りソーサーを食べて腹を満たす。そんな折、橋を渡る騎ゾーイが二頭、街道を横切って行った。

「あれ、兵隊さんよね」

「何か用なのかな?」

地もピーでも分かる、国の兵隊。同じ規格の装備をしてればそりゃあ分かるか。

「ダンジョンに潜ってお宝ゲットしたいそうだよ」

「カケルさん、二人で潜って大丈夫なの?」

「まあ、ダメだろうな。人数もだが、実力が足りてない。もしかしたら準備に来ただけの三下かも知れん」

食休みをたっぷり取って、再び来た道を歩いて帰る。途中、女子達がトイレしたいと言うので簡易トイレ作ってやった。水の棒が絶賛されたよ。

そんなこんなで一オコン半。街に戻るとギルドが少し騒がしかった。まあ、予想は出来る。《感知》にも引っ掛かってるからな。だが一先ず樵に移動しよう。ティータは夕方の仕事があるのだ。





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