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娘に会わせる顔が無い
しおりを挟む他にも数人、鎧を見てる客が居るのに走り寄って抱き着いて来る美人アーチャーエメラルダスに、嫉妬の視線が飛んで来る。飛んで来るのは俺の方にだが。
「鎧に穴が開いちゃってな。軽く直してはあるんだが、直しが必要なら頼みたい」
「任せて……え?これ?まさか、は?よく生きてたわね」
俺的には直したつもりでも、プロだとその場で見て分かるモンなんだな。直ぐに腹と背中の貫通痕を見付け出して驚いてる。
「生涯二番目くらいに死にそうになったよ」
勿論一番はネーヴェだ。
「材料はあるけど今のを脱いでもらわないと直せないよ?」
「脱ぐと寒いんだけど、仕方無いか」
「内側も見たいしね」
鎧の上を全部脱いでブレストを渡すと頭を突っ込み凝視し始めた。
「修繕は後で良いからな?」
「そ、そうね。代わりの鎧は要る?」
「こんな穴開けられる敵なんて滅多やたらに居ないから大丈夫だ。けどシャツが欲しいな」
「ならコートでも着てって」
金属鎧の上に着る、袖の無い皮の上着だそうな。茶色いけど鎧下で歩くよりは良いだろう。レンタルだから直ったら返せ、だって。
「十日くらい掛かるから、直ったらカロ様に伝えとくよ」
防御力を大幅に落として店を出る。…客が居なけりゃなぁ~。で、串焼き齧りながらギルドに着いた。
「え?Bランクですか?ソレで?」
「コレは直し中なんだよ」
「ソロでソレでしたら…、コチラなんてどうですか?」
「Cランクの塩漬け案件ってか?」
「いっ、いえそんな。新鮮ピチピチ、まだ貼ってない初物ですよ!?」
絶対嘘だ。だが娘がジト目で睨んでるのでごねる訳には行かない。
「冗談だ。働かないと娘に会わせる顔が無いからな。それで良い」
「…では、シースケルトンの討伐。やれるだけお願いします。場所は……」
情報に因ると、シースケルトンは街の海沿い、壁の向こうに出るそうだ。スケルトンと言ってもファンタジックな人の骨の化け物では無く、見ように依ってはそう見える魔物だそうで、普通なら偉い人が格好良い名前を付けるのだが、見た目で名前が決まってしまったタイプの魔物だと言う。因みにシーは海だ。
門から出て、南側の壁沿いを歩いて海に出ると、街の中と変わらず磯が広がっていた。水面にはミズゲル。この中に魔物が入ったらミズゲル共に食われるだろうな。歩きやすい陸側を、歩く振りして浮いて行く。
《感知》で見ると少し離れた先に何匹か居るみたい。やれるだけって言うし、適当に数を狩るか。
シースケルトンって名前だけあって、白っぽい骨が見える四足の透明なゲル、みたいな見た目で、のそのそ歩いて強いようには思えない。だが俺からして見た目で舐められるのだ。警戒は怠らないに限る。
浮き上がり、骨の部分を《集結》させる。ミズゲルの核みたいにプルンと採れず、骨毎ゲル状も持ち上がってしまう。もしかして、その白いのもゲルなのか?魔物なら魔石がある筈なので、今度は魔石だけ《集結》させると今度はプルンと飛び出した。浮き上がってた体が地面に叩き付けられベチャッとしてる。これでは生きて居られまい。
討伐部位はこの魔石と、魔石を覆う白い軟骨みたいな組織。ベチャッとしてる部分もゲル版とかに使えそうなのに勿体無いな。ドロドロを浮かせて海に返すとミズゲル達が寄って来る。きっと処理してくれるのだろう。
魔石と軟骨を飛び出させ、本体を海へ。
魔石と軟骨を飛び出させ、本体を海へ。
魔石と軟骨を飛び出させ、本体を海へ。
串焼きを齧る。
魔石と軟骨を飛び出させ、本体を海へ。
串焼きを齧り、串を海へ。
そんなこんなで移動しながら二十匹。こりゃ金にならんな。辺りに居なくなったし、日も傾いて来たから街に戻ろう。
「二十体も狩られたんですか!?」
「取り敢えず南側だけ、あの時間でこれだけだ」
「本当にBランクだったのですね…」
受付嬢はそんな事言うが、ギルド証に不正なんて出来んだろ?
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