女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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イライラ

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「叔母様の魔法、難しい」

 人の中では莫大な量の魔力を持つイゼッタだが、叔母様とやらの魔法は難しいらしい。

「空に飛べるのにか?」

  「思いますに、貴族の学ばれる魔法は構文の理解力を問われる物が多いからかと」
「ああ、イゼッタは感覚で魔法を生み出すからなぁ。飛ぶ魔法ってどんな感じだ?」

「飛ぶの?…ん~、風がふわーっとしてぐいーって」

やっぱり天才タイプだ。パッと来たらシュッ!野球人にもこのタイプは多い。

「カケルさぁん、其方に向かうならそろそろ曲がった方が良いですねぇ。目的地に着いてしまいますよ?」

「そうだな。今回はイゼッタの顔を立てよう」

UFOを止めて、西にある大きな都市を探す為《感知》を飛ばす。途中でリュネに首をグイッと曲げられて目的地らしき都市を発見した。

「三本の尖塔が生えてる城?みたいなのがあるんだが」

「ん、それ」

「伯爵なのに城持ちなのか」

「家の本家」

ナーバーグを納めていた父の兄がカゲンノウ領の領主で、叔母様とは寄子の娘だったと。で、イゼッタの母は叔母様と姉妹であったと言う。

「兄弟姉妹で好みが似たのかな?」

  「貴族の中ではよくある事ですよ?」
「平民でもたまーに居るけどさ」

話をしながら飛んで行き、街の見える辺りで止めた。此処からは陸路で向かう。荷車に乗り換えて、街道の僅かに上を滑るように移動する。草地が多くて街道には結構な数のホルスト車や歩行者が居るので飛んで行く事も速度を出す事も出来無い。

「賑わってるな」

「見た目判断ですが、商人の荷車と護衛の冒険者ですかね」

「流通が潤ってる街は良い街だが、時間が掛かるのは困ったな」

「飛んだら良いじゃないですかぁ」

「警戒されたくないんだよ。唯でさえホルストで曳いて無いしな」

対向車と擦れ違う度に訝し気な目を向けられるが、美人がにこやかに手を振ると鼻の下を伸ばして去って行く。俺イライラ。

「カケルさんに妬いて貰えて嬉しいです」

日頃の意趣返しだろうか。

「ノーノ、しゃぶってくれるか?」

「喜んで」「あはーん、狡ぅい」


 人の居ない区間に距離を稼ぎ、街に着いたのは午後を過ぎていた。昼飯は車内焼肉で済ませたが野菜も食べたい。他大陸の冒険者証で街に入るのは警戒されるかも、と言うノーノの提案を飲み、荷車を仕舞って街に近付き、全員分の料金を払って街に入る。

「領都アンデリーにようこそ」「変な真似はするなよ?」

女達と俺で対応が違う事に一々腹を立てて居られない。とっとと尖塔の生えた城に向かおう。

「お前達、何者だ?」「此処は領主様の屋敷だ。見学なら遠くから眺めるんだな」

屋敷を守る門兵は男女平等。物腰も柔らかく教育は行き届いて見える。

「私はイゼッタ・シンプロン。バステキューブさんはご健勝かしら?」

珍しく、イゼッタが丁寧な言葉を使う。門兵は名乗った姓を聞いて背筋を伸ばした。

「バステキューブ殿はご勇退されておりますが、シンプロン様、ですね?中の者に伺って参りますので暫しお待ちを」

そう言って一人が走って行った。で、待つ事数リット。

「イゼッタ!?イゼッタなのね!」

スカートの裾を持ち上げ走って来る妙齢の女がイゼッタを呼び、イゼッタも叔母様と返した。この婦人がミシュルキー伯爵夫人か。結った金髪を頭の上に纏めて高さを出している。とても貴族だ。後ろからメイドが三人、奥様と声を上げながら追っている。とても貴族だ。

「初めてかも知れない。貴族らしい貴族見たの」

「奥様もリア様も居ますでしょうに…」

「こうモコモコ上げた髪を見るのは初めてなんだよ」

「叔母様、生き残りました」

「ええ、生きているのね!こんなに嬉しい事は無いわ!さあ、中へ。お付きの皆さんも入ってちょうだい」

「叔母様、違います」

俺もリュネも空気になっていたのをイゼッタは遮った。

「此方はカケル様。私の夫です。此方は私専属のシャリーに、第三夫人付きのノーノ。そして此方はリュネです。粗相無きよう」

「あら…。それは益々嬉しい話ね!どうぞ上がってくださいな」

この人は出来た人だな。
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