女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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口止め料

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「では何か?貴殿も、ジョンと言うAランク冒険者も、ドラゴンを一度に何匹も屠れると言うのか!?」

 やはりジョン絡みの話はウケが良い。旧王都でのライガーとトカゲ討伐。からのジョンと行ったダンジョンの話になり、俺の拙い話術でも身を乗り出して聞いてもらえた。

「貴殿はBランクと言ったが、何故上を目指さぬ」

「私をAランクに命ずる相手は、まだ幼いのです」

「王子と王女の話に出ていた王子であるな?成程、良き臣下を持ったようだな」

「いえ、私も一応、王になってしまいまして」

「は?冒険者が王籍だと?」

「魔王と勇者の件、お耳に新しいかと存じます」

「うむ。それで?」

「魔王の封印のある国を治める事となりました。実際は現地の者を宰相に立てて、政は任せておりますが」

「まっ、魔王は何時復活するのか!?」

「千年は微動だに出来ないでしょう。龍に依る封印ですから」

「り、りゅう…」

「真なるドラゴンを龍と呼びます。私やジョンが狩ったのはレッサードラゴンで、龍はそれ等をトカゲと呼びます」

「な…、成程。しかし貴殿、ドラゴンを一人では殺れなんだと申しておったが?」

「仲間の龍と共に、真なるドラゴン、雄龍を殺しました」

「なんと…、ど偉いモンを招いてしもうたわい…」

「雄であれど、魔剣を揃えねば人の力では何万人居ても敵いません。なのでこの称号も此処でしか使わぬつもりです」

「そうか…。して、仲間の龍とやらは今…」

「白いドレスの女でリュネと申します。呉々も粗相無きよう」

「ん、うむ、解った」

「口止め料ではありませんが、ご協力を賜りますお礼としてお納め下さい」

ジョンの所でしか売れず、龍のお土産と成り下がったトカゲの魔石をゴロゴロ三つテーブルに置いて行く。

「これが、レッサードラゴンの魔石…。一度討伐されたとして国が買い取ったと聞いたが、もしや?」

「運が良かったのです。初めてのトカゲでしたので」

「なんと…」

そこから更に根掘り葉掘り。イゼッタとの出会いにまで遡って語る事となった。


 メイドが呼びに来て夕飯となり、昼飯は酒のツマミだった事に気付かされた。そんなに長居させられてたのか。道理で伯爵がモリモリバクバク食ってた訳だ。俺は遠慮してちょっとしか食べてなかったのでだいぶ腹が減ったよ。

伯爵と共に食堂へ通されると、既に皆は席に着き、俺達が来るのを待っていたようだった。イゼッタの隣の席に着き、家主の号令の元に食事が並べられて行った。肉美味い。

「リュネ、これって」

「お近付きの印、ですよ」

「カケル殿、この肉は?」

「トカゲですね」

「初めて食したぞ…。王公のパーティーでも見られまいて」

「旦那様、それも含めてお話し合いは此方で済ませておきましたので、私にお任せ下さいな」

「そうか。ではよろしく頼むぞ」

女達はちゃんと交渉してたみたいだ。

「ぶへぁ~、カケルゥ~、ほ~めて~」

気付かぬ内に酒を煽ってべろべろになってるイゼッタの化けの皮が剥がれる。

「お乳がお酒味になるから暫くは授乳禁止だ」

「ほう、イゼッタは子を生しておったのか」

「ジョーニアスと言う名の男の子ですって」

「そうか。その子が望むのであればこの領を治める手伝い等してもらいたいモノだが…」

「ダメ~」

イゼッタはダメと言うが、人生の岐路は沢山あって良い物だ。

「剣と魔法と座学程度は仕込んでおきますよ」

「カーケルー…」

「子供の進路に行き止まりを作っちゃいけないよ?冒険者でも官職でも、自分の納得した道を歩んでもらいたいじゃん」

「あらあら、イゼッタ?こんな事、中々言える事では無いわよ?貴女、良い人に出会えたのを感謝なさい?」

ブツブツブーブー何事か零しながら酒を煽るイゼッタを夫人が窘める。

「魔法は私がみっちり教えますからねぇ」

…先ずは道徳から教え込まねばなるまいな。

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