女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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倫理的にはダメ

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 保温器があるので金属容器は薄くて済む。二ミリ程の薄さにした鉄板を、《威圧》工法でプレスして保温器に収める。何も入れて無いのに取り出し難いのは内圧のせいかな?保温器に溝を彫って、多少出し易くなった。

「穴開けちゃえば良いです」

ニトの言い分は分かる。圧力を調整すれば取り出し易くなるもんな。

「穴の所から冷めちゃうよ?」

「蓋すりゃ良いですよ」

成程…。容器の重みで穴が塞がってりゃ良いんだしな。保温器を作り直すと、その底を内側にテーパーが掛かるよう大きく円に切り、断面を固めてセットした。

「保温効率は誤差程度には下がるが、利便性は大事だよな」

金属部を収めて持ち上げると、カコッと音がしスルッと上がる。これは良いな。試しに水を注ぎ、湯を沸かす。さて、蓋蓋。蓋は雑木を使い、保温器と同じ仕様で作った。

「カケル様、お湯が湧いております」

「おう。今行く」

湯が沸く迄の間に大中小の金属容器と、三つの蓋が出来上ていた。ポコポコと泡を出す湯の中から火の鉄板を《収納》し、コップで掬って一口…熱いな。
蓋を閉めて、待つ。

「増産する前に、コイツが冷める迄何オコンかを調べなきゃならん。皆の協力に感謝するよ、ありがとな」

「カケル様~」

「お湯が冷める迄、お付き合いします」

「ふくりこーせー、お願いするのです」

やはりな。望む所だ。《感知》で時間を見ながら一オコン毎に蓋を開けて温度を見てもらう。スープや食品として許されない程冷めたのは五オコン。もっと頻繁に開け閉めしたり、開けっ放しにしていたらもっと早くに冷めてしまった事だろう。まだまだ温かい白湯を飲み、女達の中に熱い子種を注ぎ込んだ。

 改修の結果として、火の属性魔石を一つ、クリスタルモドキで固めた物を蓋に貼り付ける事で解決とした。金属容器に埋め込むと、その一点だけ焦げちゃうかも知れないからだ。
福利厚生を終え、艶々になった兎達は赤ちゃんの世話や料理の仕込みになんか向かってく。俺は容器を増産し、一人二階で横になる…。


「……と……」

「…を……と…い」

「ん…上手く行ったか…」

「目を開けよ」

促され、目を開けるとそこは真っ白い空間。此処に来るのは二度か、三度か。辺りを見回すが誰も居らず、声の主が此処に居ない事だけは分かった。

「本来はダメなのだろうけど、お伺いだけは立てなくては…と」

口にすると何処からか声が聞こえる。《念話》を耳の直ぐ傍で聞いてる感じ。頭の向きを変えても同じように聞こえる。

「確認は出来ておる。久しいの。狩場翔よ」

「地球の神、ですか?」

「うむ。まさか《転移》するとは思うて無かったぞ?」

「のらりくらりと躱しながら、味噌やら醤油やらを密輸したかっただけだったんですけどね」

「人は間違いを犯すモノよ」

「で、実際どうなんです?輪廻の関係とか、体の構造的に」

「倫理的にはダメだの。輪廻の輪に加わるか否かは誤差でしか無い。体の事は狩場翔も知っておるだろう」

「確か俺は、死んだ後、シルケで肉体を地球人の状態で再構成されたのですよね?生身の地球人がそのままシルケに飛んでも平気って事ですか?」

「繁殖出来んのと、魔法が使えん。そしてステータスの閲覧もスキルの発生も無い」

「前の女神がギフトを渡す時に、後の二つが付いたのですね」

「そうなるのだろうな。狩場翔よ。北上弥一を転移させるのは地球人を一人殺すのと変わらぬ。ソレを産みし者が、その縁者が泣くであろう。狩場翔の時と同じく、な」

「それは俺や、俺の娘みたいに事故を装って殺されて、無理矢理拉致させられればそうなりますよ。奴の場合は話を通して行かせます。本当は来て欲しくは無いけど」

「北上弥一の意志も固そうであるしな」

「せめてスキルを増やせるようにしてやれませんか?それと、シルケの女神にも話をしたいので繋がれるよう協力して欲しいです」

「生身で行けば死ぬだろうしの、…仕方あるまい」

地球の神的な者との話は出来た。


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