女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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無いのかよ

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 ヘンプシャーの前にしゃがみ込み、目の前は股間。黒皮のズボンを剥いたらさぞやおぞましい光景があるのだあろう。だが治さない。

『今から毒素を抜く。どうせまたぶり返すだろうが、依頼中は平気だろ』

返事を待たず《感知》で毒の在処を探し、《収納》しては《治癒》をする。漏れ出る涙と小便が、痛みの程を表すも、俺はスキルを使わない。毒を取り切り、最後に《洗浄》して《結界》を解いた。荒い息を吐き、膝から崩れ落ちるヘンプシャーが目力弱くも俺を睨み付ける。

「お前を蝕んでた毒、見るか?」

「はあ、はぁ…、み、見ない、わよ」

「風呂に入ってゆっくり休め」

 飯作りを再開し、女達の長風呂が終わるとやっと俺も寝る事が出来る。小型UFOに女達を詰め込み空に上げると、煉瓦テントに潜り込んだ。

 あまり寝られた気がしない。風呂に付き合うと夜更かしせざるを得無いのだ。煉瓦テントを片付けて、外が雨な事に気付く。珍しいが、濡れるのは嫌なので《結界》を纏って雨露を凌ぐ。

「カケルさん」

「翔、雨だな」

「ああ、シルケは雨が少ないが、雨天での行動の練習にはなるな」

お手軽価格等に雨具の手持ちは無い。皆ギルドから貸与されたテントの中でしゃがみ込み、床上浸水に耐えていた。

「テントの端に棒を刺して面積を広げるぞ」

人が立って動ける程の長さの棒に、雑木ロープを出してやる。三角テントの端に長棒と雑木ロープを縛り付けたら、棒を立ち上げロープを張らせる。それを対角線に二ヶ所施した。

「タープ、だっけ?」

「ああ。雨で垂れ下がるから支柱も要るけどな。弥一も土魔法で椅子とテーブルくらい作れ」

「俺、倒れちゃうぞ?」

「とっととやれ」

弥一の魔法が土壁の塊を作る。それを固めて《洗浄》で脱水し、椅子だかテーブルだか分からん出っ張りとなった。それに合わせてタープとなったテントを移動し、取り敢えずの雨避けとする。

「カケルさぁ~ん」「出られませーん」

少し上から、女達の声がする。日和った事言ってやがる。

「後で乾かしてやるから、濡れる覚悟で降りて来い。テント持ってな」

「「「はーーい」」」

女達と新たな屋根が到着し、行動範囲が広がった。女達が座ったら一杯だがな。

「貴方、屋根くらい作りなさいよ」

「それじゃあ此奴等の経験にならん。それより体調はどうだ?」

「…助かったわよ」

「翔よう、雨の日の移動って、どうすんだ?あと寒い焚き火しよーぜ」

曇天で真っ暗な中、貸与品のカンテラ一つで良く此処迄立派な雨避けが出来たモノである。俺と弥一は《感知》で見えて居たが、他の奴等は転んで水浸しになった上に《洗浄》されて冷えきっている。体を温めるのは良い案だ。タープの真ん中に座る奴等を退かし、椅子になっていた土壁の塊に穴を開けて木っ端にした雑木を流し入れる。

「誰か、火は?」

「「「…………」」」

「無いのかよ」

こんな所で役立つ火口セット。随分使ってなかったが、皆が見てるのでヘマは出来ん。薄く削いだ雑木のモジャりを作り、火口と石を握りガチガチッと数回。何とか先輩らしい所を見せられたぜ!

「火口持ってる人、初めてです」「家でしか使わないですよね」

おや?火口ってアウトドア用品としてはメジャーでは無い様子。

「私達はコレですね」

皆に聞いて、女達が鞄から取り出したのは鉄の棒。それと設営用に貸与されたハンマーが二つ。

「さっきのふわふわください」

モジャりをくれてやると、ハンマー一つを金床代わりに鉄の棒を叩き出す。ガチンガチンと騒がしく、寝ていた奴等に動きが出る程だがモジャりに押し付け火種が出来るのを見て少し感動してしまった。

「それ、鍛冶屋がやる奴だな」

「知っているのか弥一」

「日本刀はコレで火種を起こすとか言うぜ?」

「ニホント?それより鍋に水、早く」

ヘンプシャーも寒かったのか。焚き火を二ヶ所に鍋を用意し、朝迄の時間を弁当を作って過ごした。







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