女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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危機的状況

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 此処は一気に…否、慎重にだ。出来るだけ皆を近くに寄せる。ネーヴェの《結界》に密着させて、二人がくっ付くように安置したら、纏った《結界》をエリア型に戻す。コレで一枚張れる。深呼吸して、気付く。ミーネがまだだ。二度手間に切れた集中力を光の粒が奮い起こしてくれた。治れば良いな…。眼帯の格好良いヤツ、作ってもらうのも良いな…。再び《結界》を纏う。

「ミーネを回収して来る。もう少しだけ我慢だ」

「……ん…。おなか、すい…た…」

出来るだけ柔らかい物を取り出して齧り付き、咀嚼してネーヴェの口の中へ流し込む。メロンっぽい食感で蜜柑味だった。ネーヴェは俺タンをハムハムし、口を離す。味がしなくなったのだろう。
体を引き摺るようにしてミーネの反応へ進む。床が平らなのがとても有難い。

「ミーネ、無事か?」

 彼女は振り返る事で応えた。全身に纏った赤い魔力は、彼女自身、危機的状況なのを物語っている。一度でも真面に仕合っておけば良かった。そしたら少しは慣れてたかも知れん。否、無理だ、慣れん。
首チョンパされたら何ピルで治せるかな?その前に《結界》全部破られて終わりか。
手立てが無い。

「ミーネ、帰ろう?」

ミーネは行動で返す。一歩踏み込んで、二歩目は目の前だ。ジョン並の《瞬歩》に驚くが、ジョン並で良かった。鳩尾目掛けて伸びる貫手を《収納》の平面で受け、右手側へ回り込みながら纏った《結界》を壁迄勢い良く広げた。

「うぐっ」

間を置かず《結界》を張っては古い物を消してを繰り返し、ミーネを《結界》の内側へ引き込んだ。薬は…ラージポーションしか無いが、無いよりマシか。《収納》されて断面が見えてしまっている右腕に掛け流して止血する。

「あ…、だ、旦那様…」

「無事かミーネ」

「皆、は?」

「ミーネよりマシだ。血が出てないからな。とにかく皆の所へ行くぞ?」

「ん…、少し待て…」

正気に戻ったミーネが《結界》を張る。俺の一枚と変わらないが、それだけでも余裕が持てる。浮いて移動出来るだけでも有難い。

「ミーネ、《結界》で皆を囲ってくれ」

「ああ、心得た」

 俺含め六人がネーヴェの《結界》越しに密集し、やっと皆を救える。ミーネが拡げた《結界》の内側に、一枚ずつ俺の《結界》を張り直す。

「カケ…ルー…」

「ん、んん…」

ネーヴェが手を伸ばす。握ってほしいのか?手を伸ばすとテシッと撥ねられる。腹減ってんのか。さっき食わせた食べ掛けを持たせ、まだ唸る事しか出来無いリュネの元へ。

「リュネ」

「カ…カケ…」

ヨロヨロと手が動く。体が動かないなら柔らかい果物が良いだろうな。掌に収まる感じのトマトみたいなのを持たせてやると、力加減が出来無いのか、握り潰してしまった。

「手っ!握って!手っ!」

ジューシーな滴り毎握ってあげましたよ。

「寝た振りしてたのか?」

「スキルと魔法が、使えなくなって…。いえ、精神的阻害、ですね」

抵抗出来無ければ体をダンジョンに乗っ取られていただろう、とリュネは言う。リュネは残る気力で自身とカラクレナイ、そしてサミイの体の機能を《封印》し、助けを待つ事にしたそうだ。
ミーネは自身の戦闘本能以外と、カラクレナイ達を《遮断》したと言う。戦闘本能だけになったミーネは誤爆回避の為皆から離れていたそうな。
ネーヴェは食っててそれ所では無い。お代わり?はいはい。きっとネーヴェも何かを犠牲にして二人に《結界》を張ったのだろう。多分時短も付いている筈だ。お代わりを食べ終えたネーヴェが《結界》を解除し、皆を纏めて張り直す。

「カケル、ミーネ、もう、へいき」

平気と言っても俺の《結界》含めての話だ。とっとと移動したいがカラクレナイとサミイがまだお眠だし、右手を無くしたミーネの治療を待たねばならん。

「一体何があったんだ?」

「箱…」

「ああ…、箱かぁ」

帰りの途中で開けちゃったのか。

「カララのせいなの…」

カラクレナイが体を起こし、撓垂れた。







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